親とお金の話をするタイミングや話し方|先送りがダメな理由とは?

親とお金の話

両親も年を取ってきて、今後についてお金のことを含めて話をしたいけれど、中々切り出しにくいとお考えの方は多いのではないでしょうか。

そうはいっても、お金に関することは避けて通れないものです。

この記事では、親にお金の話を切り出すタイミングや話し方について解説します。
お金の話を後回しにしたために起こるデメリットについても解説するので、ぜひ最後までお読みください。

目次

親と話しておきたいお金に関する6つの内容

年金

①貯蓄や年金で生活費は足りているのか

令和3年総務省統計調査によると、夫婦高齢者無職世帯と高齢単身無職世帯の実収入、可処分所得、消費支出は以下となっています。

世帯区分実収入可処分所得消費支出
夫婦高齢者無職世帯236,576円205,911円224,436円
高齢単身無職世帯135,345円123,074円132,076円
可処分所得(かしょぶんしょとく)収入のうち、税金や社会保険料などを除いた所得で、自分で自由に使える手取り収入のこと。 給与所得者の場合は、「給与収入金額-(社会保険料+所得税・住民税の額)」がこれに当たる。

調査結果からわかるように、年金だけで生活するのは難しいのが現状です。

貯蓄がそれなりの額であれば貯蓄を切り崩しながら生活できますが、ケガや病気などになった場合などのことを考えると不安が残ります。

子どもに金銭的余裕があれば、親に生活費を援助することを考えなければいけません。
もし、親に貯蓄がほとんどない場合、生活保護の申請も考える必要があります。

②万が一のときの蓄えがあるのか

親が病気やケガで入院することになった、あるいは介護が必要になった場合、大きなお金が必要になります。

親が入院費や介護費用を自分の貯蓄から支払うことが出来るのかを、子どもは把握しておかなければ、万が一のときに対応できません。
親の貯蓄額がいくらくらいあるのか、おおよそで構わないので把握しておきたいところです。

もし、親の貯蓄額が少ない場合、子どもは万が一のときに備えた貯蓄を始めるなど対策を取る必要があります。

③お金の預け先や通帳や印鑑の保管場所・暗証番号

金融機関関連のことも、親が元気なうちに聞いておきたいことのひとつです。

なぜなら、親が認知症になった場合、預金口座のある銀行や印鑑・通帳の保管場所、そしてキャッシュカードの暗証番号を調べることは難しいからです。

例え親が認知症になっても、キャッシュカードの場所と暗証番号がわかれば、必要なときに親の預金を活用できます。
これらのことがわからなければ、入院費用や介護費用は子どもが立て替えなければなりません。

④資産運用やローン・保険の状況

まず資産運用については、毎月分配型の投資信託、ファンドラップ、外貨建て生命保険などがないかも聞いておきたい点です。

金融庁の「金融レポート」によると、これらの金融商品は、運用が複雑でリスクも高く、手数料が不適正に高額であるとされています。
これらの金融商品を持っている場合、運用が簡単なものや手数料が安価なものへの切り替えを考えます。

ローンについても残額や月返済額、金利などを考慮して、場合によっては借り換えや子どもが引き継ぐなどの対策が必要です。

保険についても内容を見直し、不相応に掛け金が高くないか、入院や介護費用などをカバーするものなのか確認します。
また、相続を見据えて受取人の変更などをおこないます。

⑤今後の財産管理や生前贈与・相続などについて

親の財産を誰がどうやって管理していくのかを話し合うことも重要です。
特に親が収益不動産を持っている場合、誰がその不動産を管理するのか決めておかないと後々トラブルが起こり得ます。

また、財産の管理に対しては、家族信託の利用などが認知症になった場合の対策として有効です。

親にそれなりの財産がある場合、生前贈与も選択肢に入ってきます。
生前贈与のメリットは、相続対策になる、特定の人に財産を贈与できることです。

相続については争族になることを避けるため、遺言書の作成をおすすめします。

⑥知人に借りたお金のことを忘れていないか

親が亡くなった途端、知人から「親に貸した金を返してくれ」などと言われたというのもよく聞く話です。

借用書があればまだしも、知人なので口約束で貸したなどと言われては、子としては確認のしようがありません。

証拠がないと突っぱねる事もできますが、親との関係を考えると無下にするわけにもいかず、結局、言われた金額を払う場合が多いようです。

このような事態を避けるためにも、元気なうちに親に借金がないのかを確認することが大事です。

知人からの借金がある場合、金融機関などの借り入れと異なり感情的になりがちなため、できるだけ元気なうちに完済しておいた方がいいでしょう。

親とお金の話をするのは元気なうちがいい

親とお金の話

日本ではお金の話をするのは、はしたないと考えられてきましたが、親とお金の話をするなら元気なうちにするべきです。理由は以下3つです。

  1. 親が認知症になった後では、お金の話が出来ない
  2. 親が体調が悪くなってから話すと遺産目当てだと思われ、話してくれなくなる
  3. 親の体調が悪くなってから話すと親に病状の重さを気付かれてしまう

