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デジタル遺産とは、デジタル形式で保存された財産で、通常遺産にはない問題を含みます。
デジタル遺産の整理を怠ると、相続人に迷惑をかける可能性があるため注意が必要です。
この記事では、相続においてデジタル遺産が問題となる理由や、問題回避のための対策について解説します。
相続人に余計な手間をかけたくない、無駄なコストを支払わせたくないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
デジタル遺産とは、デジタル形式で保存された財産を意味します。
姿形(すがたかたち)はないものの、楽天ポイントやクレジットカードのポイントなど、インターネット上にあるデータも財産として扱われます。
たとえデータ形式であっても、財産的価値がある以上、デジタル財産も遺産相続の対象です。
しかし現金や土地と異なり、無形であるため、デジタル遺産特有の問題が生じます。
なお「デジタル遺産」に正式の定義はなく、場面によっては、財産的価値のないデータもデジタル財産に含まれます。
通常の遺産とデジタル遺産の違いは、物理的に扱えるか否かです。
姿形がある財産が通常の遺産で、姿形がなく手で触れない財産がデジタル遺産です。インターネットやデジタル機器なくして存在を確認できないものが、デジタル遺産と考えると良いでしょう。
不動産や現金、ダイヤモンド、洋服などは、典型的な通常遺産です。インターネットの接続がなくても、これらの財産は存在を確認できます。
一方で、クレジットカードのポイントやクラウド上に保存された絵などは、インターネットの接続なしでは確認できません。
詳しく後述しますが、通常遺産かデジタル遺産かの区別は、デジタル遺産の具体例に触れると、よりイメージしやすくなるでしょう。
デジタル遺産の対象となる具体例は、次の通りです。
インターネット上のポイントとしては、楽天ポイントやAmazonポイントが具体例として挙げられます。10万円以上のポイントを所有している方もおり、見逃せないデジタル遺産といえるでしょう。
相続人がプロのクリエイターである場合、デジタルの著作物も見逃せません。iPadに保存された作品のデータが、大きな価値を持つ場合もあります。
ネット上で受けられるサービスの典型は、ネットフリックスやAmazonプライムなどのサブスクリプション契約です。解約しない限り、相続後も会員費が発生し続けるため注意が必要です。
終活をする上で、デジタル遺産の整理は、特に注意しなければならない項目といえます。デジタル遺産の整理には、通常の遺産とは異なる、特有の問題が含まれるからです。
デジタル遺産の整理を怠ると、価値ある相続財産が相続人に行き渡らなかったり、相続手続きにおいて無駄な費用や手間がかかったりと、相続人に迷惑をかけてしまいます。
デジタル遺産には、存在が確認されづらいという問題点があります。
やり取りがインターネット上で行われるため、パソコンやスマホ、iPadの中身を相続人が確認しない限り、デジタル遺産は放置される可能性が高くなるからです。
故人が多額のポイントを保有していたとしても、相続人がメールの内容を隈なくチェックしない限り、ポイント付与の事実は明るみになりません。
さらにデジタル遺産の開示には、ログインIDやパスワードの入力も必要です。デジタル遺産の存在を相続人が把握していたとしても、ログインできない以上、ポイント残高は確認できません。
存在が把握されにくいのみならず、財産の開示にIDやパスワードが求められる点が、デジタル遺産の問題点といえます。
デジタル遺産は、通常の遺産に比べて相続手続きが複雑です。手続きの複雑さが原因で、相続手続き全体の遅延につながる恐れもあります。
デジタル遺産を引き継ぐためには、名義変更が必要です。しかし、デジタル遺産の名義変更はより時間がかかる可能性があります。デジタル遺産の場合、相続時の取り扱いにつき、具体的に定められていない場合もあるからです。
相続時の取り決めがない場合、窓口に問い合わせて、手続き方法を確認しなければなりません。
またデジタル遺産も、通常の財産同様、相続財産の評価が問題になります。デジタルアートは財産的価値を持ち得ますが、具体的にいくらの価値を持つかについては、鑑定などが必要になります。
デジタル遺産は、通常の遺産に比べて、発見が遅れる可能性が高い傾向があります。
