成年後見人をつける手続きの方法は? 流れや必要書類などを解説

成年後見人の手続きをするには? 後見開始までの流れや必要書類などを解説
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成年後見人をつける際は、裁判所にて手続きをする必要があります。

手続き内容が複雑であるため、どのような手続きをすれば良いのかわからない方もいるのではないでしょうか。

本記事では、成年後見人をつける手続きについて解説します。
手続きの流れや必要書類についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

成年後見制度とは?制度の概要を知ろう

成年後見

ここでは、成年後見制度の仕組みや種類、どういった人が成年後見人になれるのかについて見ていきます。

成年後見制度の仕組み

成年後見制度とは、高齢者や障がい者などの意思能力が万全でない人に代わって法律行為を行い、その人の権利や財産を保護する制度のことです。

例えば、1人暮らしの高齢者が悪質な金融業者に騙されて、リスクの高い不要な金融商品を買わされてしまったなどという場合です。
このような場合でも、成年後見制度を活用することで、被害を防げる場合があります。

成年後見制度では、本人に代わって契約などを行う人を「後見人」、後見を受ける本人のことを「被後見人」といいます。また、法定後見制度と任意後見制度の2種類に分けられます。

法定後見制度

意思能力が低下・喪失した人に対して適用される保護制度です。
家庭裁判所への申し立てによって選ばれた法定後見人が、本人の代わりに財産や権利を守る役目を担います。

任意後見制度

本人の意思能力が衰える前に後見契約を結びます。
意思能力が衰えたタイミングで家庭裁判所へ申し立て、契約の効力を発動させることで後見を開始する制度です。

法定後見制度の3つの種類

法定後見制度には以下の3つの種類が存在します。

  • 後見
  • 保佐
  • 補助

どこに当てはまるかによって後見人等に与えられる権限や職務の範囲が異なります。1つづつ確認していきます。

後見:意思決定がほとんどできない人が対象

「後見」とは、精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)によって、意思能力を欠く状態にある場合を指します。

法律行為はもちろん、日常の買い物をはじめとした身の回りのことが1人ではできないといったケースです。

後見開始の審判がなされると法定後見人が選任され、法定後見人は「代理権」と「取消権」を有することになります。

法定後見人は本人に代わって本人の財産を管理できる他、日常行為に関するものを除いて被後見人が行った法律行為を取り消すことが可能です。

例として、本人が不要な不動産を購入するようなことがあっても、その行為を後から取り消すことができます。

保佐:意思能力が著しく不十分な人が対象

保佐とは、精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)によって、意思能力が特に不十分な場合を指します。

簡単なことであれば自分で判断できる能力が残っているものの、法律で定められた一定の行為については第三者の支援を必要とする状態です。

家庭裁判所によって保佐人が選任され、保佐人は重要な法律行為についてのみ「同意権」や「取消権」を有することになります。日常行為については、例え本人が同意なく契約をしても取り消しできません。

また、同意が必要な行為については重要な法律行為以外にも必要が認められれば、家庭裁判所の審判によって追加指定が可能です。

補助:意思能力が不十分な人が対象

補助とは、精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)によって、意思能力が不十分な場合を指します。
大体のことは自分で判断できるけれど、複雑な手続きなどについては支援を必要とする状態です。

被補助人は十分とはいえないにせよ意思能力があるため、補助人の選任においては本人の同意が必要となります。

補助人はあらかじめ家庭裁判所が指定した行為に限り、同意や取消が可能です。
そのため、補助人に選任されただけで「同意権」や「取消権」を有するわけではないことに注意しましょう。

横手

成年後見制度については以下の記事をチェックしてみてください!

成年後見人になれる人・なれない人

成年後見人は認知症や精神上の障害などで意思能力が低下した人を対象に、その人の財産を管理する必要があります。

そのため、民法847条に掲げられた成年後見人の欠格事由に該当しない人でなければ、成年後見人になることができません。

法律で定められた成年後見人になれない人
  1. 未成年者
  2. 後見人を解任された人
  3. 破産者
  4. 後見を受ける人に対し訴訟をしている人、または訴訟をしていた人、その配偶者や直系血族
  5. 行方不明の人