親が元気なうちにお金の話をするのは、子どもたちのためだけではなく、親の老後を充実させるためでもあります。

認知症になったら介護施設に入るのか、在宅介護にするのかなどのヒアリングをしているうちに、親が資産状況を話してくれるかもしれません。

親の資産状況と親が望む老後の生活がわかれば、それを実現するために様々な対策を講じることができます。親子双方にとって望ましい結果になるでしょう。 

お金の話を後回しにすると起きる可能性があるトラブル

悩む

親とお金の話をするのは元気なうちがいいというのは、上で述べた通りです。

それでは、親とのお金の話を後回しにするとどんなトラブルが起きるのでしょうか。考えられるトラブルは以下の5つです。

認知症などの理由で資産が凍結される

まず考えられるのが、親が認知症などで意思表示ができなくなった場合、金融機関の口座が凍結されることです。

口座が凍結されると、本人や家族がお金の出し入れや解約ができなくなってしまいます。
年金が振り込まれている口座も凍結されるので、本人や家族の生活費や介護費用が引き出せなくなります。

資産凍結された場合の解決策は、成年後見制度を利用することです。成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した人をサポートする制度です。成年後見制度を使えば、本人の預金を生活費や介護費用に使うことができます。

しかし、成年後見制度には以下4つのデメリットがあります。

  1. 申し立てから制度利用開始まで3~4カ月かかる
  2. 家族ではなく司法書士などの専門家が成年後見人に選ばれることが多い
  3. 専門家が成年後見人に選ばれた場合、報酬が発生する
  4. 成年後見制度を開始したら、本人の死亡まで辞めることができない

医療費や介護費用、家の修繕費用などのまとまった資金が用意できない

今まで入院などしたことのない人でも、年を取れば体力・筋力とも衰えてきます。
体調不良や転倒によるケガなどで、急に入院することは十分考えられます。このような急な入院は予測不可能です。

症状が軽ければ良いのですが本人が意思表示できないような場合、入院費用などの支払いに本人の口座が使えない可能性があります。
そうなると、子どもなど家族が立て替えなければなりません。

しかし、子どもに金銭的な余裕がなく立て替え払いができないこともあります。

そのために、元気なうちから話し合いをし、親の保険を入院費用が出るものに切り替える、また、子どもたちも、不測の事態に備え貯蓄をしておくなどの対策を取る必要があります。

特殊詐欺などの被害に気付きづらい

特殊詐欺は、主に老人をターゲットにしており、その手口は年々巧妙になってきています。
被害者は、騙されたことに気づくまで相当の時間がかかります。

特殊詐欺に対する一番の対策は、普段から子どもとお金についてコミュニケーションをとっておくことです。

もし、孫を名乗る電話に出てしまったとしても、普段からお金についてコミュニケーションをとっていれば、子どもに相談することができます。
万が一、相手の口座に振り込んでしまっても、ただちに子どもに相談することで、適切に対処できるでしょう。

普段からお金について密にコミュニケーションを取ることが大事です。

資産状況がわからず相続手続きが長引く

親が亡くなって最初にするべきことは、相続財産の調査です。
相続財産はプラスのものばかりではなく、借金などのマイナス財産も含みます。 

相続が発生したときに困ることの1つに、相続財産の全貌がわからないことがあります。
相続財産の額が確定しないことには、遺産分割協議が進められないからです。

そうならないためにも、親が元気なうちに相続財産を整理し、一覧表を作っておくべきでしょう。

相続財産の調査は相続人でもできますが、預金、有価証券、不動産、負債など多岐にわたるため時間がかかります。
プラス財産よりマイナス財産が多い場合は、相続放棄も考える必要がありますが、相続放棄には期限があります。

そこで、費用はかかりますが弁護士・司法書士などの専門家に依頼することも選択肢に入れた方が良いでしょう。

資産管理に関して、家族間で争いが起きる可能性がある

親とお金の話

親が認知症などで意思表示ができなくなったとき、親の資産管理を誰がするのかをきちんと話し合っておく必要があります。

ここで気を付けなければいけないのが、決して親と管理する子どもだけで決めないことです。

親の資産管理で不平不満が出る原因は、家族間の情報格差です。
例えば、親と長男だけで親の口座を管理することに決めてしまった場合、他の家族から横領しているなどあらぬ疑いをかけられるケースもあります。

関係する家族全員が集まり全員納得した上で、どの資産をだれが管理するのかを決めておきましょう。

また、親の資産管理の内容を客観的な書面に残しておくことも、後々の争いを避けるために有効です。
具体的な資産管理の方法としては、弁護士などの専門家の関与の下、以下の3つのスキームを積極的に活用するとよいでしょう。

  • 委任契約
  • 任意後見
  • 家族信託

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親とお金の話をするのは気まずい…上手な切り出し方や話し方は?

