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任意後見制度では、任意後見監督人と呼ばれる人が裁判所から選任されます。
任意後見監督人には報酬を支払う必要があり、その金額が気になる方もいるでしょう。
そこで、本記事は任意後見監督人の報酬について解説します。
他にも、任意後見監督人の職務内容や選任方法についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
そもそも、任意後見監督人とはどのような人を指すのでしょうか。
成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があり、それぞれに任意後見監督人と成年後見監督人が置かれることがあります。
そこで、それぞれの制度における後見監督人の違いについて解説します。
任意後見監督人とは、任意後見制度で後見人を監督する人のことです。
任意後見制度は、自身の判断能力が低下することに備え、あらかじめ財産管理や身上保護についての契約を結んでおく制度です。財産管理や身上保護を行う任意後見人は自由に決められます。
任意後見制度では、任意後見人が権限の中で後見を実施しているのか、本人の財産を悪用していないか監督する必要があります。
そこで、任意後見制度では、任意後見監督人が裁判所により必ず選任されることになっているのです。
任意後見監督人は、任意後見制度において必ずつきますが、法定後見制度では後見監督人が必ずつくわけではありません。
法定後見制度では成年後見人を裁判所が選任するため、裁判所が必要ないと判断すれば後見監督人はつかないのです。
しかし、法定後見制度の利用を申し立てる際に後見監督人を付けてほしい旨を伝えたり、裁判所が必要だと判断したりすると、後見監督人が選任されます。
役割としては、成年後見人を監督する役割であり、その点は任意後見監督人と同じです。
任意後見監督人に支払う報酬の相場はどのくらいなのでしょうか。
管理財産額によって報酬相場が異なるため、管理財産額が5,000万円以下の場合と5,000万円を超える場合に分けて解説します。
管理財産額が5,000万円以下の場合、裁判所が公表している任意後見監督人の報酬相場は月額1〜2万円です。
年間で見ると、12〜24万円が任意後見監督人に支払う報酬相場だといえます。
もちろん、相場であるため、多少上下することは考えられます。しかし、裁判所が公表している相場であり、任意後見監督人の報酬を決めるのは裁判所であるため、相場から大きく外れることは考えづらいでしょう。
管理財産額が5,000万円を超える場合、裁判所が公表している任意後見監督人の報酬相場は月額2.5〜3万円です。
年間で見ると、30〜36万円が任意後見監督人に支払う報酬相場だといえます。
管理財産額が5,000万円以下の場合と同じく、相場から大きく外れることは考えづらいでしょう。
任意後見監督人の報酬は、管理を依頼している本人の口座から支払います。
先ほど、任意後見監督人の報酬相場を紹介しましたが、最終的には、本人の財産額や監督の事務内容、任意後見人に支払う報酬などを考慮した上で裁判所が決定します。
そのため、後見監督人に支払う報酬が生活に影響を及ぼすような金額にはなりにくいといえるでしょう。
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では、実際に任意後見監督人は、どのような職務内容を行っているのでしょうか。
任意後見監督人の3つの職務内容について解説します。
任意後見監督人の1番大きな役割は、任意後見人の事務の監督と家庭裁判所への定期的な報告です。
任意後見監督人は、任意後見人に対していつでも事務の報告を求めることができるだけでなく、自ら任意後見人の事務や本人の財産についての調査もできます。
また、任意後見人から受けた報告内容や自ら調査した内容の家庭裁判所に対する定期的な報告も、役割の一つです。
なお、家庭裁判所が事務について確認したい場合は、任意後見監督人を通して行われることになります。まさに家庭裁判所との窓口の役割を果たしているといえるでしょう。
任意後見監督人は急迫の事情が生じた場合に、必要な処分を行う必要があります。
例えば、任意後見人が体調を崩すなどして後見の事務を行えない場合には、任意後見人の代理権の範囲内で、本人保護のために必要な事務をしなければなりません。