成年後見人等の選任について

成年後見人は家庭裁判所が選任しますが、親族が成年後見人になるよう希望すること自体は可能です。
しかし、希望通り親族が成年後見人に選ばれるとは限りません。

親族が成年後見人になれないまたはなりにくい場合としては、次のパターンが考えられます。

  • 欠格事由に該当する場合
  • 家庭裁判所の判断による場合

民法が定める欠格事由に該当する場合は、親族か否かにかかわらず、そもそも成年後見人にはなれません。

また、親族間で財産管理の意見が対立しているなど一定の事由に該当する場合は、家庭裁判所の判断で第三者が後見人に選ばれる確率が高くなります。

親族が後見人になれないケース

次に該当する親族は、後見人になれません。民法第847条の欠格事由に該当するからです。

  • 未成年者
  • 法定代理人(成年後見人など)を解任された人
  • 破産者
  • 本人に対して訴訟をしている人あるいは、したことがある人(またはこれらの人の配偶者および直系血族)
  • 行方不明である人

成年後見人の責任は重大であり、未成年者が役割を果たすことは困難といえます。

過去の不適切な行為で成年後見人などを解任された人も、再び後見人に選ぶのは適当ではないと考えられるため、後見人の対象から外れます。

破産者は経済的な信用に乏しく、財産管理を行う後見人の仕事にはそぐわないと考えられます。

本人に対して訴訟を提起した人、または訴訟をしている人やその近親者は、本人との利害の対立により、職務を全うできないかもしれません。

行方不明である人は、物理的に後見人の役割を果たすことができないでしょう。

第三者が選任されるケース

第三者がふさわしいと家庭裁判所が判断した場合も、親族は後見人になれません。

次に該当する場合は、第三者が後見人になる可能性が高いとされています。

  • 親族間に意見の対立がある
  • 本人に賃料収入などの事業収入がある
  • 本人の財産が大きい(目安として約1,000万円以上)
  • 本人の財産を運用することを考えている
  • 本人の財産状況が不明確
  • 後見人候補者が自分または自分の親族のために財産を利用する恐れがある
  • 後見人候補者が高齢(目安として70歳以上)

上記に該当する場合は、欠格事由に該当していなくても、親族が後見人に選任される確率は低くなります。仮に親族が後見人に選任されたとしても、成年後見監督人がつく可能性が高いでしょう。

成年後見監督人は後見人の職務を監督する役割を果たし、弁護士や司法書士といった専門家から選ばれるのが一般的です。成年後見監督人がつくと、成年後見監督人に支払う報酬が発生します。

共同後見を活用するケース

成年後見人は複数人立てることができ、後見人が複数の場合を共同後見といます。

共同後見が有効なケースは、次の通りです。

  • 後見人1人あたりの負担を軽減したい場合
  • 監視機能を高めたい場合
  • 財産が複数の地域に分散している場合

後見人を複数選ぶことで、1人あたりの負担が軽減されてミスを防げる上、監視機能が高まり後見人の不正を防止できます。

また、管理対象となる財産が複数の地域に分散している場合、地域ごとに成年後見人を選任することで、移動の手間が省け効率的な財産管理が可能になります。

このように、共同後見を活用すると、後見人の負担軽減、不正の予防、財産管理の効率化などが期待できるのです。

成年後見人の申し立ての手続き方法

成年後見人の申し立ての手続きは、次の流れで進みます。

  1. 必要書類の収集
  2. 申立書類の作成
  3. 家庭裁判所への申し立て
  4. 面接
  5. 審理
  6. 審判

手続きの具体的な方法は、後述の内容を参照してください。

成年後見人の申し立て手続き方法

弁護士

ここでは、成年後見人をつけるための手続き方法について解説します。

法定後見制度と任意後見制度での手続きについて、それぞれ見ていきます。

法定後見制度の申し立てをする方法

成年後見人のうち、法定後見人を選任するためには裁判所での手続きが必要となります。

申し立ては家庭裁判所に対して行います。
申し立てをする家庭裁判所は、本人(被後見人)の住民票がある住所地を管轄する家庭裁判所でなければなりません。

裁判所の管轄区域については裁判所のホームページで確認できるので、事前にチェックしておきましょう。

申し立てができる人は、本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市区町村長、検察官と定められています。

