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法定後見制度と並んで、認知症対策として注目されている任意後見制度をご存じでしょうか。
任意後見制度は、本人の判断能力が低下していない場合であっても利用することができるというメリットがあります。
その一方で、デメリットも存在します。
この記事では、任意後見制度のデメリット、トラブル事例、家族信託との比較など、任意後見制度の利用で公開したくない方に役立つ情報を解説します。今後、任意後見制度の利用を考えている方は、本記事をぜひご活用ください。
任意後見制度とは、現在は判断能力が衰えているわけではないものの、将来的に病気などになって判断能力が衰えた場合に備え、任意に後見人を選任しておく制度です。その後見人のことを「任意後見人」と呼びます。
任意後見人の比較対象として法定後見人が存在します。法定後見人は、すでに本人の判断能力が衰えている場合に選任されます。本人の判断能力が衰えていない場合は、家庭裁判所は法定後見人を選任することができません。
よって、将来に備えて後見人を選任しておきたい場合は、法定後見制度ではなく、任意後見制度を利用します。
以下では、知らずに後悔しやすい任意後見制度のデメリットを6つ紹介します。任意後見制度にはメリットがありますが、デメリットも存在します。
以下に挙げる代表的なデメリットは必ず理解しておきましょう。
任意後見人には、取消権や同意権は与えられていません。つまり、成年被後見人が行ってしまった不利益な行為を取り消したり、成年被後見人が契約を締結することに同意する権利はありません。
任意後見人に与えられているのは、代理権のみです。さらに、その代理権は任意後見契約で定められたものに限られます。
このように、任意後見に与えられている権利は、法定後見人に比べて限定的です。取消権が与えられていない点は大きなデメリットといえるでしょう。
任意後見監督人とは、任意後見人の後見事務を監督する立場の者で、任意後見人が契約の内容に沿って後見人の職務を行っているか否かを監督する人のことです。任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生します。
任意後見人が後見事務を行う場合、原則として任意後見監督人の同意は不要です。ただし、任意後見契約で任意後見監督人の同意を要する行為を定めた場合、その行為については任意後見監督人の同意が必要です。
任意後見監督人の同意が必要な場合、任意後見人の後見事務が制限される場合があります。
任意後見人は任意後見契約によって自由に選任できます。一方、任意後見監督人は家庭裁判所が選任します。通常は家庭裁判所によって弁護士や司法書士が任意後見監督人として選任されるのです。
任意後見監督人の報酬は、管理財産の額を考慮して家庭裁判所が決定します。管理財産の額が5,000万円以下の場合は月額1~2万円、5,000万円以上の場合は月額2~3万円が相場です。
一方、任意後見人の報酬は原則として任意後見契約によって自由に決定することができます。弁護士や司法書士を任意後見人に選任する場合、月額3~5万円が相場です。
財産管理契約などを締結するとさらに費用がかかる場合があります。
このように、トータルで考えると任意後見制度の利用は費用が高額になることがあります。
任意後見人の後見事務は、本人の死亡時までです。本人の死亡後は、任意後見契約の終了により後見事務も終了します。
よって、死後に発生する手続きについては任意後見契約では対応できないというデメリットがあります。
任意後見契約とは別途の契約として、死後事務契約を締結すれば死後に発生する手続きについても対応は可能です。
任意後見契約を締結すれば任意後見契約の効力が発生するわけではありません。任意後見制度を利用するためには、家庭裁判所への申し立てが必要です。家庭裁判所は任意後見制度の利用申し立てがあった後、任意後見監督人を選任します。
家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されてはじめて、任意後見契約の効力が発生します。
家庭裁判所への申し立ての手続きは複雑であり、そのためか任意後見契約が発効しないケースが増えています。
任意後見契約に関する法律では、任意後見契約が発効する前は、当事者の一方はいつでも任意後見契約を解除することができることが定められています。
一方当事者は、他方当事者に対し、解除通知書を送付し、後見終了の登記をすることによって、一方的に解除できてしまうのです。