急迫の事情がある場合の必要な処分については、任意ではなく必ず行わなければいけません。いざというときには、すぐに対応できるように準備しておくことが大切です。
本人と任意後見人の間に利益相反行為が生じた際の本人の代理も、任意後見監督人の職務内容です。
利益相反行為とは、簡単に言えば本人が得る利益と任意後見人が得る利益がぶつかってしまう行為のことです。
例えば、本人と任意後見人が兄弟である場合に親が亡くなり相続が発生すると、本人と任意後見人は親の遺産をお互いに分配することになります。
その際、相続の取り分は片方が多くなれば、もう片方は少なくなってしまうため、まさに利益がぶつかってしまうのです。
この場合、任意後見監督人が本人の代理をして、任意後見人との交渉を行うことで、対等な関係で相続の取り分を決められるでしょう。
前述の通り、任意後見監督人は裁判所によって選任されますが、どのような過程を経て選ばれるのでしょうか。
手続きの方法や注意点について解説します。
任意後見制度では、本人の判断能力があるうちに契約を結びます。実際に契約の効力が生じるのは判断能力が低下し、任意後見監督人が選任されたタイミングです。
そのため、本人の判断能力が低下したと判断されたタイミングで、本人の家族等が家庭裁判所に「任意後見監督人選任の申し立て」をすることで、家庭裁判所から選任されます。
なお、申し立てによらず裁判所が職権にて任意後見監督人を選ぶ場合は、申し立て手続きは不要です。
任意後見監督人選任の申し立てで、申し立てを行うことができる人は以下の3パターンに限定されています。
原則として、これらの人しか申し立てができないため、注意してください。
任意後見監督人選任の申し立てでは、以下の書類が必要です。
家庭裁判所で受け取れる書類もあれば、役所や法務局で入手しなければいけない書類もあります。準備には時間がかかることが想定されるため、早めに準備しておくと良いでしょう。
任意後見監督人選任の申し立てでは、以下の費用が必要です。
申し立て用の収入印紙と登記申請用の収入印紙は、どの家庭裁判所でも同じ金額ですが、連絡用切手代は家庭裁判所により異なるため、事前に確認が必要です。
また、本人の判断能力を調査するために、鑑定が必要であれば、別途、鑑定費用を10〜20万円支払う必要があることも理解しておきましょう。
任意後見監督人選任の申し立てでは、候補者を推薦できます。
しかし、誰を任意後見監督人にするのかは裁判所により決定されるため、推薦した候補者が必ずしも監督人に選任されるとは限りません。
もし、推薦した候補者が選任されなくても、申し立てを取り下げることはできません。その点を理解した上で、任意後見監督人選任を申し立てるようにしましょう。
後見監督人には誰でもなれるわけではありません。
民法では、以下の人を後見監督人になれない人として定めています。
任意後見監督人には、第三者の専門家が選ばれることが多くあります。
大きな理由としては、任意後見人に親族を選任するよりも、専門家を選任したほうが業務を適切に実行してくれる安心感があるからです。
親族が任意後見監督人になると必ず不正をするわけではありません。しかし、専門家を選任したほうがトラブルが少なくなることは明らかであるため、専門家が選ばれることが多くなります。
また、本人と親交のある専門家は私情が挟まってしまう可能性もあるため、第三者の専門家が選ばれるのです。
先ほども触れましたが、任意後見監督人選任の審判について、不服の申し立てはできません。
推薦した候補者が選ばれない場合や、選任された候補者が見ず知らずの人で信頼に値しないと感じる場合もあるでしょう。
しかし、不服の申し立てはできないため、選任された任意後見監督人を信頼して、利用するしかありません。
それが難しいと感じる場合は、任意後見制度の利用を慎重に検討することをおすすめします。
任意後見監督人が職務をまっとうしない、財産の利用を必要以上に制限するなどの場合、任意後見監督人は解任できるのかについて解説します。
民法846条および任意後見契約に関する法律7条4項によると、任意後見監督人の解任は家庭裁判所が行うことになっています。
また、任意後見監督人を解任できるのは、不正な行為や著しい不行跡、後見の任務に適さないと判断される場合に限ります。そのため、後見監督人が気に入らないという理由だけでは解任できません。
原則として任意後見監督人は解任できないと考えるのがよいでしょう。
解任請求ができる人も定められており、以下の人のみに解任請求が認められています。
