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信託銀行は「投資を扱う銀行」だと考えている方も多いでしょう。
しかし、信託銀行の業務は実に幅広く、奨学金や遺言など我々に身近な商品も取り扱っています。
この記事では、信託銀行の取り扱い業務や利用に関するメリット・デメリットを解説しています。ぜひ、最後までお読みください。
田中 総
(たなか そう)
司法書士
2010年、東証一部上場の不動産会社に新卒で入社し、10年以上に渡り法人営業・財務・経営企画・アセットマネジメント等の様々な業務に従事。
法人営業では遊休不動産の有効活用提案業務を担当。
経営企画では、新規事業の推進担当として、法人の立ち上げ、株主間調整、黒字化フォローの他、パートナー企業に出向して関係構築などの業務も経験。
司法書士資格を取得する中で家族信託の将来性を感じ、2021年6月ファミトラに入社。
田中 総
司法書士資格保有/家族信託コーディネーター/宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター
東証一部上場のヒューリック株式会社 入社オフィスビルの開発、財務、法人営業、アセットマネジメント、新規事業推進、経営企画に従事。2021年、株式会社ファミトラ入社。面談実績50件以上。首都圏だけでなく全国のお客様の面談を対応。
信託銀行とは、銀行法で認められた通常の銀行業務の他に、資産の運用を行う「信託業務」や不動産運用や相続を扱う「併営業務」を営める金融機関です。
信託銀行が行う信託とは、他人の資産を預かって、運用・管理することです。
信託銀行と普通の銀行との最大の違いは、信託銀行は「信託業務」や「併営業務」が営めることです。
普通の銀行は、通常の銀行業務のみで「信託業務」や「併営業務」を営むことができません。
信託会社とは、信託業法により許可を受けて信託業務を営む会社です。
信託会社の主な業務は以下の3つです。
信託業務を営む点では、信託銀行と同様です。
しかし、信託会社は信託業務を主業務とし、その信託業務を適正かつ確実に営むことにつき支障を及ぼすおそれのない業務で、信託業務に関連する者を営むことができます。
この信託業務以外の業務を「兼業業務」といいます。
信託銀行が行なっている主な業務は以下の3つです。
信託銀行には、通常の銀行と同様にお金を預かる「預金」、お金を貸す「貸付」、現金を使わずにお金のやり取りをする「為替」といった、いわゆる三大銀行業務があります。
以下詳しく解説します。
預金業務とは、個人や会社から預かったお金を管理する業務です。
銀行では預かったお金を運用や個人や会社への融資に当て、その運用利益で預金者に利息を支払います。
貸付業務とは、お金を必要としている個人や会社から預かったお金を個人や会社へ貸し付ける業務です。
例えば、住宅ローンや設備投資のための融資が貸付業務です。
銀行は貸し付けた個人や会社から利息をもらい、その利息を預金者へ支払います。
為替業務とは、お金のやり取りを現金を使わずに口座間の資金移動により行う業務です。
具体的には、給料の受け取りや、公共料金の支払いなどが為替業務になります。
信託業務とは、個人や会社の財産の所有権を金融機関に移転させて、金融機関がそれを管理運用する業務です。
財産を預ける側を「委託者」、委託される側を「受託者」、そして管理・運用された財産から利益を受ける人を「受益者」といいます。
委託者が委託する財産を「信託財産」といい、お金だけではなく、金銭的な価値があるものであれば信託が可能です。
例えば、不動産、有価証券、金銭債権などがあります。
預金の管理運用との違いは、所有権が受託者である金融機関に移転することです。
所有権が移転するといっても、受託者は受託した財産を勝手に管理・運用して良いわけではなく、受託者は信託目的に従って受益者のために財産を管理・運用しなければなりません。
信託の商品は金融機関により様々で、投資信託や遺言信託だけではなく、認知症対策としての家族信託などがあります。
併営業務とは、信託業務に付随する業務のことです。
具体的には、遺言書の管理などを行う相続関連業務、不動産の仲介や査定を行う不動産関連業務、株主名簿の管理などを行う証券代行業務などを指します。
