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現代では超高齢社会を背景に、認知症の発症数も増加傾向にあります。
認知症になると様々な問題行動を起こしますが、ときにはそれが本人や家族の問題を超えて社会問題になることもあります。
また、認知症を発症すると、本人の預金保護のため預金口座が凍結され、預金が引き出せなくなります。
これらの問題を詳しく解説し、それぞれの解決策を提示するので最後までお読みください。
認知症とは、脳組織が損傷を受けることによる器質的な変化で、記憶力、認識力、判断力などが衰える病気です。
ゆっくりと進行し徐々に脳の働きが低下するのが特徴で、前兆、初期、中期、末期の順に4つの段階があります。
また、認知症には以下の2種類の症状があります。
認知症の最も顕著な症状は記憶障害です。
最初に、短期記憶ができなくなり、徐々に長期記憶や判断力、認識力が低下していき、やがて日常生活が困難になります。
認知症の問題行動とは、認知症の人が起こす徘徊や暴力行為、トイレの失敗、幻聴や幻覚などのことを指します。
これらは、周辺症状といわれます。
認知症の問題行動は実に多様です。
ここでは、次の①暴力や暴言、②徘徊の2つに絞って解説します。
認知症の人がよく起こす問題行動の1つが、家族や介護者への暴力や暴言です。
家族や介護者へ汚い言葉やキツイ言葉を浴びせたり、殴る蹴るなどの暴行に及んだりします。
ストレスが原因といわれており、健常な人なら理性で抑えることができるのですが、脳の機能が低下した認知症の人はそれが抑えられません。
徘徊とはあてもなく外をうろつくことで、認知症の代表的な症状です。
特に夜間徘徊は、介護者の負担が大きくなります。
また、徘徊は、自分のいる場所がわからなくなり警察に保護されたり、そのまま行方不明になったりと後述するように社会問題化しています。
問題行動には必ず原因があります。主な原因は以下のとおりです。
トイレの失敗などを、叱られたときなどに暴言を浴びせたりするのはこの例です。
認知症になる前は、毎日夕飯の準備をしていた女性が夕方になるとソワソワ落ち着かなくなって徘徊するのは、過去の記憶で何かしなければと不安になるからです。
過去の自分を再現しようとして、徘徊することがあります。
例えば、とっくに定年退職した会社にスーツを着て出社する例です。現在の自分を忘れて、過去の若い時分になったつもりで、会社に出社してしまうのです。
環境の変化は、認知症の高齢者に心身共に負担をかけます。
認知症の人は、この変化が多大なストレスとなり、徘徊など問題行動を起こします。
健常者は理解できなくても、認知症の方が問題行動を起こすには彼らなりの理由があります。
認知症の方を身内に持つ家族が、認知症の方に接するときに気を付けるべき点が2つあります。
それは、①認知症の方の言うことを否定しないこと、②認知症の方の心に寄り添うことです。
判断能力や記憶力が低下しても、羞恥心や自尊心は変わらないといわれます。
認知症の方の言動を否定しないことが原則です。
例えば、食事が終わったばかりなのに、「ご飯はまだか?」と言われたとします。
これに対し「何言ってるの?さっき食べたばかりでしょう」と返すのではなく、「お腹が空いちゃったのね。すぐ用意します。」と相手の言ったことをいったん受け入れます。
認知症の方の言動をそのまま受け入れると、本人は自分を肯定して受け入れてくれたことに安心出来るのです。
認知症の方の問題行動には理由があります。
その理由を理解することは難しいかもしれませんが、認知症の方が「何に苦しんでいるのか」「何をしたいのか」「どうして欲しいのか」を汲み取ろうとする姿勢が大切です。
認知症は本人や家族だけの問題ではありません。
介護者の介護ストレスによる高齢者虐待や、行方不明者の増加、孤独死する高齢者の増加など社会問題にまで発展しています。
以下、詳しく解説します。
ニュースなどでも、介護ストレスによる高齢者虐待という言葉を目にするようになりました。
また、介護者が介護のストレスから、うつになってしまうこともあります。
介護者がストレスを抱える原因は以下の2つが挙げられます。
これらのストレスを減らすには以下の方法が有効です。
美味しいものを食べたり、好きな音楽を聴いたり、ストレス解消を定期的に行うことでストレスが軽減されます。
認知症について勉強し、より深く理解することで、認知症の方への接し方が変わります。
介護サービスの利用や他の家族からの協力で、介護者の負担を減らしましょう。
警察庁の調査によると、令和4年の認知症もしくはその疑いのある行方不明者の数は述べ18,709人にのぼります。