しかし、あくまでも解任請求ができるだけです。解任するかどうかを決めるのは家庭裁判所であるため、希望通りには進まない可能性があることを理解しておきましょう。
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一方、諸事情により任意後見監督人を辞任したいと考える場合もあるでしょう。
任意後見監督人の病気や年齢によるものなど、やむを得ない事情があれば、辞任も認められます。しかし、任意後見監督人の辞任には家庭裁判所の許可が必要であり、解任と同様、容易には認められません。
勝手な辞任が許されると、後見人を監督する人がいなくなり、後見人が不正利用を繰り返してしまう可能性があります。
そのため、やむを得ない事情がある場合のみ、家庭裁判所の許可を得ることで任意後見監督人を辞任できます。
任意後見制度にはデメリットもあるため、利用するのが不安と感じる方もいるかもしれません。
その場合は、家族信託という選択も視野に入れることをおすすめします。
家族信託がどのような制度なのか、任意後見制度とはどのような違いがあるのかを解説します。
家族信託とは信託契約を結ぶことで、信頼できる人に財産管理を任せる制度です。
家族信託の当事者には、財産管理を依頼する委託者、財産管理をする受託者、財産管理により発生した利益を得る受益者の3者がいます。
任意後見制度と同じく、判断能力が低下する前にあらかじめ契約を結ぶことで、認知症などにより判断能力が低下しても安心して財産管理できる制度です。
家族信託について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
家族信託のメリットは、任意後見制度よりも柔軟に財産管理できる点にあります。
任意後見制度ではできない相続対策や資産運用、死後の財産管理なども、家族信託では可能です。
また、遺言書ではできない次世代以降への資産承継の内容決定が可能である点も大きなメリットに挙げられるでしょう。
一方、家族信託では信託不動産に関する損失が発生してもなかったものとみなされるため損益通算ができず、税負担を軽くできません。
また、孫の代まで相続順位を決められるメリットがあると解説しましたが、その一方、当事者は長期間信託契約に拘束されてしまい、自由な相続や財産利用ができなくなる可能性もあります。
このように、任意後見制度の代替手段になりうる制度ですが、メリット・デメリットの両方があるため、必ず理解してから利用しましょう。
任意後見制度と家族信託の1番の違いは、効力発生のタイミングです。
任意後見制度も家族信託も、判断能力があるうちに契約を結ぶ点は同じです。しかし、任意後見制度は判断能力が低下してから効力が発生する一方、家族信託では契約を結んだときから効力が発生します。
任意後見制度では、効力を発生させるためには家庭裁判所に申し立てをしなければいけませんが、家族信託ではその必要がなく、そもそも家庭裁判所が関わることもありません。
家族信託では家庭裁判所が関与しないため、親族間のトラブルが起きる可能性もあります。しかし、自分が信頼している受託者を選び、契約を締結したらすぐに利用できるメリットもあります。
最後に、任意後見監督人に関するよくある質問を2つ紹介します。
任意後見監督人になる上で、法律上資格が必要になるわけではありません。
しかし、民法843条4項および任意後見契約に関する法律7条4項では、以下の5つの点を考慮しなければいけないと定められています。
実際、任意後見監督人はほとんど仕事をしないのにもかかわらず、不当な報酬を請求するケースは多くあります。
しかし、その多くが一部のみの支払いで終わるか、払わないで終わるかのどちらかであるため、必ず支払わなければならないわけではありません。
ご自身でよく判断し、支払うか支払わないかの決断をすると良いでしょう。
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任意後見制度は、判断能力が低下した人の財産管理や身上保護ができる便利な制度です。
しかし、任意後見監督人への報酬が高い場合があるなど、デメリットがあることも事実です。
任意後見制度を検討できる状態にあるならば、他にも多くの選択肢が検討できるため、様々な制度を比較した上で、最良の選択をしてください。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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