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成年後見制度は「ひどい」と言われることがあります。制度を理解しないままに利用してしまうと、「こんなはずじゃなかった」と感じることもあるでしょう。
この記事では、成年後見制度の概要に触れた上で、成年後見制度がひどいと言われる理由やトラブル事例を紹介します。
その上で、成年後見制度のメリットやトラブルを回避する方法を解説します。成年後見制度の利用を開始する前にぜひご確認ください。
成年後見制度は、認知症や精神上の障害が原因で、判断能力が不十分となった人を保護する制度です。
ここでは、成年後見制度がどのような制度なのかに触れた上で、2種類の成年後見制度の解説をします。
成年後見制度は、判断能力が不十分な人を保護するため、本人に代わって財産の管理や法律行為を行う後見人を選任する制度です。
判断能力が低下してしまった人は、財産を適切に管理することが難しく、ときには自分にとって不利益な契約をしてしまう可能性もあります。
後見人は、本人の財産を適切に管理し、不利益な契約は取り消すなどして、本人を保護する役割を果たします。
成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度の2種類があります。それぞれの概要を見ていきましょう。
任意後見制度は、本人の判断能力に問題がないうちに、任意後見人や委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておく制度です。
任意後見の契約を締結しておくと、本人の判断能力が不十分になった後で、裁判所に任意後見監督人を選任してもらい、その監督のもとで任意後見人が本人に代わって事務を行えるようになります。
成年後見制度は、判断能力が不十分な人を保護するため、家庭裁判所の審判で後見人を選任する制度です。
成年後見制度では、本人の判断能力に応じて、後見人、保佐人、補助人のいずれかが選任されます。
法定後見制度は、すでに判断能力が低下してしまった人を保護する制度のため、本人の判断能力が正常なうちには利用できません。
後見人の選任についても、家族が裁判所に希望を伝えることはできますが、あくまでも裁判所による選任のため、希望通りになるとは限りません。
任意後見制度と法定後見制度の違いをわかりやすく比較してみました。
任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに契約を締結し、判断能力の低下に備えるための制度です。
一方で、法定後見制度は、本人の判断能力が不十分になった後で、家庭裁判所の審判により開始されます。
任意後見制度では、本人の意思で後見人や委任の範囲を決められますが、法定後見制度は、本人の判断能力が低下してから利用するため、後見人は裁判所の判断によって選任されます。
ここでは、成年後見制度がひどいと言われる理由について、成年後見制度が抱える7つの問題点を解説します。
法定後見の申立書には、成年後見人の候補者を記載する欄があります。家族が後見人となることを希望する場合には、候補者欄に家族を記載して裁判所に希望を伝えられるのです。
しかし、候補者は、裁判所が後見人を選任する際の1つの参考となるに過ぎません。裁判所は、本人の状態や財産状況を考慮して、適切と考えられる後見人を選任します。
実際の運用では、親族などが成年後見人に選任されるケースと、弁護士や司法書士が選任されるケースの割合は、およそ2:8となっており、親族が成年後見人に選任されるケースは少ないです。
特に、本人の財産が多いケースでは、弁護士や司法書士が成年後見人として選任されるケースがほとんどです。
法定後見制度では、一度申し立てを行うと基本的に取り下げは認められません。
後見人が選任された後も、後見人に何らかの義務違反がない限りは、本人が亡くなるまで解任できない状態になります。
つまり、後見開始の申し立てをしてしまうと、希望した後見人が選ばれず、選任された後見人が気に入らない場合でも、後見人を変更することはできなくなってしまいます。
後見人選任の申し立てを自分で行う場合には、申し立て自体は1万円ほどの実費で足ります。
しかし、手続きの中で本人の判断能力を判定するための鑑定手続きが必要となってしまった場合や、専門家に手続きを依頼する場合には、数十万円の費用が必要です。
さらに、弁護士や司法書士が後見人に選任されると、本人の財産額に応じて月々に数万円の報酬が発生します。
なお、親族が後見人に選任されたケースでも報酬を請求することはできますが、請求しないことが多いです。
月々に数万円であっても、本人が亡くなるまでの期間ではかなりの金額になる可能性があります。
後見人が選任されると、本人の財産は後見人が管理し、本人のため以外には財産を支出できなくなります。
