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家族信託の締結時、受託者の選任で議論になることが少なくありません。
誰が引き受けるかで大揉めしてしまい、今後の家族関係に悪影響を及ぼすことは避けたいところです。
そこで、家族信託の受託者を2人以上にできないのかと考える方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、家族信託の受託者を複数人に分けるメリット・デメリットや、家族信託契約を複数に分ける方法を解説します。
家族信託の受託者を複数人にしたいと希望する人は少なくありません。
ここでは、家族信託の受託者を複数人にできるのか、どのような背景で複数人にしたい人が多いのかを解説します。
家族信託の受託者に人数制限はないため、法的には受託者を複数人にすることは可能です。
受託者を複数人にすることで、管理する財産を分散できるなどさまざまなメリットを得られます。一方で、意思決定が難しくなるなどのデメリットも存在しています。
家族信託の受託者を複数人にする目的でよく挙げられるのは、責任緩和と死亡対策です。
受託者は、委託者から信託財産の管理を任されています。
信託財産の管理においては、忠実な管理や公平な管理、さらにはトラブルが起きないように注意を払う必要があることなど、さまざまな義務が課されます。
これらの負担を1人に背負わせてしまうと、責任がかなり重くなってしまうため、受託者を複数人にすることで、1人あたりの責任を減らしたいとの要望があるのです。
ただし、受託者を複数選任したとしても、法的な責任は緩和されません。
また、家族信託の受託者が死亡しても受託者の地位は相続されず、新たに選任し直さなければなりません。
そのため、あらかじめ複数人にしておくことで、受託者の死亡に備える場面が増えているのです。
家族信託の受託者を複数人にする目的として、責任緩和と死亡対策を紹介しました。
ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのかを解説します。
管理する財産帳簿や権利を分散できることがメリットとしてあげられます。
分散して管理することで1人あたりの負担が軽減され、責任を感じすぎることなく信託事務を行えます。
共同受託者同士で監視・相談し合える点もメリットの1つです。
単独で信託財産を管理していると、誤った財産管理をしてしまったり「本当にこれでいいのだろうか?」と悩んでしまったりすることがあるでしょう。
単独での管理でも周りへの相談は可能ですが、最終的には自分で意思決定をしなければならないため、負担を感じてしまう方もいるかもしれません。
一方、複数人の受託者で管理していれば、誤った使い方を未然に防ぐことができたり、相談し合って管理できるため、心強く感じるでしょう。
家族信託の受託者を複数人に分けたときの、2つのメリットを紹介しましたが、デメリットにも目を向けておく必要があるでしょう。
ここでは、家族信託の受託者を複数人に分ける3つのデメリットを解説します。
家族信託の受託者が複数人いると、意思決定が遅くなります。
受託者が1人のときとは異なり、単独で意思決定ができず、意見が割れる可能性もあります。
意見が割れると、想定していた財産管理ができなくなる恐れがあるので注意してください。
信託で発生した債務は共同受託者の連帯債務となります。
後述しますが、信託財産の管理は過半数をもって意思決定とするため、個人が単独で事務処理をするケースは多くありません。
ある事務処理に対する自身の反対意見が通らず、その事務処理により債務が発生した場合であっても、反対した人も共同受託者として、連帯して債務を負うことになります。
「意見に反対したから関係ない」といった個別的な事情は考慮されないため、受託者全体で意思疎通を図ることが大切です。
原則として、財産管理では共同受託者の過半数の同意が必要です。
1人の受託者が自身の意思で勝手に事務処理を行うことはできず、過半数の同意を得なければなりません。
過半数の同意を得られなければ事務処理はできませんし、自分が反対でも過半数が賛成すればその意見は通ってしまいます。
なお、信託契約で別の規定を定めていればこの限りではありません。
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家族信託で受託者を複数人に設定すること自体は可能です。
しかし、前述したようなデメリットがあり、実務上は受託者は一人の方がよい場合が多いのが事実です。
そのため、デメリットを避けつつも複数人設定するときと同じようなメリットを享受できる方法を探している方もいるのではないでしょうか。
ここでは、受託者を複数人にする以外に検討すべき方法を5つ解説します。
第二受託者を決めておくのが1つの解決策です。
複数人の受託者を設定する目的の1つに、受託者の死亡対策がありますが、第二受託者を決めておくことでも対応可能です。
第二受託者とは、受託者が死亡した際に新たに受託者となる人のことで、信託契約で決めておくことができます。
複数人の受託者を設定しなくて良いため、スムーズな財産管理が可能です。また第二受託者は、受託者が困った場合の相談者となっていただけるでしょう。
信託監督人や受益者代理人を設定することでも対応可能な場合があります。
信託監督人や受益者代理人は、どちらも受託者を監視する役割ですが、関係性が近い人であれば、管理方法の相談もできるでしょう。
受託者と近い人を信託監督人や受益者代理人に置くことで、受託者を複数人にすることなく受託者の負担を軽減できます。
信託監督人とは、受託者を監視、監督する権限を持っている人です。
通常は受益者自身が監督をしますが、受益者自身が自ら監督できない場合などに選任されます。
ただし、受益者の代わりに受託者を監督する権限しか有していないため、受益者固有の権利である「意思決定に関わる権利」は行使できません。
