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「軽度認知障害(MCI)」とは、認知症になる一歩手前の状態をいいます。放置すると認知症へと移行してしまいます。
本記事では「軽度認知障害(MCI)」とは何かや診断基準を解説します。
記事を読めば、初期症状と早期発見により進行を防ぐ対策がわかるようになるでしょう。お悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
軽度認知障害(MCI)とは簡単にいえば、認知症予備軍のことです。
軽度認知障害(MCI)の状態で病気を発見できれば、正常な状態に戻る可能性があり、認知症の発症時期を可能な限り遅らせることも視野に入ります。
ここでは軽度認知障害(MCI)について、上記の5つの視点から見ていきます。
軽度認知障害(MCI)の段階では、認知症と診断されてない状態です。すなわち認知症と健康な状態の中間です。
とはいえ、認知症と完全に診断される前の一歩手前の状態のため、放置すれば認知症へと移行してしまいます。
適切な認知症予防をすることで、健常な状態に戻る可能性もあります。
参考:国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」
軽度認知障害(MCI)の主な診断基準は下記の5つです。
見落としてしまうことも多いのですが「最近もの忘れが増えた」で済まさずに、専門医に早めに相談するようにしましょう。
参考:厚生労働省「e-ヘルスネット」
軽度認知障害(MCI)の検査方法として、ここでは以下の3つを紹介します。
採血して血液中のタンパク質を調べる検査です。約30分で終了するため、本人への負担は少ないでしょう。
検査結果は約2~3週間後に判明し、検査結果を基に必要であれば生活習慣の見直しを行います。デメリットは健康保険の適用対象外であることです。
アルツハイマー病の発症リスクを調べる検査です。将来の発症の有無がわかる検査ではありません。
アルツハイマー病の発症リスクに該当する遺伝子があったとしても、必ずしもアルツハイマー病を発症するという意味ではありません。
MRIやCTを使った検査の他に、脳の血流を測定する脳血流SPECT検査や、脳の糖代謝PET検査などがある画像検査のことです。
検査機器の保有状況から検査を実施できる病院は、ある程度限られます。事前に確認するようにしましょう。
また、病院へ連れて行くのが難しい場合には「あたまの健康チェック」という非医療従事者が操作可能な、コンピューターを用いた簡便な評価スケールもあります。
ただし、音声での対話が困難な方と認知症と診断されている方は利用できません。
軽度認知障害(MCI)と認知症との違いを見るために、20問の質問形式の評価スケールである「ミニメンタルステート検査」が用いられます。
判断基準は以下のとおりです。
質問形式に答える検査で記憶力や認知能力を測定可能です。
アルツハイマー病によるMCIは、軽度認知障害(MCI)の原因のうちで最も多いと考えられています。
これらの病気はMCIの主な原因として考えられています。他にも不安やストレスなども原因の1つの要素と捉えることができます。
軽度認知障害(MCI)の主な症状は記憶障害です。
MCIの臨床的な定義のうちでも、記憶障害の症状が主であることが挙げられます。
主な症状である記憶障害の他にも、今までできていたのに計画を立てられなくなったり、物事を順序立てて行えなくなることも軽度認知障害(MCI)の兆候です。
この他にも、料理ができなくなってしまったり、テレビなどの電化製品の使い方がわからなくなるという実行機能障害が見られることもあります。
物忘れは、加齢によっても起こりますが、軽度認知症の物忘れには以下の特徴があります。
記憶には、①情報を覚える、②情報を記憶する、③情報を必要なときに思い出すという3つの段階があります。
加齢による物忘れは、③の段階がうまくできないため、思い出すまでヒントが必要となるなど時間がかかりますが、体験自体は覚えており、その一部を忘れているという自覚があります。
一方、認知症が原因の物忘れは、①の機能が低下するために起こり、体験したこと自体を忘れてしまうのです。
軽度の認知症になると、さまざまな認知機能が低下し、できないことや日常生活に支障を来すことも出てきます。できないことが増えると、意欲の低下や不眠の症状が表れ、食欲が落ちたり、周りに興味や関心を示さなくなることがあります。
これらの症状からうつ病と間違われますが、うつ病の場合「自分は無価値だ」「生きていても意味がない」などのネガティブな感情に支配されます。
認知症によるうつ状態は、自分の認知機能の低下に対する不安で、症状が進行すると無関心になっていくのが特徴です。
軽度認知症の症状の1つに、集中力の低下があります。以下の症状が出たら気を付けましょう。
また、これまでできていたことができなくなると、周囲の人から注意されることが増えます。そのために、自信を失い、上述したようなうつ病のような症状が表れることもあります。
人は、現在の時間・日付・季節・自分が現在いる場所・周囲の人物・状況から、自分が現在置かれている状況を把握し理解します。この能力を見当識といいます。
軽度認知症の症状に見当識障害があります。以下の症状が見られたら見当識障害の可能性があります。
見当識障害は不眠の原因ともなり、不安感から徘徊する人もいます。
自己診断に使用するチェックリストは、おおよその目安であって医学的な診断結果ではありません。診察を受ける医師に症状を的確に伝える、ツールの1つとして利用されるのが良いでしょう。