つまり、本人の生活費、医療費、介護費用など以外には、財産を自由に動かすことができなくなるのです。
家族信託を活用すると、本人の財産を資産運用に充てることもできますが、後見制度では、資産運用は認められません。
後見制度を利用していると、本人の財産を自由に動かせなくなるので、相続税対策のための生前贈与も難しくなります。
後見制度は、本人を保護するための制度です。
相続税対策を目的とした生前贈与は相続人にとって利益があるだけで本人の利益には繋がらないため、後見制度の下では、基本的に生前贈与は認められません。
成年後見制度では、後見人による財産の使い込みなどの不正が多いことも問題視されています。
後見人による不正は、親族が後見人となるケースで特に多いです。「親のお金だから」「相続したら自分のお金になる」などと軽い気持ちでお金を使い込んでしまうことが多くあります。
もちろん、専門家が後見人に選任されたケースでも不正が問題となることはあります。しかし、親族が後見人のケースと比べると多くはありません。
参考:最高裁判所「後見人等による不正事例」
成年後見制度は、後見人に選任された親族と、後見人の不正を疑う親族との間でのトラブルの原因になることもあります。
成年後見を利用せずに親族が本人の財産を管理しているケースで、他の親族が相談なく成年後見の申し立てをすることで、トラブルに繋がることも少なくありません。
成年後見は、本人の財産を取り扱う問題なので、相続を見据えての親族間のトラブルの原因となることがあるのです。
ここでは、ひどいと言われる成年後見制度で、実際にどのようなトラブル事例があるのかを紹介していきます。
法定後見の申し立ては、家族であれば単独で行うことができます。
兄弟のうち1人が勝手に後見人の選任を進めると、知らず知らずのうちに後見人が選任される可能性があるのです。
自分と意見の対立する兄弟が希望する後見人が選任されてしまったようなケースでは、施設に入居している親との面会を拒否させるなど、後見制度を悪用した嫌がらせを受ける可能性があります。
後見人が本人の財産を使い込むのは、典型的なトラブル事例です。
特に、本人と同居する子どもが後見人に選任されたようなケースでは、お金を区別して管理する意識も甘く、ついつい本人のお金を使い込んでしまうこともあるでしょう。
後見人としての義務をしっかりと果たせる人が後見人に選任されないと、財産の使い込みによるトラブルを防止するのは困難です。
後見人が選任されると、後見人は本人の財産を明確に区別して管理します。例えば、夫に後見人が選任されると、夫の年金は後見人が管理することになります。
そのため、妻が生活費として年金を使用することができなくなってしまいます。
年金だけでなく、夫名義の預貯金も後見人の管理下に置かれるため、妻に自分名義の財産がない場合には、苦しい生活を強いられる結果にもなり兼ねません。
法定後見人は、本人の財産から毎月の報酬を受け取ります。ところが、後見人の中には、報酬を受け取りながら、後見人としての仕事をまともにしない人もいます。
後見人の仕事には、財産の帳簿作成、不動産の管理などが挙げられます。
しかし、仕事をしっかり行っているかの確認が難しく、報酬だけを受け取り続ける後見人を簡単には解任できないという点も問題です。
後見人を一度つけてしまうと解任するのは簡単ではありません。解任に値するような明確な理由がない場合、家庭裁判所は認めないため、解任することはほぼ困難といえます。
実際にお問い合わせいただく内容もご確認ください。
裁判所によって選任された後見人や後見監督人には、月々の報酬を支払う必要があります。
本人が多額の資産を所有している場合などは、月々の報酬が高額になるケースも少なくありません。
後見人への報酬は、本人が亡くなるまで支払い続けなければならないため、家族が望まないまま選任された後見人や後見監督人に、多額の報酬を支払い続けなければならないというトラブルが起こっています。
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成年後見制度には、ひどい点だけでなくメリットも存在しています。ここでは、成年後見制度を活用するメリットを3つ解説します。
成年後見人を選任すると、現金や預貯金、不動産の管理など煩雑な財産管理を全て任せられます。
大きな財産を一部の相続人が管理していると、他の相続人が不信感を感じることもあります。専門家の成年後見人が選任されていると、その心配も防げるでしょう。
成年後見人による財産の使い込みが問題になることはありますが、全体の件数から見ると成年後見人が不正を働くケースは少ないです。
財産の管理を安心して任せられるのは、成年後見制度を利用するメリットの1つです。
成年後見制度を利用すると、本人が締結してしまった不利益な契約を取り消すことができます。
