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成年後見制度の利用申し立ての際に「本人情報シート」が必要になります。
しかし、本人情報シートがどのようなものかご存じない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、本人情報シートについて、役割や作成者、具体的な書き方などについて解説します。
後半では成年後見制度に代わる方法として「家族信託」の紹介や本人情報シートに関するQ&Aも掲載していますので、ぜひ最後までお読みください。
成年後見制度利用の申し立てをする際、鑑定の要否を判断するために医師の診断書が必要となります。
医師は本人の生活状況を逐一把握することができず、医学的検査や本人への問診、家族への聞き取りなどを基に診断書を書いていました。
各医師はできる限り正確な診断書を書くように務めますが、資料が不十分であるという指摘がなされることも多くありました。
そこで、本人の生活を支える福祉関係者などが、本人の生活状況などについての客観的な情報を医師に伝えるために、本人情報シートが用いられるようになったのです。
客観性が求められる書類であるため、本人の家族が書くことはできず、社会福祉士や精神保健福祉士、相談員などの福祉関係者によって書かれることが想定されています。
成年後見制度がどのような制度か詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
本人情報活用シートの活用が想定される場面として、以下の4つが挙げられます。
それぞれの場面について、以下で詳しく見ていきましょう。
前述した本人情報シートが用いられるようになった経緯からも明らかなとおり、本人情報シートは医師の診断の補助資料としての役割がメインです。
医師がわからない日常生活の様子などを本人情報シートに記入することで、成年後見制度を申し立てる際に必要な診断書をより客観的な証拠に基づいて書けるようになります。
成年後見制度の申し立てで必要な医師の診断書について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
本人情報シートを記入することで、本人が日常生活でどのような悩みや課題を抱えているのかが明らかになります。
本人が抱えている悩みや課題によっては、判断能力が不十分な方の生活を支援する成年後見制度では解決できない可能性もあります。
そのような場合に成年後見制度の申し立てでお金と時間を無駄にするのはもったいないため、成年後見制度の利用の適否を判断する場合にも有効的に活用できるでしょう。
家庭裁判所による成年後見制度の審査では、成年後見人の選任もあわせて行われます。
本人の判断能力の程度や財産状況などから、誰が成年後見人に適しているのかを判断するため、本人情報シートが参考資料として活用できます。
後見を始めた後、本人の生活状況などは変化していきます。
その際に本人情報シートを確認することで、今までの支援方法を検証し、今後の方針を見直すなど、支援の在り方を検討することにも有効的に活用できます。
このように、成年後見制度の申し立てに使うのみならず、成年後見制度を開始してからも使用できる機会があるため、本人情報シートを書いておくと良いでしょう。
ここでは、本人情報シートの記入者について解説します。
誰が記入するのか、本人や家族は記入できるのかについて見ていきましょう。
本人情報シートを作成するのは、本人の生活状況を把握しているケアマネなどの福祉関係者です。
これは、本人情報シートが客観性を重視する書類であることが大きく影響しています。
なお、福祉関係者が本人情報シートを記入する場合、費用の支払いが必要な時とそうでない時があるため、事前にどのような取り扱いをするのかを確認しておくことをおすすめします。
「本人の生活状況を把握しているなら、本人や家族でも良いのではないか?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、本人情報シートを本人や家族が記入することはできないのです。
先ほども触れましたが、本人情報シートは医師の診断の補助資料として用いられるため、客観性が求められます。
本人や家族が記入すると客観性に欠く内容が含まれることが容易に想像できるため、本人や家族ではなく福祉関係者が記入することになっています。
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ここでは、本人情報シートの項目と書き方について解説します。
本人情報シートには、以下の6つの項目について記載する欄があります。
それぞれの項目について、どのように書けばよいのかを以下で解説します。
「本人の生活場所について」には、以下の2つの項目が用意されているため、該当箇所をチェックします。
自宅で生活している場合は福祉サービス利用の有無も、施設・病院で生活している場合は名称と住所を記入する欄があるため、あわせて記入をしてください。
「福祉に関する認定の有無等について」には、以下の4つの項目が用意されているため、該当する項目にチェックをし、必要項目に記入をします。
なお、認定日を記入する欄には、最終判定年月を記入するようにしてください。
「本人の日常・社会生活の状況について」には、以下の6つの項目があります。
それぞれの項目ごとの書き方を以下で解説します。
「身体機能・生活機能について」では、食事や入浴、着替え、移動などの日常生活に関する支援について、以下の3つの項目のうち該当する箇所にチェックをしてください。
今後、支援の方法や内容を変更する場合には、その内容について自由記載欄に記入します。
例えば、今までは支援の必要がなかったけれど、移動だけは支援が必要になる場合などは、その旨を自由記載欄に書いてください。
「認知機能について」では、ア〜エの4項目が用意されており、それぞれにおいて該当する項目にチェックをします。
ここでの「日常的な行為」とは、福祉関係者とのやりとりなど、本人の生活環境の中で行われるものが想定されています。
なお、冒頭の「日によって変動することがあるか」で「あり」と答えた場合は、良い状態を念頭において回答してください。
「日常・社会生活上支障となる精神・行動障害について」には、以下の4つの項目があるため、該当する項目にチェックをします。
支障となる行動があり、生活をする上で支援が必要な場合は、自由記載欄に行動の内容や頻度、必要な支援方法を具体的に記入してください。
