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「家族信託」の利用を考えているが、手続きがよくわからないという方も多いでしょう。
この記事では、「家族信託」を始める前に考えるべきこと、家族信託の手続きの流れや費用、家族信託のメリット・デメリットなど、家族信託について様々な観点から解説します。今後、家族信託の利用を考えている方は、本記事をぜひご活用ください。
以下ではまず、家族信託を始める前に考えておかなければならないことを7つ説明します。なお、「家族信託」とは何かについては以下のリンクをご参照ください。
家族信託の利用を考えている方は、何かしらの目的があるはずです。まずはその目的をはっきりさせておくことが必要です。
例えば、親が認知症になった場合には財産が凍結されるリスクがあると聞いて、財産が処分できなくなることを心配しているとしましょう。
その場合、「親の認知症に備えて財産が凍結されても処分ができるようにする」ことが家族信託の目的となります。
このように、まずは家族信託の目的をはっきりさせておくことが重要です。
家族信託の目的をはっきりさせた後は、誰が委託者の財産の受託者・受益者になるのかを考えます。
「委託者」とは、自己が所有する財産の管理・運用を託す人です。
「受託者」とは、財産の管理・運用を任される人で、例えば家族や信託会社などです。
「受益者」とは、財産の運用により生じた金銭などの利益を受け取る人で、信託財産によって生じた当該金銭などの利益を受け取ることができる権利を有します。この権利は「信託受益権」と呼ばれています。
なお、家族信託においては「委託者」=「受益者」であることが多いです。
誰が受託者・受益者になるのかを決めたら、次は信託する財産が何かを考えます。
委託者は、受託者に財産の運用・管理を委託します。この財産を「信託財産」といいます。信託財産の種類に制限はありません。
信託財産とは、例えば委託者の土地、建物、お金、有価証券といった金銭的価値のあるものを指します。
信託財産以外の財産を受託者は管理・運用することができません。よって、信託財産を明確に定めておくことが必要なのです。
信託する財産が決まった後は、家族信託終了後に信託財産をどうするかについて決めておくことも重要です。なぜなら、信託財産の帰属を決めておかないと、家族・親族間で揉める原因となりかねないからです。
家族信託を利用する前に、家族信託終了後の信託財産の帰属について、家族間でよく話し合っておくようにしましょう。
家族信託については、信託期間を自由に定めることが可能です。例えば以下のように期間を定めることが考えられます。
信託期間を明確にしておかないと、受託者が信託財産をいつまで管理・運用しなければいけないのかや、受益者がいつまで利益を受け取ることができるのかが不明確になります。
家族信託においては、通常、受益者が受託者を監督します。しかし、受益者によって監督ができない状況だったり、自分の他に信頼のおける監督者を選びたいといった場合、信託監督人を選任することができます。
信託監督人の選任は必須ではありません。選任を検討している場合は利用前によく考えておきましょう。
家族信託と似た制度として、「成年後見制度」があります。どちらも認知症などの病気により判断能力が衰えた人の財産の管理・運用を他人に任せる点で共通します。
家族信託と成年後見の相違点や、メリット・デメリットに関して把握できていない方も多いでしょう。
そこで家族信託を利用する前に、成年後見制度との相違点や、メリット・デメリットについて把握しておくべきです。
なお、家族信託と成年後見制度の相違点については、以下のリンクをご参照ください。
以下では、家族信託の手続きとその流れについて、自分で行う場合と専門家に依頼する場合に分けて説明します。
家族信託を自分で行う場合の手続きの流れについて、3つの手続きに分けて説明します。
家族信託を利用するにあたってまず始めにすべきことは、家族信託契約書を作成することです。
家族信託を利用する前に考えるべきことを7つ説明しましたが、そこで合意した内容をまとめます。そして、合意した内容に基づいて契約書を作成していきます。
遺言書と異なり、要式があるわけではありません。しかし、後々争いにならないように、契約書の文言はできる限り具体的にしておくほうが望ましいでしょう。
信託契約書については、その内容を公正証書にしておくのが一般的です。公正証書は、公証役場に行って公証人に作成してもらいます。公正証書にしておくことにより、後々の争いを防ぐことができます。
家族信託契約書を作成した後は、受託者個人の口座とは別に信託財産の管理・運用に用いる口座を開設します。信託財産が金銭の場合、この信託口座で管理・運用を行います。委託者や受託者の財産と区別ができなくなってしまわないように、信託専用の口座(信託口口座)を作成する必要があるのです。
信託口口座の開設の際、信託契約書の提示を求められる場合がありますので、用意しておきましょう。
信託口口座を作成したら、次は信託財産の名義変更を行います。
「信託」とは、自己の財産の管理・運用を信頼のおける人に託す制度のことをいいます。つまり、自己の財産を委託者の名義から受託者の名義へ変更する必要があるのです。
