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相続で揉めると大変です。
解決にあたり、お金や時間がかかるだけでなく、人間関係にも悪影響を及ぼすためです。
相続で揉めないためには、事前の対策が必要です。
また、効果的な対策には、トラブルに繋がる原因の特定が不可欠といえます。
この記事では、相続で揉める家族の特徴と、揉めないための対策を紹介します。
相続トラブルを避けたい方は、参考にしてください。
田中 総
(たなか そう)
司法書士
2010年、東証一部上場の不動産会社に新卒で入社し、10年以上に渡り法人営業・財務・経営企画・アセットマネジメント等の様々な業務に従事。
法人営業では遊休不動産の有効活用提案業務を担当。
経営企画では、新規事業の推進担当として、法人の立ち上げ、株主間調整、黒字化フォローの他、パートナー企業に出向して関係構築などの業務も経験。
司法書士資格を取得する中で家族信託の将来性を感じ、2021年6月ファミトラに入社。
田中 総
司法書士資格保有/家族信託コーディネーター/宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター
東証一部上場のヒューリック株式会社 入社オフィスビルの開発、財務、法人営業、アセットマネジメント、新規事業推進、経営企画に従事。2021年、株式会社ファミトラ入社。面談実績50件以上。首都圏だけでなく全国のお客様の面談を対応。
相続で揉める家族は珍しくありません。
相続財産が少ない家庭でも、相続人の間で揉める事実がデータで明らかになっています。
2019年の司法統計では、遺産をめぐる事件の33.9%が遺産総額1,000万円以下の事例でした。遺産総額5,000万円超の事件は、全体の3割未満です。法廷に持ち込まれる7割以上の遺産トラブルは、5,000万円以下の事例です。
遺産トラブル=富裕層のイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、裁判所のデータによると、相続をめぐる争いは一般家庭でも起こりうる悲劇だといえます。
相続財産の多寡にかかわらず、相続トラブルに備える必要があります。
相続トラブル回避のため、相続で揉めやすいパターンを知った上で、生前から対策を練っておく姿勢が大切です。
相続で揉める家族の特徴を14個紹介します。
相続で揉めるケースをあらかじめ知っておけば、その後の対策が取りやすいです。
人間関係の悪さは、相続手続きのあらゆる場面で問題の火種になります。
遺言書の内容が不公平との意見があり、兄弟間で揉めるケースは多いです。
表面上は遺言の内容が争われていても、本質的には兄弟間の仲の悪さが根本的な要因になっているケースもあります。
人間関係が悪くなる要因は様々で、特定したり一般化したりするのは難しいです。
もっとも、お互いが疎遠だった場合は、人間関係で揉める確率が高くなる傾向にあります。
相続人同士の人間関係が希薄な場合、注意したほうが良いでしょう。
特定の家族が1人で被相続人の財産を管理する場合は、相続トラブルに繋がりやすいです。
単独での財産管理は、私的流用が疑われるためです。
高齢になった親の財産を、長男1人で管理している状況を考えてみましょう。
次男は実家から離れた場所で働いており、財産管理を含めた親の面倒は全て長男がみています。
親は認知症を患っており、長男は自由に親の財産をコントロールできる立場にいます。
長男は認知症になった親の世話をしているにすぎず、親の預貯金は介護に必要な範囲で使っているだけです。
とはいえ、親の預貯金を扱う長男に対し、次男が私的流用を疑う可能性はあるでしょう。相続の段階になって、次男が長男の使い込みを主張する恐れはあります。
長男がお金の用途を細かく記録していれば疑いを払拭しやすくなるでしょう。
しかし、お金の用途を明らかにする証拠がない場合、次男の疑いはいっそう強くなります。
単独での財産管理は管理の詳細が不透明となり、他の家族の疑念を招きやすいです。
疑惑を払拭するには、監督者を置いたり第三者の目にもお金の使い道がわかる仕組みを作ったりする工夫が必要です。
介護負担が偏っている場合、遺産の分け方をめぐるトラブルに発展します。
介護に専念した家族が、不公平感を抱くためです。
長女が実家に残り母親の介護をし、長男は東京で働いているとしましょう。
長男はほぼ実家に帰らず、介護は長女に任せっきりです。
長女の立場に立つと、遺産の配分において介護負担分を上乗せして欲しいと思うのは自然です。
しかし、遺産の配分で介護負担分が考慮されなかったり、介護分の上乗せに長男が反対したりする場合、長女・長男の間で争いが生まれます。
介護の負担割合が偏っており、かつ介護の労力が遺産の配分に判定されない相続は、トラブルに発展しやすいです。
なお、介護にかけた労力は「寄与分」として、相続で上乗せを主張できます。