価値の高いデジタル遺産が見逃されると、最悪の場合、遺産分割協議のやり直しをせざるを得なくなります。遺産分割のやり直しは、相続人にとって、大変な手間になるでしょう。
また、価値あるデジタル遺産の放置は、相続税の追徴の原因になります。デジタル遺産を相続財産に含めなかった事実に、故意があったと判断された場合、相続人には重加算税が課されます。
このようにデジタル遺産の放置は、相続時のトラブル発展につながるのです。
デジタル遺産の放置が原因で、相続人の貴重な時間が奪われたり、相続税の追徴により相続人個人の財産が失われたりする危険がある点は、押さえておきましょう。
デジタル遺産を生前整理しておくメリットは複数あり、具体的には下記の例が考えられます。
相続財産の把握が容易になる点は、生前整理の最も大きなメリットといえるでしょう。
デジタル遺産には、存在が把握されにくいという、通常遺産にはない問題点があります。デジタル遺産の発見が遅れると、遺産分割協議のやり直しや、(相続税における)追徴課税の原因になります。
デジタル遺産を整理し、相続人に伝わるよう準備を整えておけば、相続手続きが円滑に進みトラブルをうまく回避できるでしょう。
その他のメリットとして、無駄な課金の防止も大切な観点です。ネットフリックスやAmazonプライムなどのサブスクリプション契約は、本人の死亡があっても、自動解約になりません。課金を止めるには、相続人が積極的にアクションを取る必要があります。エンディングノートに書き記すなどして、情報を整理して掲載しておけば、早いタイミングで課金を止められます。
また個人情報の流出防止も、生前整理の見逃せないメリットの1つといえるでしょう。デジタルデータには、大切な個人情報も含まれています。個人情報データの流出は、プライバシーの侵害のみならず、詐欺被害の原因にもなります。
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デジタル遺産を整理する方法をまとめました。デジタル遺産の整理は、死後、家族が遺産を引き継ぎやすいようにすることが基本です。
しかし家族に知られたくないデジタル遺産があったり、家族の時間を奪いたくなかったりする場合は、第三者に依頼する選択肢もあります。
現在利用中のサービスについて、それが必要かどうか、定期的に見直す作業をおすすめします。
サービスの加入数が多いほど、相続後の手続きが煩雑になるからです。
ネットフリックスやAmazonプライムなどのサブスクリプションサービスは、月ごとの料金が高額でないため、利用機会がないまま放置されがちです。
利用頻度の少ないサービスは、終活の一環としてあらかじめ解約しておきましょう。
サービスの加入数を最小限に減らしておくと、相続後の名義変更手続き・解約手続きも早く進みます。また相続手続きとは直接関係ありませんが、不要なサービスの解約は、生活コストの削減にもつながります。
生活費削減のためにも、相続対策のためにも、不要なサービスの解約は有効な対策といえるでしょう。
デジタル遺産の存在は、できる限り家族や親族に伝えておきましょう。そうすることで、デジタル遺産の放置を防げます。
特に高額なデジタル遺産に関しては、確実に相続人に伝わるよう工夫しましょう。価値の高いデジタル遺産が放置されると、遺産分割協議や追徴課税の原因となり、リスクが高いからです。
デジタル遺産の存在を伝える際は、確実に伝わる手段を選びましょう。
口頭で伝える方法もありますが、忘れられる恐れもあります。伝える際は、証拠が残る形が望ましいでしょう。デジタル遺産をまとめたデータやメモ用紙を渡したり、エンディングノートに記載したりするのがおすすめです。
生前整理の方法として、デジタル遺産に関する情報をエンディングノートにまとめたり、遺言書を活用したりする人もいます。
遺言書は、発見される可能性が高く、その意味で優れた手段であるのは間違いありません。
しかし遺言書の記載内容が多すぎると、遺言書の見栄えが悪くなり、見づらくなる恐れもあります。そのため遺言書に代わる伝達方法として、エンディングノートの作成が考えられます。
エンディングノートとは、死後、家族に伝えたい内容を記すためのノートです。遺言書と異なり、エンディングノートには特定の様式がなく、自由な記載が可能です。
エンディングノート内にデジタル遺産に関する項目をつくり、IDやパスワードも一緒に記載しておくと、相続人による解除手続きなどが円滑に進みます。