また、申立書に記載された人物が必ずしも選任されるとは限りません。
家庭裁判所の判断によって、弁護士や司法書士が選任されることもあるので注意しましょう。

任意後見制度を開始する方法

任意後見制度では、被後見人の判断能力がしっかりしているうちに自分で任意後見人を選び、任意後見契約を結びます。

任意後見契約を結んだだけでは効力が発生しないため、任意後見制度を開始する際に裁判所での手続きが必要です。

具体的には、被後見人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申し立てを行います。

法定後見制度と同じく、被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所への申し立てが必要です。
申し立てできる人は、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者に限られています。

裁判所への任意後見監督人選任の申し立てを行い、任意後見監督人が選任されると任意後見制度が開始されます。

法定後見制度開始までの手続きの流れ

契約

法定後見人の選任にあたっては、家庭裁判所への申し立てが必要です。

ここでは、申し立て後、実際に後見が開始するまでの流れについて紹介します。

診断書の取得

法定後見制度の申し立てには、医師の診断書が必要です(精神科医に作成してもらう必要なく、かかりつけ医や近隣の内科などで構いません)。

成年後見制度は、意思能力の低下が見られるかどうかが判断の基準となっています。
家庭裁判所は医師が作成した診断書をもとに、精神上の障害の有無や意思能力の低下がどの程度であるかを確認し、後見・保佐・補助の判断を下します。

診断書は所定の書式が定められており、裁判所の後見ポータルサイト内「成年後見制度における鑑定書・診断書作成の手引」から「診断書書式」のダウンロードが可能です。

書類の準備

法定後見制度の申し立てをするにあたっては、主に次のような書類が必要になります。

  • 申立書類一式
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 後見登記をしていない旨の証明書
  • 診断書
  • 本人に関する書類
  • その他、裁判所が求める書類

申立書類の取得方法として以下の3つが挙げられます。

  1. 家庭裁判所のポータルサイトからダウンロード
  2. 家庭裁判所の窓口に出向いて受け取る
  3. 家庭裁判所から郵送してもらう

申立書類をダウンロードする際は、家庭裁判所ごとに様式が異なるため、必ず申し立て先の家庭裁判所から取得するようにしましょう。

申立人(後見人候補者)について必要な書類

申立人(後見人候補者)について必要な書類は、次の通りです。

  • 申立書類一式
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 後見登記がされていない旨の証明書

申立書類一式は、前述の通り家庭裁判所から入手(ダウンロード or 窓口 or 郵送)できます。
戸籍謄本は、原則として、本籍地の市町村役場で入手(窓口 or 郵送)します。
住民票は、住民登録されている市町村役場で入手可能(窓口 or 郵送)です。

後見登記がされていない旨の証明書は、法務局で入手可能です(窓口 or 郵送)が、郵送を選択する場合は、東京法務局後見登録課のみ対応可能です。

本人について必要な書類

成年後見を申し立てるにあたっては、本人(成年被後見人)に関する資料の提出も必要です。

提出する資料の主な内容は、次の通りです。

  • 財産状況を示す書類
  • 健康状態を状況を示す書類
  • 戸籍謄本、住民票(後見人候補者の戸籍謄本などに記載がある場合は、提出不要)

財産状況を示す書類として、収入・支出を明らかにする書面のほか、財産目録も提出するのが一般的です。財産目録とは、本人が所有する財産の詳細を記載した目録です。

財産目録に記載される主な財産は次の通りです。

  • 不動産
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 保険類
  • 相続する予定のある財産
  • マイナスの財産(借金など)

また、健康状態を示す書面には、次の内容が含まれます。

  • 医師の診断書
  • 障害者手帳
  • 介護保険認定書

面接日の予約

書類の準備が整ったら管轄する家庭裁判所に電話で連絡し、面接日の予約へと進みます。
面接の所要時間はおおむね1~2時間程度です。スケジュールに余裕のある日に設定するようにしましょう。

面接は申立人や成年後見人候補者に対して実施され、申し立てにあたっての詳しい事情を聞かれます。

面接日は1週間以上先で、裁判所の状況によっては2週間以上先になることもあるます。申し立て書類の準備に目処が立った時点で、先に予約を入れておくとスムーズです。

家庭裁判所への申し立て

申立書類と必要書類が準備できたら、家庭裁判所へ提出しましょう。
書類は郵送あるいは管轄する家庭裁判所へ持参する方法があります。

申立書類の提出前に書類一式の控えを手元に用意しておくと、面接の際に役に立つでしょう。

なお、申し立て後は家庭裁判所の許可がなければ申し立てを取り下げることはできません。

申立人や後見人候補者、本人との面接

事前に予約をした面接日時に、申し立てを行った家庭裁判所にて面接が実施されます。

面接では申立人や成年後見人候補者に対して申立てに至った経緯や、本人の意思能力、生活状況や財産状況、そして親族の意向などについて確認されます。
所要時間は1~2時間程度です。

