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相続人が障がい者である場合は、財産をスムーズに受け取れるよう生前の対策が必要です。障がい者の方の中には、相続への意思能力が十分でない方もいるためです。
本記事では、相続人が障がい者の場合の相続手続きや相続税の軽減対策について様々な視点から解説します。記事を読むと相続人が障がい者の場合の生前対策もわかるので、ぜひ最後までご覧ください。
相続人が障がい者の場合、相続人の意思能力の有無で相続手続きの方法が異なります。意思能力が十分であれば、成年後見人なしで手続きが可能です。
相続人の意思能力が不十分な場合には、成年後見人を選任し遺産分割する方法と法定相続分で相続する方法があります。以下で詳しく解説します。
相続人が障がい者であっても、本人に意思能力が十分に備わっていれば成年後見人を付ける必要がなく相続手続きが可能です。1人で十分に判断できる能力があるためです。
成年後見人の必要がなければ、家庭裁判所への申し立てなどの必要もなく比較的スムーズに相続手続きが進む可能性が高いといえるでしょう。
相続人が障がい者で本人の意思能力が不十分な場合は、相続に関しての意思を自ら明らかにすることができません。1つめの方法として、成年後見人を選任し遺産分割する方法があります。
成年後見人は、家庭裁判所に申し立てをして選任されます。親族を成年後見人にしたい場合でも、家庭裁判所の判断により弁護士や司法書士などの専門家になる場合があります。
親族が成年後見人になった場合には無報酬のこともありますが、専門家が成年後見人になると、報酬が必要です。
成年後見人の選任後に、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に入ります。本人に代わって成年後見人が署名捺印し、法的に有効な遺産分割協議書を作成し相続手続きを行うことが可能です。
成年後見人の職務は遺産分割後も継続し、原則として本人が死亡するか正常な意思能力を回復するまで続きます。成年後見人が職務に就いている間は、財産目録や収支報告を毎年家庭裁判所に提出する必要があります。
参考記事:https://souzoku.asahi.com/article/12763223#inner_link_004
特別代理人とは、相続人が知的障がい者や未成年者及び認知症の方で十分な判断能力を有しない場合に、本人に代わって遺産分割協議に参加するなどして手続きを行う人のことです。特別代理人は、家庭裁判所が認めた手続きに限り行うことができ、相続手続きの終了とともに任務も終了します。
特別代理人の選任が必要となる、代表的なケースを例示します。
相続手続きの当事者は、特別代理人になることができないので注意が必要です。
相続人が障がい者で本人の意思能力が不十分な場合の2つめの方法として、法定相続分で相続する方法があります。遺言が存在せず、かつ法定相続分どおりに相続するのであれば遺産分割協議を行う必要がありません。そのため、特別代理人の選任も不要になるためです。
ただし、相続財産に不動産があり共有名義にする場合には売却時に特別代理人の選任が必要です。
障がい者の意思能力は、1人1人違います。意思能力とは、自分で行う行為の理由と結果を認識して正常な意思決定をすることができる能力をいいます。
知的障がい者が福祉サービスを利用する際に必要な「療育手帳」には、重度の知的障害から軽度の知的障害まで障がいの程度が4つの区分に分かれています。
「精神障害者保健福祉手帳」は、障がいの状態に応じて1級から3級まで等級があり1級が最も障がいの程度が重い等級です。
2つの手帳はともに同じ区分や等級であっても、対象となる障がい者の意思能力の有無は個別で1人1人異なるため、障がいの程度に応じての判断は具体的なものです。
参考HP:https://www.yokohama-syougai.jp/824847704
障がい者には、相続税において「障害者の税額控除」という軽減措置がありますが、障害者控除の額は一般障害者と特別障害者で異なります。
以下で、控除額の全額を使いきれない場合の取り扱いについても詳しく解説します。
相続税の障害者の税額控除では、相続人が85歳未満の障害者であれば、相続税の額から一定額を差し引いて求めることが可能です。
課税対象の相続財産の金額を所得から減額する基礎控除と比較すると、税額控除のため軽減効果は大きいといえます。
相続税の障害者控除が受けられる方は、以下の条件を全て満たす必要があります。
障害者控除の適用条件は、下記のとおりです。
相続開始時において、85歳未満の障害者であることが要件です。
障害者は、一般障害者と特別障害者の双方を含みます。特別障害者は障害者手帳で身体1級か2級、精神1級あるいは療育Aのいずれかに該当する方です。
一般障害者は、主に下記の方が対象です。