併営業務は、銀行法や兼営法により、免許を取得した信託銀行にのみ許される業務です。
取り扱う業務は信託銀行ごとに異なっています。
信託銀行が提供する商品やサービスは各行によって、異なっていますが主な業務は次のものです。
それぞれ詳しく解説します。
一般の方には、最もなじみ深い信託銀行の商品はこれでしょう。
投資信託は、投資家から集めたお金を、専門家が株式や債券などに投資をして運用する商品です。
その投資の結果、生じた利益を投資家に分配します。
集めたお金をどの株や債券に投資するかは、投資信託商品ごとに専門家が決定します。
その結果、運用がうまくいき利益が出れば、投資家はリターンを受けます。うまくいかずに元本割れをすれば、投資家は損失を受けます。
金銭信託とは、信託銀行などがお客様にかわりお金を運用する金融商品です。
お金を信託銀行に預けて、信託銀行はそのお金を一定の方針のもとに運用します。
お客様は、信託銀行の運用がうまくいけばリターンを、うまくいかなければ損失を受けるのは、投資信託と同様です。
金銭信託と投資信託の違いは、金銭信託がお金を預かった銀行が管理・運用する点で、投資信託はお金の管理のみで運用は専門家が行う商品です。
教育資金贈与信託とは、両親や祖父母などが、子どもや孫の教育資金として、お金を信託銀行に特別に設けた口座に預けます。その後、子どもや孫や教育費に充てるために払い出しを受けられる商品です。
通常の贈与だと、年間110万円を超えると贈与税がかかりますが、教育資金贈与信託では、条件を満たせば、最大1,500万円まで非課税となります。
当初は2023年3月31日までが期限でしたが、税制改正により2026年3月31日までに延長されました。
公益信託とは、個人や会社が財産を、学術、技芸、慈善、祭祀等の公益的な活動を支援するため、信託銀行などにお金を預けます。信託銀行などは、定められた目的のために預かったお金を運用・管理する商品です。
公益法人と似ていますが、公益信託では信託銀行等が運営・管理するので小規模でも効率的な活動ができます。
おなじみの奨学金も公益信託の1つです。
後見制度支援信託とは、成年後見制度の後見を受ける方の財産の生活に必要な分だけを成年後見人が管理し、残りを信託銀行などに預け管理・運用を任せる商品です。
後見制度支援信託には、緊急でお金が必要になったとき、家庭裁判所の指示書が必要になるので、即座の対応が難しいことがあります。
また、後見制度支援信託を扱う信託銀行が少ない点もデメリットです。
遺言信託とは、信託銀行が遺言の作成のサポートから、遺言書の保管、さらに遺言の執行まで相続に関する手続きを行うことです。
遺言信託のメリットには以下のものがあります。
遺言信託のデメリットは以下のとおりです。
財産形成信託とは、会社が従業員のために、毎月給料から一定の金額を信託銀行などに積み立てるものです。
老後の生活資金を積み立てていく「財形年金信託」、住宅の購入のために積み立てていく「財形住宅信託」、特に使い道に制限のない「一般財形」の3種類があります。
財形形成信託のメリットは、貯蓄額を予め給料から天引きするため、貯蓄する習慣のない人でも、強制的に貯蓄できることです。
ただし、勤務先の企業が財産形成信託を導入していなければ、制度を利用できないことに注意してください。
信託業法上、一定の免許を受けた信託銀行は、みなし宅地建物取引業者といわれ、宅地建物取引業免許がなくても宅地建物取引業務を行えます。
信託銀行の不動産業務には以下のものがあります。
このように、通常の不動産業者と同様の業務を行います。
信託銀行などが、株式会社から委託を受け、株主名簿の作成・管理、株式の名義書き換え、株券の発行、配当金の支払いなどを行うことです。
また、株主総会の日程の決定や、株主招集通知の発送など株主総会に関するサポート業務も行います。
これらの事務的な業務だけではなく、株式に関する専門家としてのアドバイスなどコンサルティング業務も行います。
企業年金とは、会社が従業員の退職後の生活を保証するために企業が利用する私的年金制度です。
信託銀行などでは、企業年金の資産の管理・運用や企業年金の支払いなど、企業年金に関する業務を行います。
