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現在、日本では75~79歳では約11%が、80~84歳では約24%が、85歳以上では約55%以上の方が認知症になるといわれています。
任意後見制度は、認知症などにより判断能力が低下した方の財産管理や療養介護をサポートする制度です。
この記事では、任意後見制度について基本的なことから詳しく解説します。任意後見制度のメリット・デメリット、利用する際の注意点なども紹介するので、ぜひご一読ください。
田中 総
(たなか そう)
司法書士
2010年、東証一部上場の不動産会社に新卒で入社し、10年以上に渡り法人営業・財務・経営企画・アセットマネジメント等の様々な業務に従事。
法人営業では遊休不動産の有効活用提案業務を担当。
経営企画では、新規事業の推進担当として、法人の立ち上げ、株主間調整、黒字化フォローの他、パートナー企業に出向して関係構築などの業務も経験。
司法書士資格を取得する中で家族信託の将来性を感じ、2021年6月ファミトラに入社。
田中 総
司法書士資格保有/家族信託コーディネーター/宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター
東証一部上場のヒューリック株式会社 入社オフィスビルの開発、財務、法人営業、アセットマネジメント、新規事業推進、経営企画に従事。2021年、株式会社ファミトラ入社。面談実績50件以上。首都圏だけでなく全国のお客様の面談を対応。
任意後見人とは、認知症などにより判断能力が低下してしまった人のために「金銭や不動産の管理」や「生活や介護・医療に関するサポート」を行う人のことです。
本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ任意後見人になる人を選び契約しておきます。
本人のために「金銭や不動産の管理」をすることを、財産管理といいます。あくまでも本人の財産を維持することが目的なので、投資などの運用はできません。
財産管理の具体的な内容は、以下の通りです。
また、年金の管理や固定資産税・社会保険・公共料金などの支払い、本人が相続人になった場合に遺産分割協議に参加するなどの本人が行うべき法律行為なども財産管理になります。
身上保護とは、本人の生活に関する法律行為を行うことをいいます。本人の生活の安定を図ることが目的であり、医療、介護などに関する契約などの法律行為が身上保護です。
身上保護の具体的な内容は、以下の通りです。
なお、認知症対策として家族信託がありますが、家族信託には身上保護の機能はありません。家族信託を利用する際に、身上保護もしてほしい場合、任意後見制度を併せて利用する必要があります。
任意後見人の役割や仕事に含まれないものは、以下の通りです。
任意後見制度は、任意後見契約を締結しただけで効力が生じるわけではありません。
本人の判断能力の低下後、任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申し立て、任意後見監督人が選任されて初めて、その効力が生じます。
任意後見監督人とは、任意後見人が契約内容通りに職務を行っているかを監督する人のことです。
任意後見監督人は、任意後見契約を結んだ本人の判断能力が低下したときに、本人、配偶者、4親等以内の親族、または任意後見受任者が家庭裁判所に申し立てをした後に選任されます。
任意後見監督人は、その専門性と重要性や、任意後見人を客観的に監督できる人物であることが必要なことから、本人や任意後見人の親族ではなく、弁護士や司法書士などの第三者が選ばれることが多くなっています。
任意後見人の仕事は主に以下の4つです。
後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があります。
任意後見制度は、本人の判断能力の低下に備えてあらかじめ契約により後見人とその内容を決めておくものです。
一方、法定後見制度は、本人の判断能力が低下した後に利用する制度です。
任意後見制度と法定後見制度の違いを表にまとめました。
任意後見制度 | 法定後見制度 | |
---|---|---|
後見人の選任 | 本人が選任する | 家庭裁判所が選任する |
準備開始時期 | 本人の判断能力が低下する前 | 本人の判断能力が低下した後 |
後見の内容 | 本人が決める | 家庭裁判所が決める |
後見監督人の有無 | 必須 | 家庭裁判所の判断による |
取消権の有無 | 取消権はない | 取消権がある |
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任意後見人は、本人の意思で自由に選ぶことができます。
家族や親族はもちろん、それまで会ったことのない第三者や、個人だけでなく法人も任意後見人になることが可能です。
任意後見人になるために、特別な資格は必要ありません。本人に選任され、任意後見契約を締結するだけです。
親子・兄弟姉妹などの家族だけではなく、叔父叔母・甥姪などの親族はもちろん、友人・知人などの第三者や弁護士・司法書士といった法律の専門家も選任可能です。
また、個人だけではなく、法人を選任することもできます。
選任の基準ですが、本人が信頼できる人を選ぶことが大切です。しかし、同世代や上の世代の人を選任すると、後見人が先に亡くなる場合があるので、本人よりも下の世代を選んだほうが良いかもしれません。
任意後見は契約であるため、契約を締結する判断能力があれば、誰でもなることができます。