なお、エンディングノートに記載した内容には法的効果が生じません。遺言書とは区別して使い分けましょう。
デジタル遺産の処理方法として、死後事務委任契約が使えます。
死後事務委任契約は、死後に発生する事務手続きを第三者に任せる契約で、弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼するのが一般的です。
デジタル遺産の処理のみならず、口座の解約や役所への届出、不動産の名義変更など、複数の事務作業が死後には発生します。これらの事務作業をこなすのは、相続人にとって大変な手間です。
専門家とあらかじめ死後事務委任契約を結び、死後に発生する一切の事務を任せておけば、相続人に負担をかけることなく相続手続きが進むでしょう。
デジタル遺産の処理を含め、煩雑な事務手続きを全てプロに一任したい方は、死後事務委任契約がおすすめです。
死後事務委任契約の費用は、10万~100万円が相場です。
デジタル遺産の処理に悩む方のために、デジタル遺産管理サービスがあります。
デジタル遺産管理サービスとは、民間企業が提供する、有料でデジタル遺産の処理を代行してくれるサービスです。
デジタル遺産管理サービスを利用すると、死後のデジタル遺産処理がスムーズに進みます。秘密にしておきたい内容が遺産に含まれる場合、特に有効です。
保有データや、サブスクリプション契約の内容を家族に知られたくない場合、デジタル遺産管理サービスの検討をおすすめします。
家族に知られないまま、死後において、データの消去・移行、契約の解除などを進めることが可能です。
死亡後に、データを消去してもらうサービスも存在します。
死後、家族の協力を得ずにデータを削除したい気持ちのある方は、各種サービスを利用すると良いでしょう。
インターネット上には、死後のデータ消去を実現できるサービスが無数に存在しています。
費用を支払って、民間業者にデータを削除してもらう方法もありますが、依頼には費用がかかります。
重要度が高くないデータに関しては、インターネット上の無料ソフトを利用する方法もおすすめです。
指定した起動日数が過ぎると、パソコン内のデータが自動で消去されるものなど、インターネット上には便利なソフトが存在しています。
インターネットで検索すると、類似のソフトが複数見つかるため、気になる方はチェックしてみましょう。
IDやパスワードが分からず、デジタル遺産に関する相続手続きが進まない場合は、専門業者の手を借りましょう。
デジタル遺産のIDやパスワードが不明の場合、専門業者への依頼で、データにアクセス可能になるからです。
デジタル遺産がある場合は、相続人がデータにアクセスできるよう、IDやパスワードが相続人に伝わるよう対策するのがベストです。
しかし被相続人がデジタル遺産の整理を怠ったことで、相続人がデジタル遺産に触れられなくなる事態は起こり得ます。
そのような場合は、専門業者に依頼すると、データの抽出が可能です。
ただし専門業者に依頼した場合、ケースにもよりますが、10万円以上の費用が発生する可能性もあります。
iPhone内のデータに関しては、独自の機能を使って、相続人へのデータの引き継ぎができます。Appleでは、死後のデータ処理に備えて「デジタル遺産プログラム」が用意されているからです。
デジタル遺産プログラムは「個人アカウント管理連絡先」に、希望するデータの引き継ぎ相手を登録することで、利用が可能になります。
本人の死後、個人アカウント管理連絡先に指定された者は、iPhoneのデータにアクセスできる権限が与えられます。
iPhone利用者は、信頼できる人物を個人アカウント管理連絡先に登録することで、デジタル遺産の引き継ぎを行える仕組みです。
iPhoneユーザーは、Appleが用意したデジタル遺産プログラムを利用しても良いでしょう。
なお、データの開示には、本人の死亡を証明する書面(死亡届や除籍謄本)が求められます。
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デジタル遺産は、財産の存在が気づかれにくく、相続発生後に放置される可能性が高い傾向があります。
価値の高いデジタル遺産の存在が見過ごされると、遺産分割協議のやり直しや追徴課税の発生などのトラブルに発展する可能性があります。
相続人に迷惑をかけないためにも、デジタル遺産の管理・整理を怠らないようにしましょう。
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