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家族信託は、開始から終了までが長期間にわたることも珍しくありません。そのため、委託者よりも先に受託者や受益者が死亡してしまうケースもあります。
家族信託を開始するに際しては、受託者や受益者が死亡するケースがあることも想定しておく必要があるでしょう。
この記事では、家族信託で受託者や受益者が死亡した場合の法律関係や、必要な手続きについて解説します。受託者や受益者が死亡した場合に困らないためのポイントについても解説していますので、どうぞ最後までご覧ください。
家族信託の契約中に受託者が死亡した場合でも、原則として信託契約は終了しません。そのため、新たな受託者が信託契約を引き継ぐことになります。
ここでは、新たな受託者がどのように決まるかなど、受託者が死亡した場合の法律関係について解説します。
受託者が死亡しても、原則として信託契約は終了しません。委任契約など契約内容によっては、当事者が死亡することで契約自体が終了するものもありますが、信託契約は原則として受託者が死亡しても継続します。
受託者の地位は、相続によって承継されません。受託者の相続人は、受益者に受託者が死亡したことを知らせたり、新しい受託者に信託事務の引き継ぎをしたりする義務を負うことになります(信託法第60条)。
新受託者をどのように決めるのかは、信託契約の内容によります。信託契約の内容で、新受託者が指定されている場合には、その者が新受託者となります。指定がない場合には、委託者と受益者の合意で新受託者を選任することになります。
以下では、それぞれの場合について詳しく解説します。
家族信託では、信託契約の内容として、受託者が死亡した場合に備えて新受託者(予備的受託者)を指定しておくことができます。
信託契約で新受託者が指定されている場合には、相続人は指定された新受託者に信託事務を引き継ぎます。
家族信託を開始する当初には、受託者が死亡することを想定せず、新受託者の指定をしていないことも多いですが、新受託者を指定しておくと信託事務の引き継ぎをスムーズに行うことが可能です。
信託契約で新受託者の指定がない場合や、新受託者に指定された者が拒否した場合には、新たに受託者を選任する必要があります。新受託者の選任は、委託者と受益者の合意によるのが原則です。
委託者と受益者の協議によっても合意ができない場合には、新受託者を裁判所に選任してもらうこともできます。また、受託者が死亡した時点で、委託者も死亡していた場合には、受益者が単独で新受託者を指定できます。もっともこのような事態を避けるために、契約書に事前に新受託者候補を定めておく方が望ましいでしょう。
家族信託では、信託契約の内容で信託の終了事由を定めることが可能です。信託の終了事由に「受託者の死亡」を定めた場合には、受託者の死亡によって信託契約は終了します。
また、受託者の死亡後に、新受託者が指定されない状況が1年間続くと信託契約は終了してしまいます。
新受託者が決まらずに信託契約が終了してしまうような場合は、その後の清算手続きにも苦労することが多いでしょう。家族信託を開始する際には、受託者が欠ける事態がないよう、配慮しておくことが重要です。
受託者が死亡した場合、信託事務は新受託者に引き継がれます。ここでは、信託事務を新受託者に引き継ぐのに必要な手続きについて詳しく解説します。
信託財産に不動産が含まれる場合には、登記の名義変更手続きが必要です。
家族信託の登記には、所有権移転登記と信託登記の2つがあります。新受託者が所有権移転登記手続きをすると、信託登記の受託者の欄は登記官が変更してくれます。そのため、別個で手続きを行う必要はありません。
家族信託を開始する際の、委託者から受託者への所有権移転登記は非課税となるため、登録免許税はかかりません。同様に、受託者から新受託者への所有権移転登記も登録免許税はかかりません。
所有権移転登記手続きは、不動産を管轄する法務局で行います。新受託者は、委託者と共同申請の必要はなく、単独申請での登記が可能です。
通常、受託者は、信託口座で委託者の預貯金などを管理しています。信託口座の預貯金については、自身が新受託者であることの証明書類を銀行に提出することで引き継ぐことが可能です。具体的には新受託者名義の口座への送金が必要です。
受託者が信託財産を受託者自身の口座で管理している場合には、相続にともなう解約手続きなどが必要となり、引き継ぎまでに時間がかかってしまいます。
現金や預貯金を信託財産とするときには、必ず信託口座で管理するようにしましょう。
ここからは、家族信託で受益者が死亡した場合について解説します。受託者が死亡した場合とはルールが異なりますので、受託者の場合と混同しないように読み進めてください。
受益者の生活の扶助を目的とした信託の場合、受益者が死亡した場合は信託目的を達成したことになるので、信託を終了させることが一般的です。しかし別の人の生活の扶助を目的としている場合は、受益者が死亡した場合についても、契約で定めていない限り家族信託は終了しません。この場合に、新たな受益者を決めて家族信託が続けられることは受託者が死亡した場合と同様です。
しかし、受託者が死亡した場合とでは、次の受益者を決める方法が異なります。受益者の地位は、受託者の地位と異なり相続の対象となることが両者の決定的な違いです。
家族信託においては、信託契約において、最初の受益者の次の受益者を指定しておくことができます。信託契約で、次の受益者が指定されていた場合には、それに従って次の受益者が決まります。
信託目的が不動産の管理など、特定の人の生活の扶助のみを目的としない場合で、信託契約で次の受益者の指定がない場合には、受益者の地位は相続の対象となります。受益者の地位は、受託者の地位のように信託財産の管理・運用を行うという一身専属的なものではありません。信託財産から利益を受けるという財産的価値のあるもののため、相続の対象となるのです。
遺言書がある場合には、受益者の地位は遺言書の内容に従って相続されます。