「社会・地域との交流頻度について」では、以下の3つの項目から該当するものを選んでチェックをします。
一般的な地域の活動の参加のみならず、介護サービスの利用や買い物、家族や友人が家に来訪した場合も回数に含めて回答してください。
「日常の意思決定について」には、以下の4つの項目があります。
日常的に行うテレビ番組や献立、服の選択ができるが、治療方法の決定には支援を必要とする場合は「特別な場合を除いてできる」にチェックをします。
日常的に行うテレビ番組や献立、服の選択ができる時とできない時がある場合は「日常的に困難」にチェックをしてください。
「金銭の管理について」には、以下の3つの項目があるため、該当する項目にチェックをしてください。
例えば、通帳を預かってもらっているものの生活費は自分で管理している場合などは「親族又は第三者の支援を受けて本人が管理している」に当てはまります。
「本人にとって重要な意思決定が必要となる日常・社会生活上の課題」には、自由記載欄のみ設けられています。
現在のみならず、今後本人が直面するであろう課題も記載してください。
具体例を挙げると、介護・支援体制の変更や遺産分割手続きについての検討などが挙げられます。
「家庭裁判所に成年後見制度の利用について申立てをすることに関する本人の認識」については、以下の3つの項目から当てはまる項目にチェックをします。
上記項目を選択した理由や制度利用に本人が反対しているなどの事情がある場合、可能な範囲で記入してください。
「本人にとって望ましいと考えられる日常・社会生活上の課題への対応策」については、どのような対応が望ましいのか、意見があれば記入してください。
対応策に応じて、成年後見人に適している人が異なる場合もあり、成年後見人の選任にも影響を及ぼす可能性があるため、可能であれば記入しておくと良いでしょう。
成年後見制度の利用申し立てをする前に、家族信託の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
成年後見制度のデメリットや家族信託が向いているケースについて、見ていきましょう。
家族信託の詳しい説明や成年後見制度を利用せずに財産管理を行う方法については、以下の記事で解説していますので、興味のある方はあわせてお読みください。
成年後見制度にはメリットのみならず、デメリットも多くあります。
例えば、成年後見制度のデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
成年後見制度の手続きはかなり複雑で、専門家の力を頼ることが一般的です。
専門家に依頼するとその分費用も多くかかるため、費用も手間も多くかかることになります。
また、積極的な財産管理ができないため、資産運用や相続税対策のための生前贈与などができません。
くわえて、原則として成年後見人を途中で解任することができません。
相性が悪くても被後見人が亡くなるか判断能力が正常に戻るまでは、同じ成年後見人が財産管理をすることになります。
成年後見制度には、他にも多くのデメリットがあるため、以下の記事もあわせてお読みください。
家族信託とは、本人が信頼している親族に財産管理を任せる仕組みのことです。
家族信託が向いているのは、主に以下のようなケースの場合です。
家族信託は成年後見制度よりも幅広く財産管理が認められているため、資産運用や生前贈与も可能です。
そのため、柔軟な財産管理をしたい人には家族信託をおすすめします。
また、成年後見制度では裁判所による審理が必要であり、成年後見人には専門家などの第三者が選ばれる可能性もあるため、家族以外の人も関わります。
そのため、財産状況を知られたくない、信頼できる身内だけで財産管理を済ませたいなどの気持ちがある方は、家族信託がおすすめです。
くわえて、成年後見制度で専門家に成年後見人を依頼する場合、毎月数万円の報酬を支払う必要がありますが、家族信託では報酬の支払いは必須ではありません。
そのため、ランニングコストを安く抑えて財産管理をしたい方にも、家族信託が向いています。
最後に、成年後見制度の本人情報シートに関するよくある質問を3つ紹介します。
それぞれの質問に対する回答を見ていきましょう。
本人情報シートがなくても医師は診断書を作成できるため、本人情報シートの提出は必須ではありません。
しかし、本人情報シートがあることで医師が診断書を書きやすくなり、客観的な情報を基に審理を受けやすくなります。
そのため、日頃から支援してくれている福祉関係者がいない場合でも、各市町村の社会福祉協議会や地域包括支援センター等に相談し、可能な限り本人情報シートを作成、提出することをおすすめします。
本人情報シートの記入者は、介護福祉の有資格者でなくても問題ありません。
社会福祉士、精神保健福祉士などの有資格者や介護支援専門員、相談支援専門員、病院・施設の相談員、さらには地域包括支援センターや社会福祉協議会等が運営する権利擁護支援センターの職員も作成できます。
客観的な情報を記載できれば良いため、資格にこだわらず日頃から生活を支援してくれている方に頼むことをおすすめします。
本人情報シートの作成者の氏名は、個人の名前でなくても大丈夫です。
例えば、所属している会社や組織の名前などでも問題ありません。
しかし、裁判所などが問い合わせできるようにするため、問い合わせ先がわからないような名称を記入するのは避けておきましょう。
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成年後見制度の利用申し立てに必要な本人情報シートは、本人の生活を支援している福祉関係者が作成します。
本人の生活を客観的に記載することで、医師が診断書を作成する際の重要な補助書類として活用できます。
しかし、成年後見制度にはデメリットが多いため、家族信託の利用も検討することがおすすめです。
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東証一部上場の企業で10年以上に渡り法人営業・財務・経営企画等の様々な業務に従事。司法書士資格を取得する中で家族信託の将来性を感じ、2021年6月ファミトラに入社。お客様からの相談対応や家族信託の組成支援の他、信託監督人として契約後の信託財産管理のサポートを担当。
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