土地や建物の場合、登記を受託者へ移転する所有権移転登記と、信託財産であることを明示するための信託登記を行う必要があります。
不動産の場合は、移転登記と信託登記が必要です。現預金や金融商品の場合は、信託口口座で財産を管理・運用します。具体的には、現預金の場合、先に開設した信託口口座に移す必要があります。株や債券などの金融商品の場合は、証券会社に信託口口座を開設する必要があります。
家族信託は自分で行うことができますが、上記のとおり、3つの手続きが必要です。
契約書の作成や登記など専門的な知識が必要であり、自分で行うには手間と時間がかかるでしょう。また、自分で行うと、契約書に不備があった場合に後々トラブルになりかねません。
スムーズに契約を進めたい場合や、契約書の不備によって後々のトラブルを避けたい場合、弁護士や司法書士などの専門家に依頼したほうが安心です。
以下では、家族信託の手続きを自分で行う場合と、専門家に依頼する場合に分けて、それぞれにおいてかかる費用を説明します。
家族信託の手続きを全て自分で行う場合、以下の費用がかかります。
項目 | 説明 | 費用 | |
---|---|---|---|
① | 戸籍謄本(又は抄本) | 委託者のみならず、受託者、受益者を含めた当事者全員のものが必要です。 | 450円 |
② | 印鑑証明書 | 実印を証明するために必要です。 | 450円※1 |
③ | 公正証書作成費用 | 信託契約書の内容を公正証書にする際に必要です。 | 3~10万円※2 |
④ | 登記事項証明書 | 信託財産が不動産の場合に必要です。 | 600円※1 |
⑤ | 固定資産税評価証明書 | 信託財産が不動産の場合に必要です。 | 300円 |
⑥ | 登録免許税 | 信託財産が不動産の場合に、移転登記と信託登記をする場合に必要です。 | 固定資産税評価額の0.4%(建物)又は0.3%(土地)。 |
⑦ | 信託用の口座開設費用 | 信託用の口座を開設する場合に必要です。 | 金融機関によって異なります。 |
※1 オンラインの場合、割引があります。
※2 信託財産により異なります。
家族信託の手続きを専門家に依頼する場合、上記の費用に加えて専門家に支払う報酬が必要です。弁護士や司法書士に依頼する場合、手続きに応じて以下の報酬がかかります。
項目 | 説明 | 報酬 | |
---|---|---|---|
① | 着手金 | 家族信託の手続きを依頼する場合、着手するために必要となります。 | 50~100万円 |
② | 公正証書作成費用 | 公証人に支払う費用の他、弁護士や司法書士に支払う報酬です。 | 10万円前後 |
③ | 登記費用 | 信託財産が不動産の場合、移転登記を代理してもらうために必要です。 | 10万円前後 |
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以下では、家族信託の手続きを自分で行う場合のメリット2つを説明します。
家族信託の手続きを全て自分で行えば、当然ですが専門家の報酬は発生しません。よって、専門家の報酬の分だけ費用を抑えられます。
一般的に弁護士や司法書士に支払う報酬は、財産の額が高ければ高いほど高額になります。価値の高い財産を信託財産にしようと考えている方にとって、専門家の費用を全てカットできるのは大きなメリットです。
家族信託の手続きを専門家に依頼する場合、家族や資産の状況などを包み隠さず話す必要があります。そうしないと、専門家は正しい判断ができないおそれがあるからです。
家族内で問題を抱えていたり、資産の状況をあまり話したくない方にとっては、専門家に話すことを躊躇するかもしれません。
一方、家族信託の手続きを全て自分で行えば、専門家にプライベートな部分を知られずに済みます。これも大きなメリットといえるでしょう。
家族信託の手続きを自分で行う場合のデメリットは主に以下の2つです。
家族信託の手続きを専門家に依頼してしまえば、信託契約書の作成や移転登記などは全て専門家が行ってくれます。
これらを自分で行うと、手間と時間がかかります。専門家と違って法律の専門家ではありませんから、倍以上の時間がかかることも少なくありません。
契約書の作成は専門知識が必要ですから、間違った内容の契約書を作成してしまうリスクもあります。また、家族信託の制度設計を十分に検討しないまま家族信託契約書を作成してしまう可能性もあるでしょう。
そうすると、後々家族間で争いになったりする可能性があります。その結果、専門家に相談せざるを得なくなり、逆に費用が高くついてしまうリスクもあります。
以上のようなデメリットを十分に理解した上で、自分で行ったほうがメリットがあるか検討するようにしましょう。
では、家族信託の手続きを専門家に依頼する場合、どこに依頼するのがおすすめでしょうか。以下では、3つの専門家を紹介します。
家族信託の手続きをスムーズに進めたいのであれば、弁護士や司法書士などの法律の専門家に依頼しましょう。弁護士や司法書士に依頼するメリットは主に以下の3つです。
弁護士や司法書士に手続きを依頼すれば、契約書作成や登記手続きでミスをすることはほぼなくなり安心です。
弁護士や司法書士に依頼すれば、家族信託の手続き以外の法的な問題にも対応してくれます。後々、トラブルが起きた場合も安心でしょう。