受益権の価値は、他の相続財産と同様の手法により評価されます。そのため、受益権の価値を含む相続の内容が、一部の相続人の遺留分を侵害するようなものである場合には、遺留分減殺請求の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
受益者の遺言書がない場合には、他の財産と同様に相続分に従って相続されます。この場合には、相続人の間での遺産分割協議によって、受益者の地位や他の財産の帰属を決定するのが一般的です。
遺言書がなければ、相続人間での遺産争いに発展する可能性があることは、通常の財産と変わることはありません。
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受益者の地位を新たな受益者が引き継いだ場合には、登記変更の手続きと、納税の手続きが必要です。ここでは、それぞれの手続きについての具体的な内容を解説します。
信託財産に不動産が含まれる場合には、信託登記において受益者の氏名・住所などが記載されます。そのため、受益者の死亡により受益者が交代した場合には、受益者の記載を新たな受益者に変更する手続きが必要です。
この場合、1つの不動産につき1,000円の登録免許税がかかります。新たな受益者は、受益権を取得するだけで所有権を取得するわけではないので、不動産取得税は発生しません。
登記の変更原因は、信託契約による指定で受益者となったのか、相続によって受益者となったのかによって異なります。信託契約による指定で受益者となった場合には、「死亡」が登記原因。相続によって受益者となった場合には、「相続」が登記原因となります。
受益者の死亡によって、新たに受益者の地位を取得した者は、受益権を遺贈により取得したと評価されます。そのため、この受益権についての相続税が発生します。
受益権の相続税評価は、専門的な知識がなければ難しい作業のため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
受託者や受益者が死亡した場合の法律関係や、手続きについて解説してきましたが、信託財産のスムーズな引き継ぎを行うためには、事前の準備が重要です。
ここでは、万が一、受託者や受益者が死亡した場合に備えて、家族信託開始の際に決めておくべきポイントについて解説します。
家族信託で委託者の子を受託者とする場合などは、受託者の方が先に死亡することは想定しにくいでしょう。しかし、万が一、受託者が先に死亡してしまった場合、事前の準備がなければ新受託者の選任に苦労する可能性があります。
新受託者の選定が進まずに、1年間が経過すると信託契約が終了してしまうため、新受託者の選定をスムーズに進められるようにしておくことは重要です。
信託契約では、受託者が死亡した場合の第二受託者(予備的受託者)を事前に決めて、契約の内容としておくことができます。第二受託者が決まっていれば、受託者が死亡しててしまった場合でも、受託者の地位をスムーズに引き継ぐことができます。
なお、第二受託者は、受託者になることを拒否することもできるため、第二受託者を決めるに際しては、事前の了解を得ておくことも重要です。
受益者の死亡時に信託を終了させない場合、受益者の地位は、受託者の地位と異なり相続の対象となるため、遺言書などで相続の方法を決めておかなければ相続トラブルが発生する可能性もあります。そのため、信託契約で次の受益者の指定がない場合であっても、遺言書で相続指定をしておくことは重要です。
ただし、家族信託を利用する場合には、信託契約の内容として次の受益者を指定しておくことも多いです。家族信託で次の受益者を指定しておくものを「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と言います。「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」を利用することで、遺言では不可能な孫の代までの相続指定が可能となるのは家族信託の大きな特徴の1つです。
通常、遺言による相続では、先祖代々の土地などであっても、子への引き継ぎができるのみで、その先の代までを指定して遺産を引き継がせることはできません。
しかし、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」を利用すると、子から孫、孫からまた次の代へと、受益者の地位を指定して引き継がせることが可能です。
先祖代々の不動産を守り続けたいなどの事情がある場合には、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」の利用は有効な手段と言えます。
ここでは、家族信託の受託者や受益者が死亡した場合について、具体的な質問に回答していきます。
新受託者に引き継ぐ手続きが必要となります。
信託財産が新受託者に引き継がれるまでの間に、信託財産を保管するのは受託者の相続人です。相続人は、新受託者が決まり次第、信託財産を引き継ぐことができます。
受託者が死亡した場合には、事前に新受託者を決めて、速やかに信託財産を引き継げるようにすることが重要です。
受託者または受益者の死亡で家族信託を終了させるには、信託契約の終了事由として「受託者または受益者の死亡」と定めておく必要があります。
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家族信託では、委託者・受託者・受益者の間で長期的な関係が形成されます。そのため、信託期間中に当事者が死亡することは珍しいことではありません。
受託者や受益者などの当事者が死亡した場合に慌てないためには、信託契約締結時の事前の準備が重要です。
受託者や受益者が死亡した場合の対応も含めて、家族信託を有効に活用するためには、専門家にアドバイスを受けるのが有効です。ファミトラでは低価格で家族信託を組成するためのコンサルティングを提供しています。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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