身体機能が低下していると点数が高く表れる可能性があるので、日常の健康状態とも関連があります。
また、自己診断チェックリストの他にも、自動車を運転するときに備えて「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」があります。
30問中5問以上チェックが入ると注意が必要です。本人や家族の判断により、認知症の専門医や専門機関での受診を検討しましょう。
軽度認知障害(MCI)は早期に発見できれば、元の健康な状態に戻れる可能性があります。
認知症への移行を防ぐ対策について見ていきましょう。
厚生労働省「MCIハンドブック」によると、1年間で約5~15%の方がMCIから認知症に移行することが示されています。
一方で、1年間に約16~41%の方がMCIから健常状態になることもわかっています。
もの忘れと見分けることが難しいものの、軽度認知障害(MCI)の早期発見に努めなければなりません。
参考:軽度認知障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」
認知症への移行を防ぐには、病院で早期に専門医から適切な治療を受けることが1番の対策です。他の対策についても合わせて見ていきましょう。
認知症を予防するためには、発症を予防すること、早期発見を目指すこと、病気の進展防止が原則です。
少しでも様子がおかしいと感じたら、専門医のいる病院を早期に受診し適切な治療を早く受けることが認知症への移行を防ぐことに繋がります。
1日に3回の食事にも気を付けるようにしましょう。生活習慣病の原因をできる限り排除することが大切です。
高カロリー・高脂質な食事は控えてバランス重視の食事を目指すために、下記のものを意識して摂取すると良いでしょう。
認知症への移行を防ぐために自分の好きなものに偏らず、バランスの良い食生活を心がけましょう。
運動することで認知症の発生リスクが低下するといわれています。週3回で1回につき30分以上の運動で認知症の発症リスクの低下に繋がる可能性があります。
また、有酸素運動は効果的で脳の血流が増加します。
適度な運動により心臓や肺の機能を低下させないよう心がけ、メタボリックシンドロームの予防と改善にも努めましょう。
軽度認知症に罹患すると、それを気にして引きこもりがちになり、家族や他の方とのコミュニケーションが減少します。一般的に、社会的交流が多い方は、少ない方に比べて認知機能が高い傾向にあり、社会的交流の減少は、認知症につながる可能性があります。
認知症の予防には、社会的交流の機会を増やすことが重要です。社会的交流とは、家族・友人との会話や交流、地域社会や地域活動への参加、就労などがあります。
社会的交流は脳を活性化させるため、認知症予防に効果的です。
1つではなく複数のサークルなどへ参加すれば、その分社会的交流や外出の機会をつくれます。また、サークル活動が社交ダンスなどの体を動かすものであれば運動効果も期待できるでしょう。
認知機能低下及び認知症のリスク低減に関するWHOガイドラインによると、認知トレーニングは軽度認知障害の高齢者に対し認知機能低下や認知症リスク低減のため行っても良いとされています。
トレーニングは、有酸素運動と無酸素運動のいずれも認知症の予防に効果があるといわれ、知的活動であるゲームも良いようです。
知的活動の具体例としては、日記、絵画、間違い探し、連想ゲーム、しりとりなどです。
知的活動は、思考して手先を使うことで、脳の機能を使用することになり認知症予防に繋がるともいわれています。
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軽度認知症の症状が表れたからといって、いきなり専門医のところに行くのはハードルが高いかもしれません。まずはかかりつけの医師に相談しましょう。かかりつけの医師から専門家を紹介してもらえば、連携もスムーズにいきます。
かかりつけ医がいない場合は以下の機関に相談しましょう。
地域包括センターとは、①介護、②医療、③保険、④福祉などの面から地域の高齢者をサポートする総合相談窓口です。
各市町村に設置されており、自治体が直接センターを運営しているケースや、自治体から委託を受けた社会福祉法人や医療法人などが運営しているケースもあります。
地域包括センターの業務の1つに介護予防ケアマネジメントがあり、要支援認定された人や、支援や介護が必要になる可能性が高い人に対し、症状の悪化を防ぎ、自立した生活が送れるように支援します。
地域包括センターを利用できるのは、対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者やその支援のために活動に関わっている方となります。
社会福祉協議会とは、全国の福祉関係者や福祉施設等事業者との連絡・調整、社会福祉の制度改革に向けて取り組む団体です。
何らかの支援が必要な人たちへの見守り、声かけ、手助けなどの地域に根差した社会福祉の実践を進めています。
認知症サポーターとは、認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けをする人のことです。認知症サポーターには、「認知症に対して正しく理解し、偏見を持たない」「認知症の人に対して温かい目で見守る」といったことが期待されています。
軽度認知障害(MCI)と診断されたときに検討すべき資産対策を3つ解説します。
具体的な内容について以下で見ていきましょう。
認知症に移行してからでは対応できないため、家族に自身の財産内容を明らかにしておかなければなりません。