ポイント

日本人は「お金の話をするのははしたない」という文化があります。
親とお金のことを話す重要性は理解できるが、いざ話そうとすると躊躇してしまうという方も多いでしょう。

親とお金の話をするときのポイントは
  1. いきなりお金の話をしない
  2. 親が老後の生活をどうしたいのか

という観点で話をすることです。

以下、ポイントを7つに分けて具体的に解説します。

不安を感じている点を明確にしておく

まず、親が今後の生活で不安に感じている点を聞き出し、次に、子どもが不安に感じている点を話します。

その時に、不安に感じている理由を「なんとなく」などと話したのでは、話は進みません。
「これこれこういう理由で〇〇を不安に感じている」と、具体的に話しましょう。

不安を感じている点を明確にするには、内容を箇条書きにして書き出し、それに優先順位をつけて整理する方法がおすすめです。

普段の会話を増やして話しやすい環境を作る

もう何年も親元に帰省していない子どもが、いきなり「老後の生活資金は〜」と切り出しても「久しぶりに帰ってきたら金の話か」と、親も穏やかではいられないでしょう。

近くに住んでいるのなら、週に1回くらいは電話をし、月に1回くらいは顔を見せましょう。

離れて住んでいて簡単に親に会えない場合は、週に1回くらい「最近体調はどう?」と電話をかけるだけでも親の反応が違ってきます。

最近は、LINEやZOOMなどを使ってビデオ通話などがあるので、相手の顔を見ながら話ができます。

続けているうちに、親の方から「実はこの前、風呂場で転んでしまった」など、話してくれるようになるでしょう。

親と接触する機会を増やし、相手が話しやすい環境を作りましょう。

知り合いの体験談として切り出す

親に今後どうして欲しいのか、単刀直入に聞いても中々答えてはくれません。
そこで、知り合いの体験談として切り出し、それについて親の意見を聞く方法が有効です。

自分のことだと答えにくいことも、他人のケースに意見をするのなら言いやすいものです。

「近所のAさんが、突然、脳梗塞で倒れて大変だったんだって」などと、親にも起こりうるケースを使って話をします。
そして、「お父さんはどう思う?」と、親の考えを引き出します。

問い詰めずに質問形式で話す

人は詰問されると心を閉ざす傾向にあります。

親の意向を知りたいあまり「なぜお父さんはそうしたいの?」などと、詰問調になりがちです。
これでは、親は話したいことがあっても、話したくなくなってしまいます。

質問はあくまでも親に自分の意向を話してもらうためのきっかけにすぎません。

会話の中でさりげなく聞きたい話題を出し「自分はこう思うんだけど、お父さんはどう思うのかな?」など、親が答えたくなるような質問形式を使いましょう。

エンディングノートを活用する

親にエンディングノートを渡し、次に会うときまでにできるだけ書いてもらいます。

エンディングノートのメリットは、以下の2つです。

  1. 会話よりも内容が整理される
  2. 会話では言いにくい本音も、ノートだと書けることがある

ファミトラの家族信託コーディネーターエキスパートである横手が監修した書籍(老後の心配まるごと解決ノート)も参考にしてみてください。

老後の心配まるごと解決ノート

⒈会話よりも内容が整理される

会話中は流れで話すので考えがまとまっていませんが、ノートに書くときに一度考えをまとめるので、頭の中を整理するのに有効です。

⒉会話では言いにくい本音も、ノートだと書けることがある

相手を前にするといいにくい本音も、ノートだと書きやすくなる傾向があります。

ただし、エンディングノートは、死に関することなので渡すタイミングなどを慎重に見極める必要があります。

焦らず時間をかける

親は自分の資産をいずれは子どもに継いでほしいと思っているものの、現在の資産状況を知られてあてにされることを危惧しています。
したがって、いきなりお金の話をしても嫌な顔をされるだけかもしれません。

