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家族信託は、認知症などによって本人の判断能力が低下した場合に、財産の管理・運用を他の者に委託する制度です。成年後見制度とともに、認知症対策として注目されています。
家族信託によって信託が可能な財産に制限は無く、株式などの金融商品も信託財産にすることができます。しかし、株式は証券会社を選ぶ際に注意が必要だったり、いくつかの注意点があります。
そこで、今回の記事では家族信託を利用して株式を信託するメリットを説明した上で、株式を信託する際の注意点を紹介します。
家族信託で株式を信託することを考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
家族信託では、財産的価値があるものであれば、信託財産とすることができます。信託財産とすることが不可であるものは、財産的価値に置き換えられないものや一身専属権などです。一身専属権の一例としては、年金受給権などがあります。
株式は信託財産とすることが難しいといわれていますが、法律で信託財産とすることが禁止されているわけではありません。株式を信託財産とすること自体は可能です。
以下では、上場株式と非上場株式に分けて信託の方法を説明します。
上場株式の場合、証券会社が家族信託に対応していれば可能です。
もっとも、全ての証券会社が家族信託に対応しているわけではないため、信託財産に含めることが困難な場合があります。
非上場株式の場合、上場株式の売買を行う証券会社に口座を開設する必要はないため、問題なく信託財産に含めることができます。
ただし、非上場の株式会社は閉鎖的な会社である場合が多いため、議決権の行使などの点において注意する必要があります。
以下では、家族信託で株式を信託するメリットを4つ解説します。
認知症により本人の判断能力が低下すると、詐欺などの犯罪に巻き込まれやすくなります。近年では特殊詐欺の被害が増加してきており、銀行や証券会社などの金融機関は特殊詐欺被害への対策を強化しています。
認知症になったことが金融機関に発覚すると、特殊詐欺の被害から本人を守るために口座を凍結してしまう可能性があります。
家族信託を利用して株式を信託すると、本人の財産から独立した財産として扱われることになります。
そのため、家族信託で株式を信託することにより、本人の証券口座が凍結されても株式を引き続き運用・管理することが可能なのです。
家族信託とは、自分の財産を所有する委託者が、受託者と呼ばれる信頼できる人に託し、財産を管理・運用・処分してもらう方法です。
委託者が受託者に委託した財産は信託財産と呼ばれ、委託者自身の財産とは別に管理されます。
信託財産は受託者が管理・運用・処分することができるようになります。株式を信託財産とした場合、受託者が株式を運用・換価できるようになるのです。
本人の判断能力が低下してしまうと株式を運用することは非常に難しくなりますが、受託者に株式を託すことによって安定した運用が可能となるのです。
家族信託は、遺言と同様の効果を得ることができます。例えば、家族信託契約の中で信託財産の承継先を指定しておけば、遺言と同様にその人に財産を承継させることができます。
また、承継先は一代だけでなく、二代、三代と指定することが可能です。家族信託を利用することにより、相続時に財産の帰属について親族間でトラブルになることを防ぐことができます。
上記で説明したとおり、家族信託は信託財産の承継先を指定することができます。株式を信託財産にすれば、株式の承継先を指定することも可能です。
例えば、本人が経営している会社を長男に継がせたいと考えた場合、株式の承継先を長男に指定することによって、長男が全株式を取得することが可能です。これにより、長男が会社の株主となり、経営権を得ることができます。
このように、家族信託を利用することにより、事業継承対策を行うことができるのです。
以下では、家族信託で上場株式を信託する際の注意点を5つ解説します。
家族信託は平成18年の信託法改正により、平成19年に施行された制度です。比較的新しい制度のため、全ての証券会社が家族信託に対応しているわけではありません。
もっとも、制度開始から15年以上が経過しており、対応する証券会社は増加しています。大手証券会社であれば家族信託に対応している証券会社は多いため、それほど心配する必要はないでしょう。
家族信託できる株式に制限はありませんが、投資信託など有価証券品の種類によっては証券会社が対応していないケースがあります。信託の対象にしようとしている有価証券が家族信託に対応していない場合は、家族信託を利用することができません。
株式を含めた有価証券を信託財産の対象としたい場合、当該有価証券の種類が証券会社において家族信託の対象となっているかどうか、事前に確認しておきましょう。
家族信託は、受託者が信託財産の管理・運用を行います。株式を信託財産にすると、株式の名義は委託者から受託者になるため、保有期間がリセットされるのです。
そうすると、保有期間によって株主優待を受け取ることができるような場合に、株主優待を受け取ることができないといったデメリットが発生します。
株式を信託財産とする場合、受託者は、信託財産の株式と自己の株式とを分けて管理する義務があります。
株式の場合、証券会社に信託口口座という口座を開設して運用・管理することが一般的です。
証券会社によっては、信託口口座の開設の要件に、受託者の個人口座の開設を必須としている場合もあるため、注意が必要です。
家族信託においては、証券会社への信託口口座の開設により信託財産を管理するのが一般的です。
しかし、信託口口座については、証券会社によっては特定口座やNISA口座の利用ができない可能性があります。
そうすると、一般口座の開設しかできない場合があるので注意が必要です。
一般口座の開設しかできないと、特定口座やNISA口座の恩恵を受けることができなくなります。例えば、自ら確定申告をしなければならなくなるというデメリットがあります。
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以下では、家族信託で上場株式を信託する方法と手順について、3つに分けて詳しく解説します。
上場株式を家族信託の信託財産として運用・管理したい場合、まずは証券会社に相談しましょう。先ほども説明した通り、株式の種類や内容によっては、証券会社では取り扱いがない場合があります。