面接時には運転免許証をはじめとした本人確認書類が必要となる他、申し立てに使用した印鑑や財産を証明するための預金通帳などが必要となります。忘れないように注意しましょう。

裁判官が本人から直接意見を聞いたほうが良いと判断した場合、本人との面接が行われます。

実施場所は原則として家庭裁判所です。
しかし、本人が入院中あるいは体調不良などの事情で難しい場合には、家庭裁判所の担当者が自宅や入院先へ訪問してくれるので安心です。

本人への面接は、提出された書類の内容から本人の意思能力が全くないと判断できる場合には省略されます。

審理開始

書類の内容や面接をもとに、家庭裁判所において審理が開始されます。

審理では本人の精神鑑定が実施されることもある他、調査官による調査・親族への意向確認などがなされます。この際、必要に応じて裁判所から医師へ鑑定の依頼が行われることもあります。

審理が始まってから終局するまでの期間は裁判所の繁忙や審理内容によって異なるものの、おおよそ2カ月以内となるケースがほとんどです。

審判

審理が終わると、これまでの申立書類や調査結果をもとに審判が下されます。
審判の結果、法定後見が必要と判断された場合は、最も適任と思われる人が法定後見人に選任されます。

審判に不服がある場合には、申立人や利害関係人は審判所が手元に届いてから2週間以内に限り、不服申し立てが可能です。

また、場合によっては法定後見人を監督・指導する法定後見監督人が選任されることもあるので注意しましょう。

申立人・後見人候補者との面接

面接日に、申立人や後見人候補者との面接が実施されます。

面接の担当者は、裁判所が指定した非常勤の裁判所職員です。
面接では、後見の申し立てに至った事情や本人の状況、家族や親族の考えなどが聞かれます。

面接は平日に行われるため、会社員の方は有休を取るなどして休みを確保する必要があります。

本人との面接

裁判官が必要があると判断した場合は、本人との面接も行われます。

面接は家庭裁判所内で行われますが、体調面に問題があるなど本人の外出が難しい場合は、裁判所の担当者が訪問することもあります。

本人との面接は必ず実施されるわけではありません。必要ないと判断された場合、本人との面接は省略されます。

親族への意向確認

親族への意向照会とは、本人の親族に対し、後見の申し立てや後見人候補者の人選について意向を確認する手続きです。

意向照会で親族から反対意見が出た場合、申し立てで指定された後見人候補者が選ばれない可能性が高くなります。

なお、申立時に親族全員の同意書が提出されている場合は、意向照会の確認が省略されることがあります。

医師による鑑定

成年後見の申し立てにおいて、医師の診断書やその他の情報のみでは本人の判断能力が判定できない場合、医師の鑑定が求められることがあります。

鑑定するのは、原則として本人の主治医です。しかし、主治医が鑑定を行えない場合や、主治医の診断に疑義がある場合は、他の医師に鑑定を依頼します。

なお、鑑定の依頼が必要になるケースは申し立ての10%以下とされています。多くのケースでは、診断書やその他の情報のみで判断能力が判定され、鑑定が省略されます。

後見の登記

法定後見制度の開始が決まると、家庭裁判所から法務局に対し後見登記の依頼が行われ、法定後見人の氏名や権限などが記載されます。

後見登記は裁判所が依頼してから2週間程度で完了し、法定後見人に対して登記番号が通知されます。通知された番号をもとに法務局で「登記事項証明書」を取得しましょう。

ここで取得した登記事項証明書は、預金口座の解約をはじめ、本人財産の調査など法定後見人としての仕事を行う際に必要です。

登記事項証明書は最寄りの法務局の本局へ申請して取得しなければならず、支局や出張所では取得できません。
請求できる人も本人や本人の配偶者、本人の四親等内の親族、本人の法定後見人などに限られています。

後見開始

法定後見人に選任されたら、それで終わりというわけではありません。
法定後見人は、本人の財産目録および年間収支予定表を作成し、定められた期限内に提出しなければなりません。