任意後見契約を解除されてしまった場合、後見を受けることはできず、別の人と任意後見契約を締結しなおす必要があります。
その際には、当然、再度公正証書作成費用などがかかることになります。そうすると、契約締結に要した費用が無駄になってしまいます。
以下では、任意後見人や任意後見監督人とのトラブル事例を4つ紹介します。いずれもよく見られるケースであり、注意しておくべきでしょう。
トラブル事例の1つ目は、任意後見受任者が後見の申し立てをしないために、任意後見契約が発効しないケースです。
先ほども説明したとおり、任意後見制度を利用するためには、家庭裁判所への申し立てが必要です。家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されてはじめて、任意後見契約の効力が発生します。
つまり、任意後見受任者が家庭裁判所に対し後見の申し立てをしなければ、任意後見契約は発効しないままとなってしまいます。
任意後見契約は、発効までの手続きが煩雑です。そのため、手続きの煩雑さを嫌い発効されないケースが多いのです。
また、任意後見契約が発効するためには、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任される必要があります。
任意後見監督人は任意後見人を監督する者であり、任意後見人の活動が制限を受ける場合があります。また、任意後見人の他、任意後見監督人にも報酬を支払わなければなりません。
そのため、任意後見監督人が選任されるのを嫌い、任意後見契約を発効しないケースも多いのです。
任意後見契約を発効したくても、家族の反対にあって発効できないトラブルが発生することがあります。
トラブル事例の2つ目は、被後見人の意思を無視して勝手に法定後見に切り替えられてしまうケースです。
任意後見契約を締結したとしても、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されるまでは発効しません。
中には、家庭裁判所が任意後見受任者に法定後見を提案し、任意後見受任者がその提案に同意してしまうケースがあるのです。
法定後見に切り替えられてしまった場合、家庭裁判所が法定後見人を選任します。そうすると、本人が選任した後見人以外の者が後見人になり、トラブルとなる場合があるのです。
また、任意後見契約によって取り決めた報酬以上に高額な費用が発生する場合があります。
このように、被後見人の意思を無視して法定後見に切り替えられてしまい、トラブルとなるケースがあるのです。
トラブル事例の3つ目は、任意後見人による管理財産の使い込みが発生するケースです。
本来であれば任意後見人は、被後見人の財産を保護したり、生活の支援を行ったりする役割を担います。
しかしながら、任意後見人がその権限を悪用して被後見人の財産を使い込んでしまうトラブルが過去に発生しています。
そのトラブルのほとんどは、任意後見人が親族である場合です。親族同士だと、つい使い込んでしまうという心理が働いてしまうのでしょう。
被後見人は判断能力が著しく衰えている場合が多く、使い込んでもバレないという意識が助長されてしまうのです。
そのようなトラブルを避けるため、任意後見人は信頼できる人を選ぶようにしましょう。
トラブル事例の4つ目は、任意後見監督人が自身の利益のために口を出してくるケースです。
任意後見監督人は家庭裁判所により選任されるため、必ずしも希望の任意後見監督人が選任されるわけではありません。そのため、親族と馬が合わない任意後見監督人が選任されてしまう場合があるのです。
馬が合わないだけであれば我慢できるかもしれません。しかしそれだけでなく、任意後見人である親族の報酬額に口を出してきたりするケースも見受けられます。
反対に、仕事を全くしない任意後見監督人が選任されてしまうこともあります。そのような任意後見監督人にも報酬を支払わないといけません。
そのことに不満を持った親族との間でトラブルになる事例もあります。
希望通りの任意後見監督人が選任されるとは限らないため、任意後見監督人とのトラブルは避けようがない側面があります。
任意後見制度にはそのようなリスクもあると認識しておきましょう。
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任意後見制度にはメリットのほかデメリットもあります。そのため、気を付けて利用しないとトラブルの元になりかねません。
任意後見制度の利用で後悔しないために、併用を検討したい制度を3つ紹介します。