特別障害者は、主に下記の方が対象です。
一般障害者の障害者控除の計算方法は、満85歳になるまでの年数に10万円をかけて求めます。(1年未満の期間があるときは切り上げて1年とする。)
特別障害者の障害者控除の計算方法は、満85歳になるまでの年数に20万円をかけて求めます。(1年未満の期間があるときは切り上げて1年とする。)
障害者控除は額が大きくなるため、障がい者本人の相続税額より大きくなることもあるでしょう。
控除額を使いきれない場合には、障がい者である相続人の扶養義務者の相続税額から差し引くことが可能です。扶養義務者が複数名いる場合には、扶養義務者全員で協議の上で控除額を決定します。
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障がいがある子の親が亡くなった後には、自治体や専門家の相談窓口を利用することが可能です。
親の存命中に障がいがある子の生活を守るため、生前にとれる4つの対策は下記のとおりです。
以下で詳しく解説します。
家族信託とは、被相続人本人の意思能力が十分なうちに自身の財産を家族に託して、本人に代わり財産の管理・運用・処分を行ってもらう仕組みです。
家族信託は親の認知症対策として有益です。
一方で、家族信託は障がいのある子に親の死後の財産を託したり、遺された障がいのある子の生活を守る生前対策としても利用することができます。
家族信託は、相続対策や親亡き後の問題を解決する1つの手法としても注目されています。
障がいがある子に財産を遺すため、遺言書の作成も生前対策の1つです。遺言により、障がいがある子に財産を多く渡すことが可能です。
遺言書作成により、確実に障がいがある子に財産を遺すことができるものの、他に兄弟がいる場合には相続人同士のトラブルになる恐れも考えられます。
もちろん遺言書の作成にあたっては、遺留分について事前に考慮しておく必要があります。
障がいのある子に契約の判断能力がある場合に限り、任意後見制度の利用が可能です。
障がいのある子である本人が、自由に任意後見人を選ぶことが可能です。信頼できる親族を任意後見人に指定できる点は、任意後見制度のメリットです。
任意後見制度のデメリットは、後見監督人の選任が必要になることです。家庭裁判所が後見監督人を選任し、基本的に弁護士や司法書士などの法律の専門家が選ばれることが多いです。後見監督人には、報酬が発生し一定のランニングコストがかかります。
また、任意後見制度には取消権がないこともデメリットの1つです。被後見人が不当な契約をした場合でも、任意後見人が取り消すことができません。
負担付き遺贈を利用する方法もあります。
負担付き遺贈とは、遺贈者が受遺者に対し財産を相続させることを条件にして、一定の義務を負担させる遺贈のことです。
ただし、負担付き遺贈には受遺者が負担を履行しないことや、受遺者側の負担と遺贈される財産とのバランスが必ずしも合っていない場合があるというデメリットも生じます。
負担付き遺贈の利用にも、受遺者が負担を履行しないケースでは家庭裁判所が関与するといったことも起こる可能性があるため、利用に当たっては十分な注意が必要といえるでしょう。
参考記事:https://www.souzoku-mado.jp/souzoku75
以下は、障がい者の相続に関するよくある2つの質問です。
相続放棄するためには、十分な判断能力が必要です。障がい者であるかにかかわらず、判断能力があれば相続放棄をすることができます。
知的障がい者や認知症患者といった意思能力のない方が相続放棄する場合には、成年後見制度の利用が必要です。成年後見人が相続人に代わって、相続放棄の手続きを行います。
ただし、成年後見人は、被後見人の利益を最優先するために、必ず相続放棄を行うとは限りません。
原則として相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内です。言い換えると、相続人が被相続人の死亡の事実を知った日の翌日から10カ月以内が相続税の申告期限です。
相続人の意思能力がない方は、法定代理人が相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内が相続税の申告期限になります。
本記事では、障がい者が相続人の場合の相続手続きや相続人となる障がい者に財産を遺す生前の対策などを中心に、様々な観点から解説しました。
また、相続税の税額控除についてもご紹介しました。相続税の軽減対策にも繋がるため、税制面での理解を深めていただければ幸いです。
障がいがある子の生活を守るための相続の手法として、家族信託を利用した財産管理対策についても検討されれば、良い選択に繋がる可能性が高いでしょう。
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