また、法定後見人の仕事はこれら書類の作成だけにとどまらず、金融機関での各種手続きや役場への届出業務など多岐にわたります。

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法定後見制度の申立費用

金額計算

法定後見制度の手続きにあたってはいくらかの費用が必要となります。

ここでは主に2つのケースに分けた上で、それぞれの費用相場について見ていきます。

後見申し立ての費用

後見申し立ての手続きには申立手数料はもちろん、戸籍謄本や住民票、医師の診断書などを取得するために所定の費用がかかります。

主な費用の内訳は以下のとおりです。

  • 申立手数料(収入印紙):800円
  • 郵便切手:3,700円分
  • 戸籍謄本:450円
  • 住民票:300円
  • 登記されていないことの証明書:300円
  • 医師の診断書:5,000~10,000円程度
  • 成年後見人登記手数料(収入印紙):2,600円
  • 医師の鑑定料(家庭裁判所が必要と判断した場合):5~10万円

医師の鑑定料が必要とされるケースは全体の1割にも満たないことから、そこまで心配せずとも大丈夫でしょう。

上記の費用に加え、後見申し立ての手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合には、別途依頼費用が加算されます。

司法書士や弁護士などの専門家に依頼した場合の費用

後見申し立ての手続きを専門家に依頼する場合、15~25万円ほどの費用がかかります。

後見申し立てにあたり、必要書類の収集や書類作成などにそれ相応の労力と時間を要することから、専門家に申し立て手続きの代理を依頼することは珍しくありません。

ただし、手続きが複雑になる場合は費用が高くなることに加え、基本料金以外に書類の取得や交通費などの実費がかかるので注意しましょう。

専門家に手続きを依頼する場合は、なるべく早い時点で相談を済ませておくと、そこから先の流れがスムーズになるだけでなく余計な手間がかかりません。

費用や具体的な代行内容については、前もって各事務所に問い合わせて確認できるので、まずは一度連絡してみることをおすすめします。

任意後見制度開始までの手続きの流れ

専門家

ここでは、任意後見制度開始までの手続きの流れを解説します。

  • 任意後見人の選定
  • 任意後見契約の締結
  • 書類の準備
  • 任意後見監督人選任の申し立て
  • 任意後見監督人選任・後見の登記
  • 後見開始

それぞれの手続きについて、以下で見ていきます。

STEP

任意後見人の選定

まず、任意後見人の選定を行います。
任意後見人には資格が必要ないため、基本的に誰でも任意後見人になれます。

家族や友人などの一般の人、弁護士や司法書士などの専門家など、誰でも依頼することが可能です。
また、1人だけでなく複数人に任意後見人を依頼することもできます。

ただし、以下の人たちは法律により成年後見人になれないと定められているため、注意してください。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
  • 行方の知れない者
  • 不正行為を行うなど任意後見人の任務に適しない者
STEP

任意後見契約の締結

任意後見人を選んだら、任意後見契約を締結します。
どの財産をどのような方法で管理、処分するのかを決めてください。

任意後見契約は長期間にわたり続く場合が多いため、契約内容については慎重に決めることをおすすめします。

内容が決まったら、公正証書にて任意後見契約書を作成します。
公正証書を作るためには、本人と任意後見受任者が一緒に公証役場に行き、公証人に立ち合ってもらうことが必要です。

この際、以下の書類が必要になるため事前に準備しておきましょう。

  • 印鑑証明書+実印(本人・任意後見受任者)
  • 3カ月以内に発行された住民票(本人・任意後見受任者)
  • 3カ月以内に発行された戸籍謄本又は抄本

公正証書を作成すると、公証人が法務局に登記依頼をしてくれます。

2〜3週間経過すると、任意後見についての登記がなされます。

STEP

書類の準備

任意後見契約の締結ができたら、任意後見監督人選任の申し立てに備えて、書類の準備をします。

任意後見監督人選任の申し立てでは、少なくとも以下の書類が必要です。

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)、住民票
  • 親族関係図
  • 任意後見契約公正証書の写し
  • 本人の成年後見等に関する登記事項証明書(法務局・地方法務局の本局で発行するもの)
  • 本人の診断書(家庭裁判所が定める様式のもの)
  • 本人の財産目録
  • 本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預金通帳の写し、保険証券の写しなど)
  • 任意後見監督人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票(※)

