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遺産相続とは、被相続人と呼ばれる亡くなった方の権利や義務などの財産を相続することです。遺産相続により、親族間に争いが起こることも珍しくありません。
「遺産相続はいつまでにすればいいの」「相続対象者の順位を知りたい」と気になる方もいるでしょう。
本記事では、遺産相続の対象者の順位や手続き、相続にかかる税金をわかりやすく解説します。特に高齢の親を持つ方や相続に備えたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
遺産相続とは、亡くなった被相続人が遺した権利や義務などの財産を相続人が引き継ぐことです。引き継ぐ財産を相続財産と呼び、相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。
遺産相続に関する下記の4点について、詳しく解説します。
遺産相続が開始する条件と時期は、被相続人が死亡したときです。民法第882条では、相続開始の原因を「相続は、死亡によって開始する」と規定しています。
死亡には、自然的な死の他に失踪宣告も含みます。失踪宣告とは、行方不明の不在者の生死が7年間明らかでないときに家庭裁判所が申し立てにより行うものです。
遺産相続の対象となる財産は、プラスの財産とマイナスの財産の両方です。日本の相続制度は包括承継主義を採用し、債務を含む全ての財産が直ちに相続人に承継されると考えるためです。
プラスの財産の代表的なものとして、預貯金・土地建物などの不動産・株式などの有価証券が挙げられます。
マイナスの財産の代表的なものとして、住宅ローンなどの借入金・未払金などが挙げられます。
遺産相続の対象外の財産は、民法第896条に規定する被相続人の一身専属権です。一身専属権とは、年金受給権・生活保護受給権などです。
また、民法第897条では家系図・祭具・お墓などの祭祀財産の所有権は「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と規定されています。祭祀財産も遺産相続の対象外の財産です。
遺産相続手続きの期限は、大別すると相続開始を知った時期から3カ月以内・4カ月以内・10カ月以内に行わなければなりません。
3カ月以内に行う手続きは、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」です。3カ月の熟慮期間に相続財産を調査しても「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれにするか決められない場合があります。
決められない場合には、家庭裁判所への申し立てにより、3カ月の熟慮期間を延長することができます。
4カ月以内に行う手続きは、所得税の準確定申告と納税です。準確定申告とは、相続人などが、1月1日から死亡した日までに確定した被相続人の所得金額と税額を計算して、申告と納税を行うことです。
10カ月以内に行う手続きは、相続税の申告と納税です。申告期限までに申告をしなかった場合には、相続税本税のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります。
相続税の申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。(被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合)
遺産相続の方法は以下の3つです。
それぞれについての詳しい内容は、後述します。
遺産相続の対象者の範囲と相続順位を下記の3つのケースごとに解説します。
法定相続人とは、民法で定められた「被相続人の財産を相続する権利を持つ人」です。被相続人の配偶者と被相続人の一定の範囲の血族のことをいいます。
法定相続人の対象者の範囲と相続順位は、被相続人からみると下記のとおりです。
遺言がない場合、上記の配偶者・子ども・直系尊属・兄弟姉妹の血族の順番で相続人になる旨、民法に規定されています。
被相続人の配偶者は、常に法定相続人ですが、婚姻関係にある配偶者に限定され、事実婚などの場合は認められません。
第1順位は被相続人の子どもです。第1順位の子どもがいない場合は、第2順位が法定相続人になります。
第2順位は直系尊属で被相続人から見て、直系の親以上の世代です。第1順位と第2順位の両方がいない場合には、第3順位が相続人となります。
第3順位は、兄弟姉妹で傍系血族です。
代襲相続人とは、相続権のある人が被相続人よりも先に亡くなっている場合に、その地位を引き継ぎ相続権を持つ人のことをいいます。
代襲相続人になるケースは、下記のとおりです。
ただし、第3順位の代襲相続人の甥や姪が亡くなっている場合には、甥や姪の子どもである姪孫や又甥に再代襲相続はされません。
受遺者とは、遺言により相続財産の贈与を受ける人のことです。遺言による贈与を受ける人は、原則として法定相続人以外の人になります。相続財産を受け取る人には、法人を含みます。
受遺者には、特定受遺者と包括受遺者があります。特定受遺者は、財産を具体的に特定して受け取る人です。包括受遺者は、プラスの資産もマイナスの資産も含め、財産に対する割合によって包括的に遺産を受け取る人のことです。
遺産の分配割合を決める方法は、以下の3つの場合によって異なります。
以下で詳しく解説します。
法定相続分による分配割合は、下記のとおりです。(法定相続分の割合については、民法第900条で規定されています。)
様々なケースがあるため法定相続分の割合は、相続人の組み合わせに応じて見ていく必要があります。
遺産分割協議は、相続人全員で行い全員の合意が必要です。分割割合は相続人全員の合意があれば、どういう割合で分割しても問題はありません。
遺産分割協議で合意しなかった場合には、通常は法定相続分での分割割合を検討します。個々の相続人の事情や希望に関係なく、分割割合を決めることができるためです。
遺言書があれば、一般的には遺言書どおりに財産を分割します。被相続人の生前の指示に従って、遺言書の内容が優先されることが原則です。
遺言書には、自筆証書・公正証書・秘密証書などの形式があります。被相続人が遺言書を書き遺したとしても、形式が民法に定めた方式に従っていなければ遺言書は無効になります。
遺留分とは、最低限度の取得が保証された遺産に対する割合のことをいい、特定の法定相続人に認められています。
遺留分を有する法定相続人は、以下の方です。
遺留分のない法定相続人は、以下の方です。
遺言書があっても、遺留分は保証されています。
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遺産相続手続きの一般的な流れは、下記のとおりです。
遺産相続手続きの一般的な必要書類等は、下記のとおりです。
被相続人から遺産を相続する場合、相続税がかかることもあります。2021年に相続税がかかったのは、相続人の約9%でした。
プラスの相続財産の額から借金などのマイナスの財産を差し引いた「課税価格の合計額」が「基礎控除額」を上回ったとき、相続財産を取得した人は相続税の申告をする必要があります。
相続税の「基礎控除額」は、3,000万円+(600万円×法定相続人数)で算出します。
相続税額は、相続で引き継いだ財産だけで求めることはできません。死亡退職金や生命保険金などの「みなし相続財産」、死亡前3年間に生前贈与された財産及び相続時精算課税制度の適用を受けた生前贈与財産も加えて、計算する必要があるためです。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月目の日までです。被相続人の住所地を所轄する税務署に申告書を提出しなければなりません。
以下は、相続税に関するよくある2つの質問です。
負の財産だけを相続しないことはできません。
なお、負債などの相続したくない遺産がある場合、限定承認を行えば、プラスの財産の範囲内においてのみマイナスの財産を相続します。
遺言書があれば、遺言書の内容どおりに相続するのが基本です。原則として、被相続人の意思を反映した遺言書の内容が優先されるためです。
例外として、受遺者と相続人の全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことができます。
また、民法の形式要件を満たしていない遺言書は、原則として無効です。遺言書が無効であれば、遺言書の内容に従う必要はありません。
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ここまで、遺産相続の期限や対象者の順位と手続きの流れ、税金について、様々な観点から解説しました。
遺産相続の概要や遺産相続の対象者と相続順位、分割割合のルールについても詳しく紹介しましたので、遺産相続の手続きを行う際の参考にしてください。
早めに相続対策をするためには、法定相続人と相続順位の把握が必須です。遺言書や遺産分割協議への理解を深めておくことで、遺産相続の手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
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