認知症患者には、体は健康な方も多く、驚くような遠方で保護されたという話もよく聞きます。
上述したように、認知症特有の症状が徘徊です。認知症の方が行方不明になる原因の多くは、徘徊しているうちに自分がどこにいるのかわからなくなることです。
認知機能が低下すると危険を回避する能力も低下し、徘徊しているうちに事故にあうなど重大な事態になることもあります。
1人暮らしの認知症の方が社会的に孤立したまま亡くなるケースもありますが、同居人がいるにもかかわらず孤独死する方も増えています。
同居人がいる孤独死では、残された方が認知症だったケースが増えてきています。
高齢夫婦2人暮らしの場合、どちらかが配偶者の介護をしているケースが多く、介護者の方が倒れた場合に、介護されている人が認知症だと対応ができません。
そのまま他人による救助が遅れると、最悪、死に至る可能性もあります。
この背景には少子高齢化による老々介護と、高齢者の社会的孤立の問題があります。
同居の孤独死の防止には、高齢者を見守る社会的なシステムが必要です。
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認知症が引き起こす社会問題の根底にあるのは社会的孤立です。
社会的孤立を防ぐために、様々な公的な取り組みが増えてきています。
社会的孤立を防ぐ最も有効な対策として、見守り強化です。
そのための公的な制度として、以下の2つがあります。
見守りSOSネットワークとは、徘徊により行方不明になった人を地域住民や関係機関が協力して、早期発見に繋げる仕組みです。
窓口は各市区町村で、徘徊のおそれのある人には事前登録や高齢者見守りグッズの補助を行っています。
包括支援センターとは、介護や医療などの相談など、地域ぐるみで高齢者をサポートする機関です。
介護サービスの紹介やケアプランの作成から、高齢者虐待や特殊詐欺への対応も行っています。
また、介護者の介護疲れの相談に乗るなど、介護を様々な面からサポートします。
認知症によって起きるのは問題行動や社会的な問題だけではありません。
認知症によりものごとの判断ができない状態であるとみなされた場合、様々な社会的活動が制限されてしまうのです。そのなかには、認知症を発症した方の財産の管理も含まれます。
意思能力を喪失したと判定されるとその財産の管理・処分に制限がかかります。例え、本人のために財産を活用したいという家族の意向があったとしても、叶わなくなってしまうのです。
以下では認知症に伴うお金の問題の例を紹介します。
財産管理と契約書は切っても切れない関係にあります。しかし、認知症により意思能力を喪失すると、法的に有効な契約書を締結することができなくなります。
例えば、不動産の所有者が認知症を発症すると、不動産の管理・処分ができなくなってしまいます。また、認知症を発症すると、自分の財産を使って孫の学費を支給することができなくなるのです(学費を孫に支給することも贈与契約に当たります)。
加えて、家族が代わりに手続きを行おうとしても、本人の意思を確認できないため、専門家に止められる可能性もあります。
金融機関では詐欺被害などを未然に防ぐため、口座名義人の意思能力が著しく低下していると判断した場合、口座からの出金を停止する措置を取ることがあります。
定期預金の解約をはじめ、普通預金からの引き出しなども対象となります。一度出金が停止されてしまうと、家族であっても簡単に解除することはできません。
意思能力を喪失すると、本人が自ら遺言を書いたとしても、それを法的に有効とすることはできず、希望通りの相続・財産管理の実現が困難になります。
また、遺言を作成せずとも認知症により判断能力が低下した状態では、本人がどのような形の相続・財産管理の形を希望しているかわからなくなってしまいます。
近年、高齢者を標的にした詐欺が多発しています。認知症を発症すると判断能力が低下するため、詐欺を見抜けずに簡単に被害に遭う可能性が高くなります。
また、悪質な営業の標的となり、同じ保険に重複して加入してしまったり、必要性のないものを購入させられてしまうケースもあります。
「そうはいっても、ウチの両親はまだまだ元気だし、認知症になりそうもない」そう思われる方もいらっしゃるでしょう。 しかし、現実には認知症は思ったよりもずっと身近な病気です。
厚生労働省の発表※1によると、日本の65歳以上の高齢者における認知症有病者の割合は、2020年で18.0%となっています。これが、2025年には20.6%、すなわち5人に1人以上にのぼると推計されています。
また、年代別の調査(2012年時点)※2では、認知症の前段階といえる軽度認知障害(MCI)も含めると実に4人に1人に認知能力の低下がみられると報告されています。