認知症で判断能力が十分でなくなれば、自分でも資産状況がわからなくなるので以下の点を整理しておくと良いでしょう。
これらを共有しておくだけでも家族は助かります。
また、今後どのような介護を受けたいのかや介護費用の目安も家族に共有しておきましょう。
認知症対策として、柔軟な財産活用ができる家族信託があります。本人の軽度認知障害(MCI)の程度によっては、家族信託を利用できる場合もあります。
家族信託は契約行為です。本人が信託契約内容を理解して誰にどの財産を託すかなどについて理解できている場合に限り、家族信託で資産運用や相続に備えることができます。
軽度認知障害(MCI)の症状が進んでいない段階で、本人の判断能力が十分なうちに認知症対策としての家族信託を行っておきましょう。
本人の判断能力が不十分であれば家族信託は利用できません。その場合は任意後見制度の利用を検討することになります。資産活用や相続対策についても同様のことがいえます。
既に本人の判断能力が不十分な状態であれば、家族信託は利用できません。その場合は法定後見制度の利用を検討することになるでしょう。
軽度認知障害(MCI)であっても、本人の判断能力が十分と認められる場合なら任意後見制度の利用も可能です。
ただし、任意後見人になる方と任意後見人の職務などについて任意後見契約を締結できる程度の判断能力が求められます。
任意後見制度では任意後見監督人が選任されるため、ランニングコストとしての報酬が発生する点はデメリットといえます。
契約を締結できる判断能力がない場合には、任意後見制度は利用できません。
軽度認知障害の方が家族信託を活用する際の流れと注意点について解説します。注意点としては特に、①相続に関わる親族に相談をする、②公正証書を作成するの2点に気を付けましょう。
家族信託を利用するまでの大まかな流れは以下の通りです。
家族会議で決める内容は、信託の目的は何なのか、受託者を誰にするか、信託財産にどれを含めるかなどです。
上記の内容を盛り込んだ契約書を作成しますが、できるだけ具体的な表現を用い、さまざまな解釈が可能な表現は避けましょう。
信託財産に不動産が含まれている場合、法務局に移転登記の申請をする必要があります。
信託財産と他の財産を分けるため、信託専用の口座を開設します。この信託口座で信託財産を管理します。
1~4まで完了したら、いよいよ財産管理を開始します。
家族信託を活用するに当たって、家族会議を開き相続に関わる全ての人に相談することが大切です。一部の相続人だけで信託の内容を決めてしまうと、その他の相続人と後々トラブルになる可能性があるからです。
例えば、受託者は委託者の不動産を自己の名義に変更したり、専用口座でお金の管理をしたりします。これらの行為から、財産の使い込みなどの疑いをかけられる可能性があります。
また、家族会議に不参加の親族から受託者の死後に、「信託契約書が偽物なので信託契約は無効」との主張がなされる可能性もあります。
したがって、多少時間はかかっても、相続に関わる親族全員で話し合い、納得した上で家族信託を始めましょう。
家族信託はお互いが合意し契約書を交わすことで成立します。しかし、上記のように「信託契約書が偽物なので契約は無効だ」などと主張してくる親族が現れる可能性があります。
そこで、契約の有効性を担保する意味でも、契約書を公証役場で公正証書にするのがおすすめです。公正証書は公証人が立ち会って作成されるものなので、法的な有効性が争われることはほとんどありません。
また、公正証書は公証役場で保管されるので、紛失してしまった場合も再発行が可能なこと、契約書の改ざんを防止できることも公正証書にするメリットです。
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以下では軽度認知障害(MCI)に関するよくある質問に答えていきます。
軽度認知障害(MCI)は、1年間で約16~41%の方が健常状態に戻ることがわかっています。
軽度認知障害(MCI)の原因とされている病気には、ホルモン異常やうつ病などがあります。早期に適切な治療を行うことで、認知機能が健常な状態に戻る可能性があるといえるでしょう。
軽度認知障害(MCI)は認知症と診断される一歩手前の状況です。専門医で適切な治療を受けて、予防することで健常状態に戻る可能性があるといえます。
本人の軽度認知障害(MCI)の程度によっては、家族信託を利用できる場合があります。契約行為を行えるだけの判断能力がなければなりません。
信託契約内容を理解することができて、誰にどの財産を託すかなどの判断ができる場合において家族信託の契約が可能です。
軽度認知障害(MCI)の症状が進行して認知症へと移行すると、個々のケースにもよるものの、契約するのに十分な判断能力がないと認められることが多いでしょう。
その場合は家族信託は契約できず、法定後見制度の利用を検討することになります。
軽度認知障害(MCI)の主な判断基準には、年齢だけでは説明できない記憶障害が存在しています。早期に発見できれば、1年間で約16~41%の方が健常状態に戻ることもわかっています。
進行防止策として、早期に専門医が在籍する病院で適切な治療を受けることが大切です。適切な治療が認知症への移行を防ぐことに繋がります。
軽度認知障害(MCI)でも、十分な判断能力を有している状態であれば家族信託を利用できるケースがあります。家族信託では、比較的自由度の高い財産管理が可能です。
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