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資産凍結は名義人の死亡や認知症の罹患など、様々な要因で起こります。
資産凍結されてしまうと、どのようになってしまうのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では資産凍結された後の状況について解説します。
資産凍結されてしまった際の対処法や、資産凍結をされる前にできる事前の備えについても解説します。
資産凍結されると銀行口座が凍結されますが、その他にも凍結される資産があります。
例えば、証券口座や生命保険などの資産です。
証券口座が凍結されると、凍結口座で管理している株式や投資信託などの金融商品は売却して利益を得ることができなくなります。
また、生命保険の凍結では、自身が加入している生命保険について解約ができなくなります。
このように、口座凍結されると銀行口座以外にも多くの資産が凍結されることを覚えておきましょう。
資産凍結されるタイミングは、主に以下の3つがあります。
それぞれのタイミングについて詳しく解説します。
資産凍結されるタイミングで最も多いのは名義人の死亡です。
名義人が死亡してすぐに資産凍結されるのではなく、名義人が死亡したことを銀行が知ると銀行口座が凍結されます。
親族が銀行に伝えたり新聞の訃報欄などで銀行の担当者が見つけたりすることで、資産凍結されるのです。
認知症に罹患することでも資産凍結されます。
名義人の死亡と同様、認知症に罹患してすぐに資産凍結されるわけではありません。名義人が認知症に罹患し判断能力がなくなっていることを銀行が知った時に銀行口座が凍結されます。
例えば、親族が銀行に伝えたり、銀行の担当者とやりとりをする中で、物忘れや話を聞いていないなど、認知症に罹患して一人で取引できる判断能力がないように思われると、口座が凍結されるのです。
認知症に罹患することにより資産が凍結することについては、以下の記事で詳しく解説しているので、興味のある方は併せてお読みください。
債務整理によっても資産凍結されます。
債務整理によって銀行が資産を凍結するのは、預金口座をもっている銀行から融資を受けていたり、カードローンを借りている場合です。
名義人が死亡した場合と同じように、債務整理の開始後すぐに資産凍結されるわけではなく、債務整理の開始を銀行が知った時に凍結されます。
資産凍結が行われる理由は、銀行の利益保護のために行う債務整理の場合を除いて、認知症の人の財産を守るためです。
判断能力が低下すると、詐欺に騙されやすくなったり、ついついセールスに乗っかって必要もないモノを大量に購入してしまったりすることがあります。
資産凍結をすることで、詐欺に騙されそうになったり間違えて購入しようとしたりしても、お金が引き出せないため、資産を守ることができるのです。
身内であっても必ず信用できるとはいえないため、資産凍結されると親族も含めて資産が利用できなくなるのです。
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親の資産が凍結されることで起こり得る家族のリスクには、主に以下の3つが挙げられます。
それぞれどのようなリスクがあるのかを具体的に解説します。
親の介護費・医療費・生活費を親の財産で負担しようと考えていた場合、親の銀行口座が凍結されると引き出せなくなってしまいます。
認知症になってしまった際に成年後見制度を利用すると、親の介護費などを親の口座から引き出せるようになる可能性もあります。しかし、すぐに引き出せるようになるわけではありません。
そうすると、親の介護費などを負担しなければならなくなり、場合によっては生活が苦しくなってしまうこともあるでしょう。
認知症に罹患した人の中には、年金を受け取っている人もいるかもしれません。この年金の引き出しもできなくなります。
原則として、年金は本人の口座にしか振り込まれないため、振込先を家族の口座にするなどの事前の対策もできません。
年金が引き出せなくなると、親の生活費などがまかなえなくなってしまうことも考えられるため、注意が必要です。
親が認知症になると、認知症の親を交えた遺産分割協議もできなくなります。
判断能力がないため、遺産分割協議で意思表示をしたとしても有効にはならず、遺産分割協議が成立しないのです。
遺産分割協議を成立させるためには、認知症になった親の代理となる人をつけなければならず、余計な手間と時間がかかってしまうでしょう。
ここでは、資産凍結の対処法について、対処法とその問題点を解説します。