弁護士や司法書士は、税理士や社労士などの他の士業とのネットワークを豊富に有している場合が多いです。
相続の相談が生じた場合は弁護士や司法書士を通じて税理士を紹介してもらうなど、ネットワークを活用することができます。
ただし、全ての弁護士や司法書士が家族信託の手続きに慣れているわけではありません。弁護士や司法書士に依頼する場合、事務所のホームページをチェックし、家族信託に強いかどうかを確認するようにしましょう。
家族信託の手続きを進める際に避けて通れないのが、相続税などの税金と、土地や建物などの不動産の取り扱いです。
税金に関しては、税の専門家である税理士に相談するのが良いでしょう。ただし、弁護士や司法書士と同様、全ての税理士が家族信託に関する税金に慣れているわけではありません。税理士に依頼する場合、事務所のホームページをチェックして得意分野を確認するようにしましょう。
信託財産に不動産が含まれる場合、不動産を売却したり、賃貸して運用する必要が生じます。そういった場合に、うまく売却先や賃借人を見つけられなかったりすることが多いです。不動産会社であれば、売却や賃貸の媒介を行っていますし、豊富なネットワークを有しています。不動産の管理・運用に困った場合には、不動産会社を活用してみましょう。
弁護士や司法書士、税理士といった専門家は、法律、登記、税に詳しいので頼りになることは間違いありません。しかし、家族信託の手続き全般に詳しいわけではありません。
家族信託の手続き全般について相談したいのであれば、「家族信託コーディネーター」に依頼する手段があります。
「家族信託コーディネーター」とは、依頼者の状況をヒアリングし、行うべきことを整理したり、適切な専門家へ手続きを依頼したりする者のことをいいます。
家族信託コーディネーターは専門家への橋渡しを行う者で、家族信託全体の状況を見てその時々に応じた適切なサポートを提供してくれます。
家族信託の手続き全般について伴走してくれるサポーターが欲しいのであれば、家族信託コーディネーターに依頼することをおすすめします。
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以下では、家族信託の手続きに関するよくある質問3つについて回答します。
先ほども説明したとおり、家族信託にはメリットもあればデメリットもあります。そのデメリットがそのまま注意すべきことであるといえるでしょう。具体的には以下のとおりです。
家族信託は、委託者、受託者、受益者すべてが家族や親族であることがほとんどです。そうすると、信託財産の管理方法や受益の額などについて家族間で争いになる可能性があります。
後々、家族間で争いにならないように、家族信託を利用する前に家族間で十分話し合っておきましょう。
家族信託を全て自分で行えば専門家に支払う報酬がかからないため、一見すると費用がお得に見えます。
しかし、慣れない家族信託の手続きを自分で考えながら行わなければならず、手間と時間がかかります。
手間と時間を考えると、専門家に依頼したほうが安くつくかもしれません。見かけの費用にまどわされず、家族信託の手続き全体にかかる手間と時間を考えて自分で行うかを検討するようにしましょう。
重い認知症になってしまった場合、判断能力が著しく低下し、場合によっては意思無能力となってしまいます。
そうなると、家族信託契約を締結することができなくなります。その場合、残念ながら家族信託の利用は不可となります。
銀行などが扱う「家族信託」は、銀行が営利目的で行う商品ですから、通常は商事信託に該当します。詳しくは以下をご参照ください。
一方、自分で手続きを行う家族信託は、通常は営利を目的としない信託ですから、民事信託に該当します。
つまり、銀行などが扱う「家族信託」は、金融商品の一種です。例えば、委託者の金銭を信託銀行に預けておき、一定の条件(例:委託者が亡くなったとき)が来たら払い戻しを受けられるような商品があります。
以下は、銀行などが扱う「家族信託」と名の付く商品と、自分で手続きを行う家族信託との主な違いをまとめた表です。
銀行などが扱う「家族信託」と名の付く商品 | 自分で手続きを行う家族信託 | |
---|---|---|
信託できる財産 | 金銭のみ | 制限なし |
財産の最低額 | 少なくとも100万円以上 | 特になし |
家族信託の内容 | 銀行の商品の内容の範囲に限定される | 自分で決めることができる |
費用 | 銀行に支払う手数料や報酬 | 実費のみ ※専門家に依頼する場合には別途報酬がかかる |
家族信託を自分で行えば、専門家に支払う報酬がなくなりますし、家族内のプライベートな話をする必要はありません。
しかしながら家族信託を自分で行うことには、デメリットも存在します。家族信託を自分で行ったほうが良いかどうかは、状況を総合的に判断する必要があります。
家族信託の手続きについて相談したい場合、家族信託に関するサービスを提供している会社に相談することをおすすめします。ファミトラでは、家族信託についての無料相談をお受けしています。家族信託についてのお悩みは、いつでもお気軽にご相談ください。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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