企業年金を利用するかどうかは、企業により異なります。
企業年金は企業が利用するものであり、個人では利用できない制度であることに注意してください。
信託銀行などの重要な業務に資産運用があります。
信託とは、委託者から預かったお金を資本に、株式や債権に投資をしその利益を受益者に配当することです。
どの株式や債券に投資をするのかは専門家が、市場の動向を分析しながら対象銘柄を選定し、タイミングを見て預かったお金を運用します。
資産管理とは、投資にかかる手続きをひとつひとつ成立させていく業務です。
取引内容の照合、決済、お客様の残高管理などが主な管理業務です。
現在、金融商品は多様化し仕組みも複雑化しています。
資産運用の方法も複雑化し、それに伴い資産管理も高度化しているため、資産運用と資産管理は分離する傾向にあります。
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信託銀行を利用するメリットは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
現在では、投資運用は多様化・複雑化し、初心者ではどのように運用して良いか判断が難しくなっています。
どの投資にもそれぞれメリット・デメリットやタイミングがあり、初心者では適切な判断は難しいでしょう。
信託銀行を利用すれば、投資家はお金を信託するだけで運用は、投資の専門家が行ってくれます。
専門家は高度な金融知識を持っているので、資産運用の初心者よりも適切な判断が可能です。自ら運用するよりも、投資に成功する可能性が高いでしょう。
遺言や相続といえば、弁護士や司法書士などの法律の専門家を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、信託銀行の遺言信託も相続のトラブル回避に有効です。
遺言信託を利用すると、遺言内容の相談から遺言作成、遺言執行までワンストップで行ってもらえます。
遺言を作成しその執行を第三者である信託銀行が行うことで、相続人だけではトラブルになるところを回避することができます。
また、なんといっても信託銀行は資産運用が専門です。
被相続人の相続財産の運用のアドバイスをもらえるのは、士業などにはない金融機関ならではのメリットといえます。
金銭や不動産を信託すると、信託受益権という信託から生じる利益を受け取る権利に変わります。
特に不動産は信託受益権になることで、管理・運用が容易になるというメリットがあります。
また、不動産を譲渡する場合、不動産取得税がかかります。しかし、信託受益権は金融商品なので、不動産取得税はかからないなどのメリットもあります。
資産運用において、さまざまなメリットがある信託銀行の利用ですが、もちろんデメリットもあります。
主なデメリットは以下の2つです。
家族信託は信託銀行の主要業務の1つです。
信託銀行の家族信託を利用するメリットは、相続が発生した場合に、すぐにお金を引き出せることです。
通常、人が亡くなるとその人の口座は凍結されて、お金がおろせません。
しかし、家族信託で信託銀行を利用すると、相続発生後すぐにお金が引き出すことが可能です。
信託銀行の家族信託を利用するデメリットは、金銭以外取り扱えないことです。
信託銀行は資産の管理・運用を行うので、ある程度まとまった資産を持っている方が主な利用者となります。
例えば、投資家や会社経営者などが利用します。
しかし、信託銀行は業務の幅が広くなっているため、利用者層は様々です。
サラリーマンが退職金を信託銀行に預けて管理と運用を任せることもありますし、家族信託を利用したい親子が利用することもあります。
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信託銀行の業務と利用する際のメリットについて解説しました。
信託銀行は、一般の銀行と異なり、家族信託、遺言信託まで行っています。
しかし、信託銀行は一般の銀行よりも数が少なく、利用が難しいこともあります。
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