資産凍結の対処方法は「成年後見制度」を利用することです。
成年後見制度とは、認知症になるなどして判断能力が低下した人の資産や財産の管理、法律行為の代理などができる制度です。
家庭裁判所に申し立てることで利用することができます。しかし、財産管理や法律行為の代理をする人は裁判所によって決められるため、必ず家族が代理できるわけではない点に注意してください。
「成年後見制度」は、以下の2つの問題点を抱えています。
それぞれの問題点について詳しく解説します。
成年後見制度を利用するには家庭裁判所への申し立てが必要ですが、申し立てには費用と手間がかかります。
申し立て自体にも費用がかかりますが、申し立てを専門家に依頼すると、さらに大きな費用がかかってしまいます。
また、自分で行うにしても専門家に依頼するにしても、手間がかかってしまうため、利用開始に向けての手続きなどが後手に回ってしまうこともあるでしょう。
成年後見制度を利用すると、柔軟な財産管理ができなくなる点も問題点といえるでしょう。
成年後見制度では、判断能力の低下した本人のために財産管理をすることになるため、その目的に沿わない財産管理はできません。
例えば、相続税対策のために行う生前贈与は、判断能力の低下した本人にとっては財産を減らす行為であるため、認められないのです。
このように、柔軟な財産管理ができなくなることが成年後見制度の問題点となっています。
全国銀行協会(全銀協)が2021年2月に、認知症による口座凍結に関する新指針を発表しました。
新指針によると、成年後見制度の利用を基本としつつ、要件を満たすことで成年後見制度を利用せずに預金を引き出せるようにする、とされています。
これを受け、全ての金融機関が直ちに運用を変更しているわけではありませんが、将来的に運用が変わることも大いに考えられます。どのような指針であるのかを詳しく見ていきましょう。
新指針においても、成年後見制度の利用が必要ではないわけではなく、あくまでも成年後見制度の利用が基本です。
ただし、成年後見制度を利用するには時間がかかります。その間の期間でお金がどうしても必要になった際に、成年後見制度では対処できません。
そこで、例外的に成年後見制度を使わずに預金を引き出す場合を認めることで、柔軟に活用することを定めている、という内容です。
成年後見制度を使わずに預金を引き出すためには、満たすべき条件があります。
これら条件を満たさなければ、基本的に成年後見制度でしか預金を引き出せません。それぞれの要件について詳しく解説します。
要件の1つ目は、認知症の症状の確認と証明です。
認知症の症状の確認と証明は成年後見制度でも必要であるため、手続きを行う親族にとって大きな負担となるわけではありません。
成年後見制度では、認知症と診断した医師に診断書を書いてもらうのが一般的な方法です。新指針でも同様の対応をとるのが望ましいでしょう。
引き出す預金の使い道を確認するのが要件の2つ目です。
当然ですが、引き出した預金は何にでも使って良いわけではありません。
もっとも大切な点は本人の利益になるか、という点です。
例えば、医療や介護に必要な費用、生活のために必要な費用などが挙げられます。
一方、生前贈与などは本人の利益にはならないため、認められない可能性が高いでしょう。
このように、引き出す預金の使い道を明確にしておくことが必要です。
要件の3つ目は、親族関係の証明です。
新指針では親族による引き出しが必要であるため、戸籍謄本の提出などにより親族であることを証明する必要があります。
預金の引き出しができる親族の範囲が定められているわけではありませんが、民法では親族を以下のように定めています。
かなり広いため、銀行がそのまま採用するのかはわかりません。いずれにせよ親族であることを証明しなければいけないため、戸籍謄本を用意しておきましょう。
これにより、代理人による取引も可能になります。
事前に銀行へ任意代理人の届出をすることが必要ではありますが、親族を始めとした代理人が取引できるようになることで、認知症になってしまっても親族の経済的な負担が重くなることを防げます。
しかし、事前の届出が必要とされていることからもわかる通り、親族であっても事前の準備なく預金を引き出せるわけではありません。
そのため、新指針による利用を前提に考えるのではなく、事前の備えが必要になるでしょう。
全銀協の新指針を受け、一部のメガバンクでは独自のサービスが提供され始めています。
開始されたサービスは、事前に代理人を決めておくことで、医師による診断書があれば預金の引き出しや定期預金の解約などができるようになるサービスです。
