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家族が認知症になると、後見人をつけたほうが良いのか迷う方が多いのではないでしょうか。
後見人をつけることにはメリットもデメリットもあるため、状況に合わせて適切に考える必要があります。
そこで、本記事では家族が認知症になったら後見人は必要なのかについて解説します。
後見人をつけることのメリット・デメリットだけでなく、後見人をつけないと判断した際の代替手段についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
認知症患者の支援や保護を行う「後見人」は、判断能力が低下している人の生活をサポートするための成年後見制度で選任されます。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
2つの制度の違いは、法定後見制度はすでに判断能力が低下した人に対して適用され、任意後見制度は判断能力の低下に備えて利用される制度であることです。
法定後見制度は裁判所が認めた特定行為の代理ができる一方、任意後見制度では任意後見契約で定めた行為ができるという違いがあります。
法定後見制度には、判断能力が低下している順に、さらに後見・保佐・補助の3つの分類があります。
法定後見制度における後見人は、それぞれ成年後見人・保佐人・補助人と呼ばれ、これらの人は裁判所によって選任されるのです。
一方、任意後見制度における後見人は任意後見人と呼ばれ、任意後見制度を利用する本人が信頼している人を選べます。
成年後見制度や成年後見人について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
家族が認知症になったときに、後見人が必要となる理由は主に以下の4つです。
それぞれの理由について、以下で解説します。
家族が認知症になると、銀行口座が凍結状態になります。
その理由は、判断能力が低下した口座名義人が、詐欺事件などに巻き込まれることを防ぐためです。
そのため、銀行が凍結状態になると、預金の引き出しや他口座への振り込み、定期預金の解約などができなくなります。
銀行口座が凍結状態になってしまった場合、ほとんどの場合は後見人をつけることで預金が引き出せるようになります。
遺産分割協議は、協議に参加する人の判断能力が十分でなければなりません。
そのため、遺産分割協議の対象者に認知症になった人が含まれていると、遺産分割協議が進められないのです。
後見人をつければ後見人が遺産分割協議に加わることができるようになるため、相続が発生したら後見人をつける必要があります。
認知症により判断能力が低下していると、有効な意思表示が確認できないため、契約などの法律行為ができません。
そのため、契約行為を含む不動産売買や施設入居などができなくなるのです。
もし、使わなくなった実家を売却したかったり、老人ホームや介護施設へ入居させたかったりしても、契約を締結できないため、不便な生活を強いられることがあるかもしれません。
このような事態を避けるためにも、後見人をつける必要があるのです。
認知症の発症により判断能力が低下していると、不当な契約を結ばされたり詐欺の被害にあいやすくなったりします。
一度契約を結んでしまうと、後から不当な契約や詐欺だと気づいても取り消すことが難しくなるでしょう。
しかし、後見人をつけておけば、不当な契約や詐欺の被害にあっても契約を取り消せるため、本人の財産を守ることに繋がります。
認知症を発症した後の対応は「成年後見人」が基本の選択肢になります。
成年後見制度は認知症を発症した後でも利用できる便利な制度ですが、成年後見制度ではカバーできないこともあります。
ここでは、成年後見人にできることとできないこと、成年後見人には誰がなるのかについて見ていきます。
まずは、成年後見人にできることとできないことについて解説します。
成年後見人にできることの範囲を知ることで、成年後見制度の概要が理解できるでしょう。
成年後見人には「財産管理」と「身上保護」、「管理行為」が認められています。
財産管理とは、認知症を発症した本人(被後見人)の財産を管理することであり、例えば以下のような事項が含まれます。
預貯金の管理のみならず、不動産や賃貸借契約、さらには遺産分割まで対応できます。
身上保護とは本人の生活を支えるため、必要な契約の締結や申請などをすることです。
例えば、医療や介護、施設入居などに関する契約や要介護・要支援認定の申請などが挙げられます。
身上保護ができることで、認知症を発症した後でも適切な医療や施設への入居ができるようになるのです。
また、郵便物や証明書類、年金手帳などの管理をする管理行為も含まれており、失くしたら困るものは成年後見人が代わりに管理できます。
一方、成年後見人には「事実行為」や「身分行為」は認められていません。
事実行為とは、本人の生活を直接支援する行為のことです。
例えば、本人の送迎や介護、日用品の買い物、部屋の掃除などは、本人の生活を直接支援する事実行為に当たるため、成年後見人にはできません。
また、本人の身分に関する法律効果の発生や変更、消滅させる「身分行為」もできません。
例えば、結婚届や離婚届の提出、養子縁組、子の認知などが挙げられます。
身分行為は本人の意思が重要であるため、成年後見人に限らず代理人が行うことは認められていません。
このように、成年後見人にはカバーできない行為があることを理解しておきましょう。
認知症患者の成年後見人は、家庭裁判所の認定によって決定します。
以下の欠格事由に該当する人を除けば、誰でも成年後見人の候補者になることができるため、家族が成年後見人の候補者になることも可能です。
「家族が成年後見人になりたい」という申請を出すことは可能ですが、最終判断は家庭裁判所によって行われるため、必ずしも家族が成年後見人になれる保証はありません。
家族以外では、弁護士や司法書士、介護福祉士などの専門家が選任されるケースが多くあります。
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認知症の家族に成年後見人をつけるメリットは、主に以下の3つがあります。
それぞれのメリットについて、1つずつ解説します。
財産管理を任せられるメリットがあります。
認知症を発症してしまうと、判断能力が低下しているため、本人が財産を適切に管理できなくなる可能性が高まるでしょう。
例えば、誤って商品やサービスを購入してしまったり、必要な支払いを忘れてしまったりするなどの影響が考えられます。