そのため、受益者自身が判断能力を喪失し意思決定できなくなってしまうと、重要な意思決定はできなくなってしまう点に注意が必要です。
また、信託契約で規定を定めれば、信託監督人の権限を強め、受託者の権限を制限することもできます。
受益者代理人とは、受益者に代わって行為できる権限を持つ人です。
そのため、信託管理人とは異なり意思決定に関する権利も持っています。
一方、受益者代理人が選任されると、信託契約で定めた行為以外について、受益者本人は権利を行使できなくなります。
受益者も受益者代理人も権利を行使できる状態だと、混乱が生じてしまう恐れがあるためです。
そのため、現時点では受益者代理人を選任せず、将来、信託契約に受益者の判断能力が低下した際、受益者代理人を選任できる条項を設けておくことも検討しておきましょう。
信託契約は、1人の委託者が複数結ぶことも可能です。
そのため、1つの信託契約に複数の受託者がかかわる形ではなく、それぞれの受託者と別々に契約を結んだほうが権利関係がスッキリします。
財産を複数人で分担して管理できるため、1人あたりの負担は減ります。
これに加えて、一つの信託の受託者が複数になり、意思決定が難しくなったり共同受託者の連帯債務になったりするなどのデメリットはないため、円滑な財産管理が可能です。
なお、この場合でもお互いの信託監督人になることは可能であるため、誤った財産管理を防ぐこともできます。
家族信託と成年後見制度は併用が可能なため、成年後見制度との併用も検討してみてください。
家族信託と成年後見制度を併用することで、委託者が判断能力を失った際に対処しやすくなります。
受託者を個人ではなく、法人にすることもできます。
法人に委託することもできますが、家族で株式会社などの法人を設立し、その法人が受託者になることも可能です。
法人の種類には、株式会社や合同会社、一般社団法人などが挙げられます。
法人を受託者にすることで、受託者が死亡する可能性がなくなり、永続的に家族信託を続けられるメリットがあります。
一方、法人を運営することになるため、法人税の納付や税務申告の手間、税理士報酬の発生などのデメリットがあります。また、多数決での意思決定が一般的であるため、スムーズに信託事務を行うことは難しくなるでしょう。
受託者を個人にするか法人にするかは、それぞれメリット・デメリットがあるため、1つずつ検討した上で判断することをおすすめします。
前述した通り、あらかじめ複数の家族信託契約を締結することが可能ですが、複数の家族信託契約を併合したり分割したりすることも可能です。
ここでは、複数の家族信託契約の併合と分割について解説します。
家族信託の併合とは、複数の家族信託をまとめることを指します。
例えば、1人の受託者が家族信託の受託者を続けられなくなった際に、他の人が受託者となっている信託契約と併合することなどが挙げられます。
家族信託の分割とは、1つの家族信託を複数に分けることを指します。
例えば、複数人での家族信託において、意思決定が円滑に進まないことから、1人ずつ別の家族信託に分割して、意思決定をしやすくするといったことが挙げられます。
家族信託の併合と分割は、原則としてどちらも委託者、受託者、受益者の合意で行われます。
しかし、信託契約の併合と分割については、債権者保護手続きが必要になります。
債権者保護手続きでは、官報報告と知れたる債権者への個別催告が必要なため、ややハードルが高いと言わざるを得ません。
そのため、利用頻度は低いのが現状です。
家族信託を複数人に分けることがおすすめな事例が3つあります。
それぞれどんなケースかを1つずつ解説します。
財産別に信託したい相手が異なるケースは、家族信託を複数に分けることがおすすめです。
例えば、長男には上場株式を、次男には収益不動産の管理を信託したい場合などが考えられます。
財産別に家族信託を複数に分けることで、長男と次男が干渉することなく財産を管理できるのです。
加えて、長男と次男がそれぞれの信託監督人となりお互いの管理について監督したり、お互いを第二信託者とすることで、万が一の場合でも家族信託に与える影響を少なくできます。
信託財産の所有形態が共有名義のケースも、家族信託を複数に分けることがおすすめです。
例えば、夫婦の共有名義で所有している自宅と金銭を、息子を受託者とする家族信託の信託財産にしたいケースです。
夫婦は自宅を1/2ずつ共有しているため、金銭も同じ割合で信託しなければ、贈与とみなされ、贈与税が発生してしまう場合があります。
そこで、父と息子との家族信託と母と息子との家族信託というように、家族信託を複数に分けることで、贈与とみなされるのかを気にすることなく信託できます。
財産別に受益者を変えたいケースも家族信託を複数に分けると良いでしょう。
父親が所有している自宅と父親が経営している会社の株式を、それぞれ別の受益者に相続したい場合が考えられます。
例えば、自宅は父親の死後に母に相続させ、母の死後は次男に相続させ、経営している会社の未上場株式を後継者である長男に相続させたい場合などがあるでしょう。
この場合、1つの信託契約で管理することは難しいため、財産別に受益者を変える家族信託を行うことで、円滑な管理ができます。
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家族信託の受託者が複数必要な場面は多くあります。
そこで、家族信託の受託者を複数にすると、メリットのみならずデメリットもあるため、必ずしも最適な対策方法ではない場合も少なくありません。
ただし、どの制度を選んで良いのかは個別の事情によって大きく異なるため、自分で判断するのは難しいことも多いでしょう。
ファミトラでは、専属の家族信託コーディネーターが状況を把握した上で、適切な対応策を紹介しています。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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