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将来的に親の認知機能が低下した際に、自分自身が成年後見人になるかどうか検討される方もいるでしょう。
弁護士や司法書士などの専門家ではなく、家族や親族が成年後見人になる場合、小さくないデメリットがあります。十分に理解しておかないと、後で他の親族とトラブルになることもあるでしょう。
そこで本記事では、家族や親族が成年後見人になるメリット・デメリットや、よくあるトラブル事例、デメリットの回避方法などを具体例を挙げて解説します。
家族や親族が成年後見人になるケースは、実はあまり多くありません。
裁判所の資料によると、令和4年では申し立ての時点で家族や親族を成年後見人等の候補者に挙げていた割合も約23.1%と低くなっています。また、家族や親族(配偶者、親、子、兄弟姉妹など)が成年後見人等に選任されたケースは全体の約19.1%でした。
家族や親族以外のケースでは、弁護士が27.1%、司法書士が36.8%、社会福祉士が18.3%と、専門士業で80%以上を占めています。
参考:成年後見関係事件の概況
このように、家族や親族はそもそも申し立ての時点で後見人等の候補者として申請することが少なく、また、実際に成年後見人等として選任されるケースも多くないのです。
なぜ、家族や親族が成年後見人になるケースは少ないのでしょうか。
家族や親族が成年後見人に就任する主なデメリット4点を確認しましょう。
成年後見人の行わなければならない職務の負担は小さくありません。
主な職務は、大きく分けて財産管理と身上保護の2つです。
財産管理では、本人の預金口座の入出金状況の確認や、所有している不動産の管理・処分などを行います。居住用不動産を売却する際は、裁判所に申し立てをして許可をもらうという煩雑な手続きが必要です。
身上保護では、本人が入所する介護施設や、入院する病院との契約などの事務手続きを行います。
また、後見事務に関して、少なくとも年に1回は書面でまとめて裁判所に報告しなければなりません。
このように、職務の遂行には大きな負担が伴うのです。
法的なトラブルが生じた際に対処が難しいというデメリットがあります。
例えば、訪問販売などで本人が不用品を大量に購入してしまった場合には、成年後見人はその購入を取り消すことが可能です。
店で日用品を購入したケースでは取り消せませんが、訪問販売であればクーリングオフ手続きにより取り消すことができます。
しかし、一般に家族や親族は法的知識が乏しいことがしばしばです。具体的にどのような手順で取消し手続きを行えば良いかわからず、対応に困る場合があります。
弁護士や司法書士といった専門家の場合は、容易に取消しの手続きができるでしょう。
専門家が就任するケースと比べて、財産の使い込みといった不正が起こりやすいです。
専門家と違い、一般の方は他人の金品を預かる機会は多くありません。そのため、いくら家族の財産といえども、自身の管理下にあると、自分の財産であるかのように勘違いし、趣味や遊びに使ってしまうケースがどうしても生じてしまいます。
実際に、裁判所のデータでは、成年後見人に専門家が就任する場合に比べて、非専門家が就任する場合のほうが不正事例と被害金額が格段に多くなっています。
参考:後見人等による不正事例
非専門家が全て家族や親族であるとは限りませんが、専門家に比べると、不正が発生しやすいということはいえるでしょう。
本人の財産の横領といった不正が発生すれば、他の親族との間に不和が生じるでしょう。
しかし、不和が生じるのは不正が発覚した場合に限りません。
例えば、他の親族が成年後見人となった親族に対して、管理している銀行口座の残高や取引履歴について逐一開示や報告を求める場合です。
財産管理の方法や報告の頻度をめぐって親族間で不和が生じるという事態は少なくありません。
家族や親族が成年後見人になることで生じるトラブルは後を絶ちません。
代表的な3つのトラブル事例を確認しておきましょう。
不正を疑われて他の親族とトラブルになる事例としては、以下のケースがあります。
親が認知症になり子どもが複数人いる場合、誰が成年後見人になるか(誰が親の財産を管理するか)をめぐってトラブルになるケースは少なくありません。
本人の財産が横領されると、将来的に他の子供がもらえるはずの遺産が減少するためです。
また、横領の金額が多額な場合は、本人の生活資金がなくなってしまう可能性すらあるでしょう。
自分に有利な遺言書を書かせてトラブルになった事例としては、以下のケースがあります。
被後見人による遺言書の作成には、法律上、医師2名以上の立ち会いなどのいくつかの厳格な条件を満たすことが必要です。法律の条件を満たさない遺言書は無効になります。
しかし、本人の判断能力の低下につけ込み、自分の都合の良いように遺言書を書かせて他の親族とトラブルになるという事例は後を絶ちません。
相続における優遇を主張してトラブルになった事例としては、以下のケースがあります。
本人の財産管理や身上保護の職務を行ったからといって、対価として全ての相続財産を受け取れるわけではありません。
成年後見人には、基本的に報酬が支払われますので、相続の優遇を主張することは筋違いです。
しかし、本人への献身を理由に、相続財産の配分をめぐって遠方の親族とトラブルになるケースは少なくありません。
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家族や親族が成年後見人となるデメリットを回避するには、成年後見監督人を選任してもらうことが効果的です。
成年後見監督人とは、成年後見人の職務遂行を監督するために家庭裁判所が選任する人のことです。