そのため、成年後見人をつけて財産管理を任せることで、安心して財産管理をできるようになるでしょう。
生活に必要な手続きを代行してもらえるメリットもあります。
認知症を発症すると、発症前と同じように生活するのが難しくなるため、施設に入所する方もいるでしょう。
しかし、認知症を発症している場合、判断能力が低下しているため入所の契約が結べません。
また、施設への入所だけでなく、通院する場合でも医療契約を結べず、適切な医療が受けられない可能性もあります。
そこで、成年後見人をつけることで、こうした手続きを代行してもらえるため、適切な医療や福祉サービスを利用できるようになります。
不利益な契約の防止や取り消しが可能になることも、認知症の家族に成年後見人をつけるメリットの1つです。
判断能力が低下すると、不当な契約や詐欺などの不利益な契約であることがわからず、契約してしまう場合が少なくありません。
成年後見人には、不利益な契約を取り消す権利が与えられているため、もし不当な契約や詐欺にあっても被害を最小限で食い止めることができます。
不当な契約や詐欺の被害を防止したい場合には、成年後見人をつけることがおすすめです。
一方、認知症の家族に成年後見人をつける場合にはデメリットもあります。
以上の3つのデメリットについて、1つずつ解説します。
また、成年後見制度に関するデメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
成年後見人をつけると、自由に財産を活用できなくなります。
成年後見制度を利用する一番の目的は、本人の財産を保全することであるため、成年後見人であっても財産を活用できる範囲は広くありません。
成年後見人は定期的に裁判所に財産の活用状況を伝える必要があるため、こっそり使うこともできないのです。
例えば、お世話になった人にお金を渡したり、自宅をリフォームしたりすることは、財産の保全にはなりません。
そのため、将来の相続財産を保全する目的が明らかである場合以外は、基本的には認められないのです。
このように、自由に財産を活用できなくなることを理解しておきましょう。
成年後見人をつけると、手続費用やランニングコストが必要なこともデメリットの1つです。
成年後見人をつけるためには、裁判所へ申し立てる必要があり、最低でもおよそ1〜2万円ほどの費用がかかります。
さらに、鑑定が必要な場合は10〜20万円程度の鑑定費用が、弁護士などに手続きを依頼する場合は15〜25万円程度の弁護士費用が追加で必要です。
加えて、成年後見制度の利用が始まると、成年後見人に対して毎月2~6万円程度の報酬を支払い続ける必要があります。
成年後見監督人がつくと、さらに1~3万円程度の報酬が追加されるため、注意が必要です。
成年後見人とのミスマッチが起きると、トラブルに発展する可能性もあります。
親族以外が成年後見人に選任された場合、成年後見人は被後見人の意向を知らないまま財産管理を行うケースがほとんどです。
例えば、被後見人の判断能力が十分だったときに、財産の活用方法を親族で話しているケースを考えてみます。
親族が話し合いの内容を覚えていて、その通りの活用を成年後見人に依頼しても、成年後見人は被後見人と親族との話し合いの内容を知らないため、被後見人の意向がわからず本人の財産を保全する目的で依頼を拒否する可能性が考えられます。
このように、成年後見制度を利用すると成年後見人とのトラブルが起きる可能性もあることにも注意してください。
認知症の家族に成年後見人をつけるためには、本人の所在地を管轄している家庭裁判所に申し立てる必要があります。
申し立てる際には以下の書類が必要です。
これらの書類を家庭裁判所に提出したら、申し立てに関する審理や審判が行われます。およそ2週間程度したら審判が確定し、制度の利用が始まります。
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成年後見人をつけない選択をしたとき、代わりになる方法として以下の3つが挙げられます。
それぞれの概要について、以下で解説します。
1つ目の方法は、家族信託を契約することです。
家族信託とは、信頼する人に財産管理を委託できる方法です。
成年後見制度とは異なり、判断能力が十分なうちに契約を結ぶことが必要で、対応範囲に身上保護は含まれず財産管理のみにとどまります。
すでに認知症と診断された場合でも、程度が軽く判断能力が十分だと判断されれば契約を結べます。
家族信託について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
2つ目は、日常生活自立支援事業を活用することです。
日常生活自立支援事業とは、都道府県や指定都市社会福祉協議会が主体となって、判断能力が十分でない人の生活を支援する事業です。
具体的には以下のような援助が受けられます。
日常的な金銭管理など、成年後見制度と同じような支援内容もあるため、ぜひ検討してみてください。
3つ目は、生前贈与を活用することです。
認知症を発症すると預貯金の引き出しや不動産の売却などができなくなります。
しかし、財産管理については、認知症を発症する前に生前贈与しておけば、認知症になっても困ることが少なくなります。
贈与税がかかることがあるため、その点では注意が必要です。計画的に生前贈与することで、いざ認知症になってから慌てることが少なくなるでしょう。
このように、生前贈与も有効な手段ですので、ぜひ活用を検討してみてください。
最後に、認知症患者と成年後見制度に関するよくある質問を2つ紹介します。
認知症患者と成年後見制度について疑問点がある方はぜひ参考にしてみてください。
以下の欠格事由に該当しなければ、他に資格や技能は必要ありません。
しかし、成年後見人の選任は家庭裁判所によって行われるため、必ずしも希望している人が成年後見人になれるわけではない点に注意してください。
成年後見制度を利用するには、以下のような費用がかかります。
鑑定費用や司法書士や弁護士の報酬は、必要な場合にのみ支払いが必要です。
成年後見制度は財産管理や身上保護ができるため、認知症対策として有効です。
しかし、自由に財産管理できない点や成年後見人とのミスマッチによってトラブルが起きる可能性がある点など、デメリットもあります。
そのため、メリットとデメリットを比較した上で、成年後見制度を利用するかを決めることがおすすめです。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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