めぼしい遺産が実家のみの相続は揉めやすいです。
1つの財産をめぐって争う形になるためです。
現金の分割は簡単ですが、不動産の分割は複雑です。
長男が単独で実家を相続するパターンは多いですが、実家以外に財産がない場合、兄弟間で不公平が生じます。
相続財産に十分な預貯金があれば、長男が実家を取得する代わりに、他の兄弟に現金を渡すこともできます。
しかし、相続財産が実家のみのケースでは、1人が相続財産を独占する結果になりやすいです。
売却で現金化する方法もありますが、実家に住み続けたい相続人がいる場合、合意できず売却は難しいでしょう。
不動産は現金にくらべて分割がしづらく、相続トラブルの原因になります。
不動産A、不動産B、不動産Cがあり、遺産分割する場合、誰がどの不動産を取得するのかをめぐり揉めがちです。
各々の不動産が持つ価値が同じなら分割は容易です。
しかし、不動産には個性があり、遺産相続の対象となる不動産がそれぞれ等しい価値を持つことは稀です。
誰がどの不動産を相続するか、それぞれの不動産価値をどのように評価するか、不動産は意見の食い違いを生む要素を含みます。
不動産は公平な分割や評価が難しく、相続トラブルの種になります。
被相続人にマイナスの遺産(借金)があると相続は揉めます。
財産は相続したいけれども借金は背負いたくないと主張する相続人が現れたりして、トラブルに発展する可能性があります。
なお、相続放棄により借金の返済は免れますが、預貯金や住宅などプラスの財産を引き継ぐ権利も失います。
被相続人名義の不動産に住んでいる相続人がいる場合、退去や賃料支払いをめぐって揉めるケースがあります。
無償で相続不動産に住む相続人がいる場合、特に問題に発展しやすいです。
被相続人が事業を行っていた場合、相続人の間で揉めやすくなります。
事業にかかわる財産は複雑で、公平に分けにくいからです。
株式や事業用資産をめぐる意見の対立はとくに深刻です。事業承継がスムーズにいかず、経営が傾く要因になりえます。
金額の大きい生前贈与があった場合、遺産分割で揉める可能性が高くなります。
特定の人のみへの生前贈与は、相続人の間で不公平を生むからです。
長男、次男ともに大学に進学したが、次男のみ被相続人から4年間の学費を援助してもらっていた場合を考えてみましょう。
被相続人から次男への学費援助は生前贈与に該当し、特別受益とされる可能性があります。
特別受益は、生前贈与がもたらす相続人間の不公平を解消する制度です。
特別受益が認められると、学費援助で得た利益に相応する価値が次男の相続分から差し引かれます(特別受益の持ち戻し計算)。
しかし、特別受益をめぐり、長男と次男で意見が対立する可能性もあります。
特別受益が認められると長男の相続分は増える一方、次男の相続分は減るためです。
特別受益の金額で揉める可能性もありますし、特別受益そのものを次男が認めない可能性もあります。
金額の大きい生前贈与は不公平を生み、特別受益をめぐる相続争いに発展しやすいです。
なお、被相続人が特別受益の持ち戻しを免除していた場合、特別受益の持ち戻し計算は行われません。
不公平な遺言は相続人の間の争いを生みます。
不公平な遺言内容は、遺留分の主張を招くためです。
形式が整っている限り、内容が不公平であっても遺言は有効です。誰か1人に遺産の全てを渡す旨の遺言であっても、遺言の有効性は否定されません。
ただし、民法では遺留分が定められています。遺留分は法定相続人(兄弟姉妹はのぞく)に与えられた最低限の取り分です。
遺留分を無視した遺言も有効です。しかし、遺留分権者から遺留分を主張された場合、遺言で財産を譲り受けた者と遺留分権者の間で争いが起きます。
不公平な遺言は、遺留分の主張を招き争いの種になります。
相続人に認知症や行方不明の相続人がいると、遺産分割は難航します。
遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が求められるためです。
認知症の方は判断能力が不十分であり、合意に必要な意思能力を否定される可能性があります。合意できない相続人がいる以上、遺産分割協議の成立は不能になります。
行方不明人の相続人がいる場合も同様です。行方不明の相続人がいると、相続人全員の合意は得られません。
認知症の相続人は成年後見人の選任、行方不明の相続人は不在者財産管理人の選任で対応できます。
しかし、成年後見人や不在者管理人を立てるには裁判所への申し立てが必要で、時間と費用がかかります。
裁判所の手続き費用は誰が負担するかなど、相続人間のトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
相続人に認知症や行方不明者がいると、裁判所の手続きが必要となり、遺産分割協議の負担が重くなります。
相続人に未成年者がいる場合、遺産分割協議が揉めやすいです。
遺産分割協議に未成年の相続人がいると、利益相反の問題が生じるためです。