本人や親族などの申し立てにより選任されることが多いですが、必要がある場合は家庭裁判所が職権で選任することもあります。
役割は、成年後見人が不正に本人の財産を散逸させないよう、適正に後見事務がなされているかをチェックすることです。
多くの場合、弁護士や司法書士といった専門家が選任されます。
使い込みなどのデメリットを回避するには、成年後見監督人を選任し、監督してもらうことが有効です。
ここまで家族や親族が成年後見人に就任することによるデメリットを説明しましたが、もちろんメリットもあります。
主なメリット3つを解説します。
身内が就任するケースでは、本人と意思疎通がしやすいことが多いです。
専門家が就任する場合、本人とコミュニケーションを重ね、信頼関係を一から構築する必要があります。
信頼している身内であれば、そのような必要はありません。
信頼している家族や親族がいる場合は、お互いの性格や家族関係をもともと理解しているため、安心して財産管理や身上保護を任せられるでしょう。
家族や親族に任せる場合、第三者に健康状況や財産状況、家族関係の事情などのプライバシーを開示しなくて済みます。
財産管理と身上保護という職務を行ってもらうには、本人の健康状況や財産状況を開示することが必要です。
弁護士や司法書士といった守秘義務を負っている専門家とはいえ、財産状況などのプライバシーの開示には抵抗を覚える方は少なくないでしょう。
家族や親族に後見人を任せられれば、全くの第三者にプライバシーを開示する必要はないのです。
家族や親族が就任するケースでは、報酬を低く抑えられる場合が多いです。
成年後見人の報酬は、管理する財産の金額などを考慮して家庭裁判所が決定します。
専門家に任せると、月額約2〜6万円の報酬がかかるといわれています。
家族や親族の場合、専門家がなるケースよりも、報酬が低く設定される傾向にあります。
また、家族や親族が納得していれば、無報酬とすることも可能です。
家族や親族に任せようとしても、実はなれないケースがあることをご存知でしょうか。
家族や親族が後見人に就任できないケースを紹介します。
成年後見人になるには、特別な資格は必要なく、原則として誰でもなることが可能です。
しかし、法律上の欠格事由に該当する場合は、就任できません。法律上の欠格事由は以下の通りです。
以上のいずれかに該当する場合は、家族や親族であっても成年後見人にはなれません。
成年後見人は、最終的には家庭裁判所が選任します。
そのため、申し立て時に家族や親族が候補者となっていたとしても、候補者以外の専門家が選任されるケースもあるでしょう。
例えば、親族の間で意見対立がある場合や、本人の財産の金額が多い場合などには、候補者以外の者を選任する場合があるのです。
候補者として裁判所に申し出たとしても、案件によっては専門家などの第三者が選任される可能性があることは認識しておきましょう。
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大きく分けて、身上保護と財産管理の2つがあります。
身上保護とは、主に本人が日常生活を送るために必要な療養看護の契約の手続きなどを指します。具体的には、病院への入院手続きや介護施設への入所手続きが該当します。
身上保護に際しては、可能な限り本人の意思を尊重し、心情や生活状況に配慮することが必要です。
財産管理とは、本人の保有する不動産や預貯金などの財産を管理することをいいます。
具体的には、生活用の預金口座の通帳やキャッシュカードを預かり、その預金から必要な生活費を計画的に支出するなどです。
職務の実施状況は、少なくとも年に1回は、家庭裁判所に報告しなければなりません。
「正当な事由」がある場合に、家庭裁判所の許可が得られれば、辞任できます。
他の仕事が忙しいなどの自らの都合による辞任はできません。
成年後見人は、被後見人の権利利益を保護するために選任されるため、自身の都合で簡単に辞任できたのでは、権利利益を十分に守れないためです。
ただし、家庭裁判所が「正当な事由」を認めれば、辞任できます。
「正当な事由」とは、例えば成年後見人自身が病気や高齢となり、または遠方に引っ越したりして、職務を十分に果たせなくなった場合のことです。
「正当な事由」の判断を含めて、最終的な辞任の許可は家庭裁判所が行います。
そのため、家庭裁判所が辞任の許可を行うまでは、職務を遂行しなければなりません。
家族や親族が成年後見人になる場合、意思疎通がしやすい、報酬が抑えられるなどのメリットがあります。
その一方で、職務負担が大きい点や、親族間でトラブルになるリスクがある点など、デメリットも少なくありません。
財産管理の方法としては、成年後見制度の利用のみではなく、認知症になる前に家族信託を準備する方法もあります。
家族信託では、自らの財産の管理を委ねる受託者を契約の中で指定できるため、安心して任せられるでしょう。
家族信託のことは、ぜひファミトラへご相談ください。成年後見制度を利用するべきなのか、それとも家族信託を利用するのか専門的な知識を持っていない場合総合的に判断することが難しくなります。
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東証一部上場の企業で10年以上に渡り法人営業・財務・経営企画等の様々な業務に従事。司法書士資格を取得する中で家族信託の将来性を感じ、2021年6月ファミトラに入社。お客様からの相談対応や家族信託の組成支援の他、信託監督人として契約後の信託財産管理のサポートを担当。
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