加えて、転倒による骨折や病気の療養、あるいは感染症への罹患を避けるための自宅待機などで活動量が落ちることが原因となり、突然認知症を発症するケースもみられます。
近年では、65歳未満の現役世代の方が発症する若年性認知症についても増えています。このように、認知症は想像よりもずっと多くの方に起こる可能性があります。
また、ささいなことをきっかけとして急に発症までいたる恐ろしいものなのです。
人生100年時代といわれる現代において、認知症はもはや国民病であり、両親や自分自身が発症する可能性は十分にあります。もはや認知症は他人事ではないのです。
※1 厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」(平成27年)
※2 厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応 総合研究報告書」(平成24年)
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認知症の進行を抑える治療法は存在するものの、根本的に認知症を治す方法は現時点では確立されていません。
したがって、認知症を発症した本人が、自ら財産管理に関する様々な問題を解決するのは事実上困難です。
認知症を発症した方の財産を保護するための制度として成年後見制度があります。しかし、柔軟性に欠け本人や家族が満足する形で財産を管理することが難しい制度であると指摘されています。
したがって、認知症発症後にお金の問題で困らないためには、発症してからの対応では遅いのです。前もって対策を取り、問題を未然に防ぐことが肝要です。
また、一口にお金の問題といってもその内容は多岐にわたります。どのような財産が存在して、それらをどのように管理・活用・処分するのか、税金対策はどうするのか、もしもの場合はどのような相続をするのか、といった様々な事項を検討する必要があります。
満足の行く財産管理・相続対策を行うためには、本人と家族の間での話し合いや、税理士など専門家への相談が欠かせません。財産管理・相続対策を考えるにあたっては本人の希望を反映させることが最も大切ですが、その実現には思ったよりも多くの時間がかかるものなのです。
満足の行く財産管理・相続対策の実現のためには、できるだけ早く検討をはじめることが大切です。
最近、財産管理・相続に関する認知症対策として注目されているのが家族信託です。
家族信託とは、親などが、信頼できる家族に財産を託し管理してもらい、財産から生じた利益を受け取る仕組みです。
財産を託する人を委託者、託される人を受託者、財産から生じた利益を受け取る人を受益者といいます。
そして、託す財産を信託財産といいます。
家族信託は以下の6つの理由から、認知症対策として有効です。
上記のようにメリットの多い家族信託ですが、デメリットもあります。
家族信託は契約なので、認知症を発症し判断能力が低下すると、信託契約が結べなくなります。
認知症に関してよくある以下2つの質問にお答えします。
認知症を発症した場合、原則として家族信託は利用できません。家族信託は契約であり、契約には判断能力が必要です。
認知症を発症した場合、判断能力が衰えているため、家族信託契約ができないためです。
しかし、認知症を発症した全員が判断能力がないわけではありません。
認知症は段階的に進んでいくので、初期の段階なら判断能力があると判断され、家族信託契約を結ぶことができる場合もあります。
認知症対策として、任意後見制度の利用が考えられます。
任意後見制度は、財産の管理だけでなく、身上保護という入院や介護施設への入居など、生活に必要な法律行為を任意後見人に代理してしてもらう制度です。
家族信託と違い、身上保護ができるのが特徴ですが、家族信託同様本人に判断能力があるうちに契約を結ぶ必要があること、資産の管理方法に制限があるなど、デメリットもあります。
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認知症になると、家族にも様々な問題が起こります。中でも重要なのが本人の財産管理の問題です。
認知症発症後は法定後見制度以外、財産管理の方法はありません。
法定後見制度はその手続きの煩雑さや財産管理に対する制限など、デメリットが大きい制度です。
そのため、判断能力が低下する前に、任意後見制度や家族信託を利用することが重要になってきます。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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