※任意後見監督人の候補者が法人の場合には、当該法人の商業登記簿謄本を用意してください。

STEP

任意後見監督人選任の申し立て

本人の判断能力が低下したら、任意後見監督人選任の申し立てを行います。
事前に準備しておいた書類をもって、本人の住所地を管轄する家庭裁判所で申し立ててください。

家庭裁判所に対して選任申し立てを行うと、本人や親族、その他関係者に対して家庭裁判所内で面談が行われます。
面談を通して本人の判断能力の確認や生活状況についての確認をします。

必要な場合には、裁判所が医師に依頼し精神状態を鑑定することもあるため、覚えておくと良いでしょう。

申立権限のある人と申立先を確認する

申立権限のある人と申立先を確認しましょう。

任意後見監督人選任の申し立てができるのは、次に該当する人です。

  • 本人(任意後見契約の本人)
  • 本人の配偶者
  • 本人の四親等内の親族
  • 任意後見受任者(任意後見契約で指定された者)

申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。例えば、本人が東京に住んでいる場合は、東京家庭裁判所が申立先になります。

必要書類を収集する

申立権者と申立先の確認が終わったら、任意後見監督人選任の申し立てに必要な書類を集めましょう。

一般的な必要書類の内容は、次の通りです。

  • 申立書類一式
  • 本人に関する資料(本人の健康状態や経済状況を説明する書類)
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 後見登記がされていない旨の証明書
  • 後見登記事項証明書
  • 診断書
  • 任意後見契約公正証書の写し

申立書類の作成を行う

必要書類をそろえた後は、申立書類の作成を行います。

申立書類の内容は、次の通りです。

  • 申立書
  • 本人の事情説明書
  • 親族関係図
  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 任意後見受任者の事情説明書

本人の事情説明書は、本人の経歴や現在の状況を説明する書類です。親族関係図は、本人とその親族の関係性を図で示したものになります。

その他、書類の書き方で迷うことがあれば、裁判所が公開している記載例を参照してください。

家庭裁判所へ書類を提出する

必要書類がそろい、必要事項の記入を終えたら、裁判所に書類一式を提出します。
提出は持参でも郵送でも構いません。

なお、書類を提出する際は、誤字脱字や記入漏れがないかなど最終のチェックを怠らないようにしましょう。

提出書類の内容が曖昧だったり、ケアレスミスが多かったりすると、受付に時間がかかってしまうかもしれません。

STEP

任意後見監督人選任・後見の登記

家庭裁判所による審理が終わると、任意後見監督人が選任されます。

様々な事情を考慮した上で任意後見監督人の選任が行われます。
そのため、候補者を立てたとしても、弁護士や司法書士などの専門家をはじめ候補者ではない人が任意後見監督人に選任されることもあるでしょう。

本人や親族間で意見が分かれていると、選任されるまでの期間が長くなるため、事前に意見をまとめておくことが重要です。

任意後見監督人が選任されると、申し立て結果についての書面が任意後見人宛てに郵送されます。

任意後見監督人の情報や任意後見開始についての登記申請は、家庭裁判所から法務局に行われるため、任意後見人が登記申請をする必要はありません。

STEP

後見開始

任意後見監督人が選任されると任意後見契約の効力が発生するため、任意後見人の業務もスタートします。

具体的には、財産管理や身上保護に関する法律行為、財産目録の作成など、様々な業務を行います。

任意後見制度の手続きにかかる費用

財布と電卓

任意後見制度の手続きにかかる費用について解説します。

任意後見契約締結時と任意後見監督人選任申し立ての費用について、それぞれ見ていきます。

任意後見契約締結時の費用

任意後見契約締結時には、以下の費用が必要です。

  • 公正証書作成にかかる手数料:1万1,000円×受任者数
  • 正本・謄本の手数料:証書用紙1枚ごとに250円(当事者用各1通、登記嘱託用1通)
  • 登記嘱託手数料:1,400円×受任者数
  • 登記手数料:2,600円×受任者数
  • 登記嘱託書郵送料金:実費

任意後見受任者が複数いる場合、人数分の費用が必要になるものもあるため、事前に確認するようにしてください。

任意後見監督人選任申し立ての費用

任意後見監督人選任申し立てには、以下の費用が必要です。

  • 申立費用:800円
  • 登記費用:1,400円
  • 郵便切手:3,200円(裁判所によって異なる)
  • 鑑定費用:数万~数十万円(必要な場合のみ)

このうち、鑑定費用は鑑定を行う場合のみ必要です。

裁判所での審理を行う上で、本人の精神状態を調べるために鑑定が必要だと判断した場合のみ支払う必要があります。

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申し立てから後見開始までの手続きにかかる時間は?