信託口口座が開設できるかどうか、事前に確認することが必要です。
委託者の株式が信託財産として取り扱える証券会社であることが確認できたら、次は家族信託契約の締結に進みます。
家族信託契約書の中で株式を信託財産の対象とすることを記載しましょう。
家族信託契約書については、その内容を公正証書にしておくのが一般的です。公正証書は、公証役場に行って公証人に作成してもらいます。公正証書にしておくことにより、後々の争いを防ぐことができます。
家族信託契約書を作成した後は、受託者の個人口座とは別個に信託財産の管理・運用に用いる信託口口座を開設します。
なお、証券会社で信託口口座を開設するためには、公正証書で作成された家族信託契約書が必要とされることが一般的です。
そのため、株式を信託財産の対象としたい場合は、必ず公正証書で家族信託契約書を作成するようにしましょう。
以下では、家族信託によって上場株式を信託財産とする場合における証券会社の選び方について、2つの観点から解説します。
家族信託で株式を信託するためには、証券会社がその株式を信託財産として扱うことができることが必要です。
つまり、信託口口座を開設できる証券会社を選ぶ必要があります。
株式を信託財産とするための前提ですので、必ず事前に証券会社に確認するようにしましょう。
委託者の株式を信託財産として取り扱うことができる証券会社であることがわかったら、手数料やサービス内容を比較しましょう。
証券会社によって手数料やサービス内容は異なってきます。一般的にはネット証券のほうが手数料が安い傾向にあります。一方、扱うことができるサービス内容は大手証券会社のほうが多い傾向にあります。
自身が納得のいく手数料かどうか、家族信託の目的が達成できるサービス内容かどうかを比較するようにしましょう。
以下では、株式を信託財産にする場合の家族信託契約の記載ポイントについて、4つに分けて解説していきます。
家族信託契約を締結する場合、誰を受託者にするのかを考えます。
証券会社によっては、家族信託における受託者を二親等内までの親族に限定している場合もあるため、注意が必要です。
また、株式は他の金融財産と異なり投資商品としての側面が強いため、運用・管理に適した受託者を選ぶ必要があります。
受託者の権限として、どのような株式の運用を認めるのかを家族信託契約の中で明記しておく必要があるでしょう。
株式を家族信託の対象とする場合、議決権を行使する者を誰に設定するかも重要です。特に非上場株式の場合には、議決権の行使が会社の経営に大きく関わってくることが多いため、注意する必要があります。
一番簡単な方法は、議決権を行使する権限をそのまま受託者にすることです。
一方、議決権を行使する権限を受託者ではない者に与えることも可能です。こうすることにより、委託者の経営能力が衰えていない間は委託者が議決権を行使して経営をし、委託者の経営能力が衰えてきたら別の者が議決権を行使するような会社設計が可能です。
「他益信託」とは、信託財産から生じる利益を受け取る受益者と呼ばれる人が、委託者と異なる信託の場合を指します。一方、「自益信託」とは、委託者と受益者が同一である信託の場合を指します。
他益信託の場合、委託者と受益者が異なるため、株式の配当などの利益が受益者に移転した場合、贈与税がかかります。
一方、自益信託の場合、株式から生じた利益を得るのは委託者兼受益者であり、利益の移転はありません。よって、自益信託の場合贈与税はかかりません。
このことを踏まえて、信託契約において他益信託か自益信託かを選択する必要があります。
「遺留分」とは、相続人に法律上確保された最低限度の財産のことをいいます。相続人の生活のため、法律で最低限度の財産を確保するよう定められています。
遺留分を侵害することが禁止されているわけではありませんが、特定の相続人の遺留分を侵害するような相続方法を指定した場合、その相続人から遺留分侵害額請求がなされる可能性が高いです。
家族信託における信託財産から生じる利益を受け取る権利である、受益権も相続の対象になります。特定の家族にだけ受益権を与えると他の家族から遺留分侵害額請求がされる可能性があるので注意が必要です。
遺留分侵害額請求がされないようにするためには、家族信託契約書を作成する際に家族間でよく話し合っておくことが必要でしょう。
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家族信託には、相続税や贈与税の他、所得税、登録免許税、不動産取得税など様々な税金が関与してきます。
家族信託によって株式を信託財産にしたとしても、相続税や贈与税の節税効果はありません。
委託者と受益者が同一である自益信託では、受益権は移転していません。受益権が移転していないということは贈与税はかかりませんから、節税になるとも思われます。
しかし、委託者が亡くなった場合、受益権は相続財産となるため、相続税の課税対象になります。
よって、家族信託による直接の節税効果はありません。
もっとも、家族信託を行うことによって、受託者が信託財産の管理・運用を行うことができるため、受託者が節税対策を考えることは可能です。
自社株を家族信託にした場合、受託者が自社株についての議決権を行使する権限を有します。自社株を家族信託にするということは、会社の経営権が委託者から受託者へ移ることを意味します。
そうなると、経営権が移転するわけですから、当然事業の経営に影響が出てきます。
事業の経営に影響が出ないよう、委託者の意向に沿った経営を行ってくれる者を受託者にする必要があるでしょう。
株式を家族信託の信託財産にする場合、取り扱いができる証券会社かどうか、議決権の行使をどうするかなど、他の財産と比較して注意すべき点が多くあります。
そのため、家族信託契約の内容を慎重に確認して作成する必要があるでしょう。
株式を家族信託の対象とすることについて相談したい場合、家族信託に関するサービスを提供している会社に相談することをおすすめします。ファミトラでは、家族信託についての無料相談をお受けしています。家族信託についてのお悩みは、いつでもお気軽にご相談ください。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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