認知症や精神障害で判断能力が低下すると、不必要な高額商品を購入したり、サービスの申し込みをしてしまったりする可能性があります。
判断能力が低下した状態では、本人が契約を取り消すのは難しいですが、成年後見制度を利用すると、成年後見人が本人に代わって契約を取り消すことができるのです。
判断能力が低下した本人の財産を同居の親族が管理しているケースでは、お金の管理を厳重にするのが難しく、親族がお金を使い込んでしまう危険もあります。
成年後見制度を利用すると、本人の財産は家庭裁判所が選任する後見人の管理下に置かれるため、親族が勝手にお金を使うことができなくなります。
親族による使い込みの危険がある場合には、成年後見制度の利用が効果的です。
成年後見制度のトラブルを回避するには、家族信託や任意後見制度など他の制度を併せて利用するのが効果的です。
成年後見制度のトラブルの原因として多いのは、選任された後見人が仕事をしなかったり、お金を使い込んだりすることや、財産管理の自由度が失われてしまうことです。
家族信託を利用すると、本人が信頼する親族に財産の管理を任せられるので、仕事をしない、お金を使い込むなどの問題を避けられる可能性が高いです。
財産管理の方法も自由に設定できるので、本人の判断能力が低下した後も、本人の判断能力が正常であったときの判断に従って自由な財産管理ができます。
本人の判断能力が低下する前に家族信託を利用しておくと、成年後見制度を利用したときに起こりうるトラブルの多くを回避できます。
家族信託は、本人が信頼する親族による自由な財産管理ができる便利な制度ですが、本人の身上監護ができないという問題もあります。
家族信託と併せて任意後見制度も利用すると、介護サービスの利用や福祉施設への入居手続きといった身上監護もできるようになります。
これにより、突然親と面会できなくなるなど、身上監護にかかわるトラブルを回避できるでしょう。
家族信託とは、本人(委託者)が所有する財産の管理を信頼できる家族(受託者)に託して、そこから生まれる利益を受益者が受け取る信託契約のことです。
家族信託は、次の3者がかかわる契約です。
家族信託の契約にかかわる3者 | |
---|---|
委託者 | 財産を信託する人 |
受託者 | 財産の管理・処分を託される人 |
受益者 | 財産から生まれる利益を受ける人 |
家族信託では委託者=受益者となるケースも多い傾向にあり、その場合は二者間で契約が締結されます。
例えば、子どもが親の収益物件や預貯金を管理して、そこから生まれる収益は親が受け取るといったケースが家族信託の典型的な例です。
家族信託と成年後見制度での大きな違いは、次の3つです。
家族信託は、本人の判断能力に問題のないうちに締結する契約ですが、成年後見制度は、本人の判断能力が低下した後で、家庭裁判所への申し立てを行います。
家族信託では、本人が信頼できる家族に財産の管理を託します。一方、成年後見制度では、家庭裁判所が財産を管理する後見人を選任するため、選任について本人の意思は反映されません。
家族信託の受託者は、信託契約の内容に従って自由に財産を管理できますが、本人の身上監護のための契約はできません。
成年後見制度の後見人は、あくまで本人のために財産を管理するため、財産管理の柔軟性はありませんが、本人の身上監護にかかわる契約を行えます。
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ここでは、成年後見制度に関するよくある質問に回答します。
後見人を自由に解任することはできません。
後見人が仕事をしない、財産を使い込むなどの「不正な行為、著しく不行跡その他後見の任務に適しない」事実がある場合には、家庭裁判所に後見人の解任請求を申し立てることができます。
後見人と親族との相性が悪く、気に入らないといった理由では解任することはできません。
成年後見制度や家族信託を使わないと、本人にかかわる契約を締結するのが難しくなります。
例えば、本人の財産で不動産を購入したり、保険に加入したりしたい場合でも、本人に正常な判断能力がなければ契約を断られる可能性が高いです。
契約の相手次第では、後見人なしでも契約手続きを進められますが、選択肢は狭くなってしまうでしょう。
さらに、本人が不利益な契約を締結してしまった場合についても、契約を取り消すのが難しくなるという問題点もあります。
成年後見制度は、ひどいと言われることもありますが、特徴を理解して利用すれば有用な制度です。
成年後見制度の特徴をよく理解し、家族信託や任意後見制度なども併用することで、本人の財産を適切に管理することが可能になるでしょう。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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