記入

個々の案件によって多少の違いは生じるものの、申し立てから後見開始までに3カ月~6カ月ほどの時間がかかります。

手続き期間中は預金の引き出しや不動産の売買契約といった、本人に必要な法律行為ができません。
そのため、なるべく早めに準備を整えた上で、申し立てをすることが重要となります。

成年後見制度を利用する場合の注意点

握手

成年後見制度の概要と対象者について理解したところで、成年後見制度を利用する際の注意点についてケース別に見ていきます。

途中でやめられない

成年後見制度は、本人が死亡するまで続くのが原則です。

専門家に支払う報酬が高額だと感じたり、期待したほどの効果が感じられなかったりしても、途中でやめる理由にはなりません。

成年後見を申し立てる際は、本当に必要かどうかよく考えることが大切です。成年後見以外に、最適な選択肢があるかもしれません。

財産や権利を私的に利用してはいけない

親族が後見人等になる場合、例え親族であったとしても被後見人の財産や権利を私的に利用してはいけません。

成年後見人は善管注意義務を負い、あくまでも家庭裁判所から選任された公的な任務であるという自覚を持つことが大切です。

また、他の親族とトラブルにならないよう、成年後見制度についてきちんと理解してもらうように努めるようにしましょう。

第三者が成年後見人になる場合はそれなりの費用がかかる

親族を後見人等にしたいと考える方が多い中、裁判所の判断で第三者が後見人等に任命されるケースもあります。

特に被後見人の財産額が多い場合には、トラブル防止の観点から弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースが多いです。

親族と異なり、第三者が後見人等になった際は、それなりの費用がかかるので注意しましょう。

第三者が選ばれたケースに限らず、一度選任された後見人等を解任することは難しいこともあわせて覚えておくようにしましょう。

成年後見制度の利用手続きに関するよくある質問

指し示す

最後に、成年後見制度の利用手続きに関するよくある質問を紹介します。

  • 成年後見人をつける手続きは自分でもできますか?
  • 成年後見人をつけるメリット・デメリットは何ですか?

それぞれの質問と回答について、以下で見ていきます。

成年後見人をつける手続きは自分でもできますか?

成年後見人をつける手続きは自分でもできます。
しかし、いつでも自分でできるわけではありません。

成年後見制度は、本人の財産を保護するためとはいえ、本人が自分で有効に取引することを制限する制度です。そのため、申し立ての内容を理解し、真意で申し立てをしている場合に限り認められています。

成年後見人をつけるメリット・デメリットは何ですか?

成年後見人をつけるメリットは、成年後見人が本人の預金などの財産を動かせることです。

認知症になってしまうと銀行口座が凍結されてしまうため、生活費や入院費、施設への入居費など、生活に必要なお金であっても本人の口座から引き出せなくなります。

しかし、成年後見人をつければ、用途は限られるものの、本人の預金を引き出すことが可能です。

一方、成年後見人を付けるデメリットは、費用がかかることです。
申立てをするだけでも数万円の費用がかかる他、成年後見人が選任された後も成年後見人に対する報酬を支払う必要があります。

他にも、成年後見制度のデメリットについて知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。

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まとめ:成年後見人をつける手続きは選択した制度で異なる

弁護士

成年後見人を選任する手続きは、法定後見制度と任意後見制度で異なります。
必要な書類や費用も異なるため、成年後見制度をつける手続きを行う際は事前に確認してください。

認知症などにより判断能力を失った方の財産管理には、事前に家族信託により備えておくことが有効です。
家族信託についてお困りのことがある方は、ファミトラまでご相談ください。
ファミトラでは、家族信託の専門家が全面的にサポートしており、様々な疑問にもお答えしています。

無料でご相談いただけますので、気になることがある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

また、家族信託について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。

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この記事を書いた人

小牟田尚子 小牟田尚子 家族信託コーディネーター®

化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。

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