未成年者が相続人に含まれる場合、そのままでは遺産分割協議が進まない可能性があります。未成年者は、遺産分割協議の当事者になれないためです。
通常の契約では、両親が親権者として未成年者を代理できます。
しかし、未成年と法定代理人の双方が遺産分割協議の当事者になる場合、利益相反の恐れがあります。
子どもに不利な内容でも、法定代理人は自己の利益を優先し合意する可能性が考えられるためです。
利益相反が生じうる遺産分割協議では、特別代理人の選任が必要です。
特別代理人の選任には手間がかかり、遺産分割が進まない原因になります。
被相続人に内縁の配偶者がいる場合、相続は揉める傾向にあります。
内縁の配偶者と法定相続人の仲が悪い場合は、特に要注意です。
内縁の妻が亡夫名義の家に住んでいたケースでは、法定相続人から退去を求められた結果、生活の拠点を失うなどのトラブルが想定できます。
被相続人に家族以外の子がいる場合、相続分をめぐりトラブルになりやすいです。
家族以外の子の例としては、婚外子(婚姻外で生まれた子)や前妻とのあいだで生まれた子が考えられます。
婚外子も前妻との間で生まれた子も法定相続人に該当し、第一順位で遺産相続できる立場です。
婚外子や前妻との間で生まれた子は、遺産の配分をめぐり現在の家族と対立関係を形成しがちです。
遺産相続で揉めないためには生前の対策が肝心です。
相続人の意向が反映された遺産配分をあらかじめ設定しておけば、遺産をめぐるトラブルは防げます。
遺言書の作成は、遺産をめぐるトラブルの回避に繋がります。
遺言書であらかじめ相続人の配分を決めておけば、相続時に揉める可能性が低くなるためです。
遺産の配分で揉めやすいのは、被相続人のみで決める場合です。
相続人の意向が反映された遺産の配分なら、相続人も納得できます。
相続人の意向が反映された遺言書は、相続人同士の争いを防ぐため、遺産相続トラブル回避の手段になります。
たとえば、遺言の内容が過度に偏っていると、遺言書があってもなお納得いかない相続人がでてくる余地があります。
とりわけ遺留分を無視した遺言内容には注意です。
遺留分に反する遺言書の作成は遺留分の主張を招き、訴訟に発展する恐れがあります。
遺留分主張のリスクを防ぐ意味でも、遺言の内容は公平性やバランスが大切です。
相続人の意向を反映して内容の公平さに気をつける限り、遺言書の存在は遺産相続トラブルを避ける手段になります。
家族信託の利用は相続トラブル回避の手段になります。
家族信託で家族に財産の管理・処分をまかせることで、遺言作成と同様の効果を得られるためです。
家族信託は遺言と異なり、二次相続に対しても財産の行方をコントロールできます。
家族信託を活用し、二次相続時の遺産配分にまで注意を払う意識を持てば、より精度の高いトラブル回避策が可能になるでしょう。
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ここでは、相続トラブルに関してよくある質問に回答します。
相続手続きには期限付きのものがあり、期限は手続き内容ごとに異なります。
主な期限付きの相続手続きは、次のとおりです。
注目すべきは相続登記です。2024年4月から相続登記が義務化されます。
不動産を相続した場合「所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記を申請する必要があります。
相続登記を怠ると罰則適用の可能性もあるため、注意しましょう。
家族に認知症患者がいる場合、必要に応じ成年後見制度を利用しましょう。
家族に認知症患者が含まれていると、遺産分割協議に支障をきたします。
遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。
相続人に認知症患者がいると、そのままでは遺産分割協議は成立しません。合意は意思能力の存在が前提ですが、認知症患者には意思能力が認められない可能性があるためです。
成年後見制度を利用すると、成年後見人が遺産分割協議に参加できます。成年後見人は裁判所選任の適法な代理人であり、成年後見人の参加により遺産分割協議の成立が可能になります。
しかし、成年後見人の選任手続きは、1〜3カ月程度の時間を要する点がネックです。
相続税の申告など期限付きの相続手続きもあるため、認知症患者が含まれる相続は手続きを急ぐ必要があります。
相続で揉める理由は様々です。
しかし、理由は何であれ相続トラブルの回避に効果的なのは、元気なうちの対策です。
病気が重くなったり、認知症になったりしてからでは、手遅れになる対策もあります。
家族信託は遺言と似た機能を持つと同時に、遺言では実現できない柔軟な設計もできます。
しかし、判断能力を失ってからでは家族信託契約は結べません。契約には意思能力が必要なためです。
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