近くに住んでいるのなら、週に1回くらいは顔を見せ、遠くに住んでいるのなら、週に1回の電話から始めましょう。

密なコミュニケーションをとってきたならまだしも、それまでほとんど疎遠にしていたのなら、お金の話ができるようになるには数年はかかると考えましょう。

このようにコミュニケーションを取っていけば、親の方からお金の話題を振ってくるかもしれません。焦りは禁物です。

具体的な数字で話す

親も具体的な数字を出されると自分の預金や年金額と照らし合わせて、自分のこととして捉えます。

例えば、介護になった場合、施設に入るには入居時に〇万円、月々△万円が必要だ、というように具体的な数字を出すことが大事です。
そのためには、子どもが事前にリサーチをしてデータを準備する必要があります。

これをきっかけに一気に話を進めたくなりますが、焦らず我慢してください。
お金の問題はやはりデリケートなので、親の様子をうかがいながらゆっくりと進めていきましょう。

家族信託コーディネーターが動画で解説するお金の話

ファミトラの家族信託コーディネーターが今までお問い合わせ事例などから、成功に導く「親とするお金の話」を動画でも解説しています。10分ほどの動画ですが親とお金の相談で悩む多くの方の状況や、リアルな声が聞けると思います。

親のお金に関するよくある質問

よくある質問
親が認知症になったときに資産の凍結を防ぐ方法はありますか?

親が認知症になると本人の預金口座は凍結され、お金の出し入れができなくなることは上述しました。

認知症発症後であれば、成年後見制度を使います。

その他にも、親が元気なうちから使える2つの方法があります。

1つは、任意後見制度、もう1つは、家族信託です。

任意後見制度とは、本人が判断能力のあるうちに、任意後見人となってくれる人と委任する事務の内容を決めておき、本人の判断能力が不十分になった場合に本人に代わって委任された事務をする契約のことです。

任意後見人は委任状なしに本人の口座にお金の出し入れができます。

家族信託とは、自分の持っている財産を信頼できる家族に託し、託された家族がその財産を一定の目的に従って管理・運用・処分する仕組みです。

本人の預金は信託財産として託すため、託された人は自由に預金の出し入れができます。

任意後見制度と家族信託は契約なので、本人の判断能力があるうちに契約しなければ使うことができないのがデメリットです。

介護費用が足りないときの対処法はありますか?

施設に入っている場合、すぐに退所を迫られるわけではないので、慌てず冷静に対処しましょう。

介護費用が足りなくなったときの主な対処法は以下の4つです。

①生活相談員やケアマネージャーに相談する

まず、専門家である生活相談員やケアマネージャーに相談しましょう。

公的支援サービスなどを紹介してもらえます。

②公的な減免制度を利用する

一定の条件を満たせば以下の減免制度の利用が可能です。

  • 高額介護サービス費
  • 高額介護合算療養費制度
  • 社会福祉法人などの利用者負担軽減制度
  • 特定入所者介護サービス費

③不動産や有価証券などの資産の売却や不動産を賃貸して収入を得る

不動産や有価証券を持っている人はこれらの資産を売却したお金や、不動産の家賃収入で介護費用を賄いましょう。

④生活保護を受ける

どうしても費用の捻出が難しい場合は、生活保護の申請をしましょう。

ただし、生活保護の申請は最後の手段です。まずは、他の制度の利用を考えましょう。

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まとめ:話しづらくても親とお金の話はきちんとしておこう

まとめ

親であってもお金の話はしづらいものですが、元気なうちに話し合っておくことが親の老後の生活を豊かにするためになります。

特に認知症になったり病気になった場合には、大きな金額のお金が必要になります。

親の資産管理に関しては、任意後見制度と家族信託の利用が有効な方法だと説明しました。

ファミトラでは相談者とその家族の想いや状況・要望を整理し、弁護士や司法書士等の専門家との間に立って、家族信託契約の手続きが順調に進むよう、調整を行う役割を担う専門家(家族信託コーディネーター)が、無料相談を受け付けています。

親とお金の相談がなかなか進まないなど、これからの親の老後の相談・任意後見制度や法定後見制度に関するご相談や、家族信託の組成に興味をお持ちの方は、一度ファミトラへご相談ください。

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この記事を書いた人

田中総 田中総 家族信託コーディネーター®エキスパート 宅地建物取引士/司法書士

東証一部上場の企業で10年以上に渡り法人営業・財務・経営企画等の様々な業務に従事。司法書士資格を取得する中で家族信託の将来性を感じ、2021年6月ファミトラに入社。お客様からの相談対応や家族信託の組成支援の他、信託監督人として契約後の信託財産管理のサポートを担当。

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