家族信託と任意後見制度は、どちらも家族や親族に本人の財産管理を任せることができるという点で共通しています。
なお、家族信託とは何かについては、以下のリンクをご参照ください。
家族信託と任意後見制度は共通する点があるものの、様々な違いもあります。相違点を理解した上で、自身の状況や希望にマッチするものを選びましょう。
以下では、家族信託と任意後見制度の相違点を説明した上で、いずれを選んだほうが良いかについて説明します。
家族信託と任意後見制度の主な相違点は以下の通りです。
家族信託 | 任意後見制度 | |
---|---|---|
発効タイミング | 判断能力が低下する前 | 判断能力が低下した後 |
家庭裁判所の関与の有無 | なし | あり |
監督人の有無 | なし | あり |
ランニングコストの有無 | なし | あり |
身上保護の権限の有無 | なし | あり |
積極的な財産運用の可否 | 可 | 不可 |
相続対策の可否 | 可 | 不可 |
詐欺対策の効果 | 高 | 低 |
全財産の管理の可否 | 不可 | 可 |
家族信託の特徴のうち、以下の4つの点は、任意後見制度の落とし穴になり得る部分がカバーされているといえるでしょう。
①発効タイミングが、本人の判断能力が低下する前であること
②原則として、ランニングコストがかからないこと
③詐欺対策として効果があること
④監督人がいないこと
一方で、家族信託の特徴のうち、以下の点は、任意後見制度と比較して欠点といえるでしょう。
①身上保護の権限がないこと
②管理可能な財産の範囲が限定されていること
以上の相違点を踏まえると、家族信託と任意後見制度のいずれを選択したほうが良いかについては、以下のことがいえるでしょう。
家族信託を利用するほうが良いケースは主に以下の5つの場合です。
以上、家族信託を利用するほうが良いケースを紹介しました。その他の家族信託ついてのご相談は、ぜひファミトラへご相談ください。
任意後見人を立てるほうが良いケースは主に以下の3つの場合です。
家族信託と任意後見制度は、一方を利用すると他方を利用することができないという関係ではありません。2つは併用することが可能です。
では、どういった場合に家族信託と任意後見制度を併用したほうが良いのでしょうか。以下では、家族信託と任意後見制度を併用する基準を2つ紹介します。
以上、併用したほうが良い場合を2つ紹介しました。家族信託と任意後見制度を併用する場合、家族信託の受託者と任意後見人を同一人にすることも可能です。
しかしその場合、受託者と任意後見人の利益相反問題が生じることになります。
よって、任意後見監督人に代理をしてもらうなど、留意すべき点が多いことは理解しておきましょう。
以下では、任意後見人に関するよくある質問を2つ取り上げて回答します。
任意後見人との契約解除については可能です。ただし、一般の契約解除と異なり、任意後見監督人の選任前後で以下のことが必要です。
任意後見監督人の選任前 | 公証人の認証のある書面によって行う |
任意後見監督人の選任後 | 裁判所の許可を得る |
次に、契約内容の変更については、代理権に関わる変更はできません。その他の内容については変更が可能ですが、公正証書で行う必要があります。
任意後見契約を締結するためには、本人に判断能力があることが前提となります。
認知症の程度にもよりますが、ご自身で任意後見契約の内容を十分に理解することができない場合、任意後見制度の利用は難しいでしょう。
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認知症対策として注目を集めている任意後見制度ですが、デメリットも存在します。
任意後見制度を利用して後悔しないためには、任意後見制度や任意後見人の特徴の理解が必要です。
場合によっては家族信託のほうが良い場合もありますし、両方を併用したほうが良い場合もあります。
家族信託と任意後見制度のいずれを選択すべきかについて相談したい場合、家族信託や任意後見に精通している専門家に相談することをおすすめします。ファミトラでは、家族信託と任意後見制度の選択のお悩みなどの無料相談をお受けしています。家族信託や任意後見制度についてのお悩みは、お気軽にご相談ください。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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