今後、全銀協の新指針に対応する動きが加速すると考えられるため、利用している金融機関が新指針に対応するのかを確認しておくと良いでしょう。
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資産凍結に備えるために、あらかじめ行っておきたい対策として、以下の5つが挙げられます。
それぞれの対策について解説します。
まとまった額の預貯金を引き出しておくことが有効です。
銀行口座が凍結されると預貯金は引き出せませんが、凍結されないうちに預貯金を引き出しておくことはできます。
そのため、あらかじめまとまった額の預貯金を引き出しておくことで、資産が凍結されても自由に使えるお金を確保しておくのです。
ただし、相続協議の際に問題になりかねないため、相続人全員の許可を得ておくことが望ましいでしょう。
資産凍結への備えとして、取引金融機関の整理をしておくと良いでしょう。
金融機関をいくつも持っていると、亡くなった際にそれぞれの金融機関で解約手続きをしなければならなくなるため、多くの手間がかかってしまいます。
そのため、取引金融機関を整理して、多くても2、3の金融機関にまとめておくことで、口座凍結された際の解約手続きを楽にできるようにしておくことが大切です。
生前贈与も資産凍結への備えに有効な制度の1つです。
たとえば、子どもにあらかじめ生前贈与をしておくことで、親の資産が凍結されても、生活費などに使う資金を手元に確保できます。
生前贈与は認知症になってしまうと行えなくなりますが、認知症になる前であれば問題なく行えます。
ただし、生前贈与をすると贈与税がかかってしまう可能性があるため、あらかじめきちんと調べておくと良いでしょう。
任意後見制度を利用することを考えても良いでしょう。
任意後見制度は後見制度の1つで、認知症になる前に任意後見人を決めておくことで、認知症になったあとの資産管理や様々な手続きのサポートをしてもらえる制度です。
裁判所により任命される任意後見監督人による監督を受けますが、任意後見人は自分で決めることができ、信頼できる人に財産管理を任せられる点が大きなメリットです。
詳しくは以下の記事で解説していますので、任意後見制度について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
家族信託も資産凍結への備えとして有効な制度です。
家族信託は信頼できる人に財産管理を任せる制度で、任意後見制度とは異なり裁判所の介入がありません。
また、家族信託契約で事前に決めておけば、自由に財産管理できることもメリットの1つです。
ファミトラでは家族信託にまつわる疑問や悩みの相談を受け付けていますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。
最後に、資産凍結に関するよくある質問について解説します。
資産が凍結されると成年後見制度を利用することになりますが、成年後見制度を利用するには家庭裁判所への申し立てが必要です。
家庭裁判所へ申し立ててから後見が開始されるまでには、通常1〜2カ月を要します。
また、申し立てまでにも手続きなどで時間がかかることを考えると、2〜3カ月はかかると考えておくのが良いでしょう。
介護費用など、本人のために使う場合であっても、法律上は窃盗罪が成立する可能性があります。
しかし、刑法244条1項では、本人以外のための生活費や遊興費に使わなければ「配偶者、直系血族又は同居の親族との間でこれらの罪又はその未遂罪を犯した者については、刑を免除する」と規定されています。
そのため、警察が介入する可能性は低く、刑罰で処罰される可能性は低いでしょう。
ただし、刑罰に処されることはなくても、明らかに大量の額を本人以外の人が引き出すと、銀行は不正利用を疑い、状況調査をされる可能性があります。その点には注意してください。
資産凍結されると、預貯金の引き出しなどができなくなります。
成年後見制度を利用することにより資産凍結を解除できますが、利用開始に1〜2カ月ほどの期間がかかる上、利用用途も限られてしまいます。
そのため、任意後見制度や家族信託などで事前に対策しておくことで、認知症になっても資産凍結されず、財産をスムーズに利用できます。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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