しかし、任意後見人は本人の財産の管理や身上保護を引き受ける人であり、これらの職務を引き受けるのにふさわしくない人は、法律で排除されています。これを欠格事由といいます。
以下の欠格事由に該当する人は任意後見人に選任できません。
任意後見制度にかかる費用には、大きく分けて以下の3つがあります。
以下で詳しく解説します。
任意後見人と後見内容が決まったら、公証役場で公正証書を作成します。公証役場には、本人と後見人になる人の双方が出向きます。公正証書によらない任意後見契約は、無効になるので気をつけましょう。
公正証書作成にかかる費用は以下の通りです。
公証役場の公正証書作成手数料 | 11,000円 |
---|---|
法務局に納める収入印紙代 | 2,600円 |
登記嘱託手数料 | 1,400円 |
書留郵便料 | 重量により異なる |
正本謄本の作成手数料 | 証書の枚数×250円 |
任意後見契約締結後、本人の判断能力が低下した場合、本人や後見となる人などは家庭裁判所に後見監督人選任の申し立てをする必要があります。
家庭裁判所への後見監督人選任の申し立てにかかる費用は以下の通りです。
申立に関する手数料 | 800円 |
---|---|
登記にかかる手数料 | 1,400円 |
連絡用郵便切手代 | およそ3,000~5,000円程度 |
鑑定費用(必要な場合のみ) | 5万~10万円程度 |
任意後見人の報酬は、本人と任意後見人の契約で決められた額になります。
家族が任意後見人になる場合、報酬が発生することは少ない傾向にあります。一方で、弁護士や司法書士などの専門家が任意後見人になる場合、一般的に無償ということはあり得ません。
専門家以外の人が任意後見人になる場合は月額0万~3万円、専門家が任意後見人になる場合は月額3万~5万円が報酬の相場です。
後見監督人の報酬は、家庭裁判所によって決められます。報酬は管理する財産額によって異なり、管理財産額が5,000万円以下の場合は月額1万~2万円、5,000万円を超える場合は月額2万~3万円が相場とされています。
任意後見制度では、主に以下の3つのメリットがあります。
メリットを詳しく見ていきましょう。
任意後見制度は本人と任意後見人との契約であるため、本人が自分の信頼できる人を選ぶことができます。その代わり、任意後見契約は本人の判断能力が完全なときにしなければなりません。
これに対して、法定後見の場合、後見人は家庭裁判所が選任します。もっとも、法定後見を利用するのは、本人の判断能力が低下した場合であるため、本人が自ら選ぶことは困難です。また、例え推薦をしても、家庭裁判所がその人を選任するとは限りません。
法定後見では、その権限の内容を家庭裁判所が判断します。したがって、内容を本人が自由に決められるわけではありません。
それに対して、任意後見の場合はその権限の内容を、本人の希望により本人と任意後見人となる人が内容を決めます。したがって、法定後見に比べ自由度が高く、本人の望む形に近い権限内容に設定できます。
任意後見制度では、必ず任意後見監督人を選任する必要があります。任意後見監督人は、任意後見人を監督し、職務を適正に行っているかをチェックします。本人が信頼できる人を選んだ上、さらに第三者によるチェックが入るので安心感があります。
任意後見人も司法書士などの法律の専門家が任意後見監督人であれば、職務に関していろいろ相談できる点もメリットといえるでしょう。
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法定後見制度に比べて、柔軟な運用ができる任意後見制度ですが、もちろんデメリットもあります。
任意後見制度の主なデメリットは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
任意後見監督人は、任意後見人が任意後見契約の内容に沿って職務を全うしているかを監督します。
任意後見監督人は、一般的に弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家が選任されます。任意後見人に報酬が発生するのと同様に、任意後見監督人にも報酬が発生します。
任意後見人が家族の場合は無償ということもあり得ますが、任意後見監督人は第三者が選任されることが多く、弁護士などの専門家の場合は高額になるケースもあるので注意しましょう。
法定後見の場合、本人が単独でできない法律行為について取消権が認められています。
任意後見人には、同意権・取消権がなく代理権のみ認められています。
本人が必要のない物を買ってしまったとしても、任意後見人はこれを取り消すことができません。もちろん、民法上の詐欺や強迫、または消費者契約法にもとづいて契約を取り消すことは可能です。
任意後見契約は本人が亡くなった場合、自動的に終了します。その後の、事務管理や財産管理については、任意後見人ではなく相続人が行うことになります。
死後の事務管理とは、具体的には葬儀やお墓の手配、死後の遺品整理などが挙げられます。
本人死後の事務については、死後事務委任、遺言、家族信託などを利用すると、本人の意思を反映することが可能です。特に家族信託は、柔軟な財産管理が可能である上に、遺言の機能も備えている点でおすすめです。
任意後見制度を利用する際の手続きと必要書類は、以下の通りです。
参考:裁判所「申立てに必要な書類(任意後見)」
法定後見制度に比べれば柔軟な運用が可能な任意後見制度ですが、より柔軟な財産管理をするには家族信託との併用がおすすめです。
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