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2026年(令和8年)2月2日より所有不動産記録証明制度がスタートします。
所有不動産記録証明制度は、所有者不明の土地問題解消のために創設された制度です。この制度により、相続登記の負担軽減が期待できます。
この記事では、所有不動産記録証明制度について詳しく解説します。
所有不動産記録証明制度のメリットや問題点が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
田中 総
(たなか そう)
司法書士
2010年、東証一部上場の不動産会社に新卒で入社し、10年以上に渡り法人営業・財務・経営企画・アセットマネジメント等の様々な業務に従事。
法人営業では遊休不動産の有効活用提案業務を担当。
経営企画では、新規事業の推進担当として、法人の立ち上げ、株主間調整、黒字化フォローの他、パートナー企業に出向して関係構築などの業務も経験。
司法書士資格を取得する中で家族信託の将来性を感じ、2021年6月ファミトラに入社。
田中 総
司法書士資格保有/家族信託コーディネーター/宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター
東証一部上場のヒューリック株式会社 入社オフィスビルの開発、財務、法人営業、アセットマネジメント、新規事業推進、経営企画に従事。2021年、株式会社ファミトラ入社。面談実績50件以上。首都圏だけでなく全国のお客様の面談を対応。
所有不動産記録証明制度が開始されると、所有不動産の把握が容易になり、相続登記のハードルが下がります。
制度の開始時期は、2026年(令和8年)2月2日とされています。
所有不動産記録証明制度の概要は次の通りです。
所有不動産記録証明制度の主な目的は、相続登記を促し、所有者不明の土地をなくす点にあります。
相続登記が義務化されても、土地の把握がされなければ、登記を促すのは困難です。
不動産を把握する方法は以前から存在していました。しかし、所有不動産記録証明制度のように、全国に点在する所有不動産の情報を一括で検索できるシステムはありませんでした。
所有不動産記録証明制度の利用により、特定の人物が所有する土地の把握がスムーズになることが期待されます。
所有不動産記録証明制度は、2026年(令和8年)2月2日に開始される予定です。
なお、所有不動産記録証明制度は、2021年(令和3年)4月に成立した不動産登記法の改正法に沿って創設された経緯があります。
改正法によると、所有不動産記録証明制度は公布から5年以内に施行することが定められています。
2021年4月から5年以内が期限となるため、2026年2月2日に開始されるのはギリギリのタイミングといえるでしょう。
新しい制度であるため不明な点も多いかもしれません。
制度の利用方法など迷う点があれば、市区町村や司法書士に相談することをおすすめします。
所有不動産記録証明制度を利用し書類の交付を請求できる人は、次の通りです。
書類請求の主体は限定されています。所有不動産記録証明制度が創設されたからといって、誰でも土地の一覧を取得できるわけではありません。
基本的には、不動産名義人の相続人が、被相続人が所有していた土地の一覧を取得し、その後相続登記をする流れが一般的になると予想されます。
なお、請求の主体には個人のみならず、法人も含まれます。
所有不動産記録証明制度の申請場所は、全国の法務局です。
所有不動産記録証明制度は、全国の不動産を一括して把握できる点が特徴です。
所有不動産が全国に点在しているとしても、近隣の法務局に申請するのみで、全国にある不動産の情報を取得できます。
不動産の有無や所在を把握する方法としては、名寄帳(なよせちょう)の取り寄せが行われるケースが多い傾向です。
しかし、名寄帳は所有不動産記録証明と異なり一元管理されておらず、複数の市区町村に不動産がまたがる場合は、個別に手続きする手間が発生します。
この点、所有不動産記録証明は一元管理されているため、市区町村ごとの申請は不要です。
所有不動産記録証明制度の開始には、以下2つの背景が考えられます。
所有不動産記録証明制度が創設された背景には、所有者不明の土地の増加があります。
現在、国土の約24%が所有者不明といわれていますが、所有者不明の土地の増加は、環境・治安の悪化や公共事業の妨げ、相続登記の複雑化などさまざまな問題を引き起こします。
所有者不明の土地の問題を解消するために、国は相続登記を義務化しました。
しかし、相続登記は被相続人が所有していた不動産の把握が前提になります。そもそも相続人が相続不動産の存在を知らなければ、相続登記義務化は機能しません。
相続登記を進め所有者不明の不動産を減らすには、相続人が被相続人の所有不動産を容易に把握できるシステムが求められ、所有不動産記録証明制度はこのニーズに応える形で創設されました。
現行法のもとで、不動産を調査する場合は、一般的に以下の方法が採用されます。
いずれの方法も完璧ではなく、それぞれ問題点があります。
固定資産税の納税通知書には非課税不動産が記載されず、名寄帳は記載される情報が該当する市町村のものに限られます。
現行での調査方法の不都合さが、相続登記の機会を失わせ、所有者不明の土地の増加に寄与している側面があるといえるでしょう。
不動産調査の方法の1つに、固定資産税の納税通知書の確認があります。
しかし、固定資産税の納税通知書には非課税の不動産は記載されていません。
そのため、非課税不動産を所有していた場合、納税通知書による不動産の把握は難しくなります。
非課税不動産の例としてよくあるのは、私道です。
私道は非課税であるケースが多く、私道を所有していた場合でも、その情報は納税通知書に記載されません。結果として、その私道は相続登記がされないまま放置される可能性が高くなります。
この点、所有不動産記録証明制度は非課税不動産に関する情報も取得できるため、非課税不動産であっても、漏れなく把握される可能性が高いといえるでしょう。
名寄帳は、特定の人物が所有する不動産を一覧でまとめた書類です。
所有不動産が一覧にしてまとめられる点で、名寄帳は所有不動産記録証明制度と似ています。
しかし、名寄帳には以下の問題点があります。
名寄帳の一番の問題点は、取得できる情報の範囲が各自治体が管理する部分に限られる点です。
名寄帳は、市町村ごとに作成されます。A市町村で作成された名寄帳にはB市町村にある不動産の情報は記載されていません。不動産の所在が異なる市町村にまたがる場合、各市町村ごとに、個別に申請する必要があります。
被相続人が縁もゆかりもない地域に不動産を所有していた場合は、名寄帳を取り寄せる行為そのものが行われず、相続登記の不動産対象から外れてしまう可能性が高くなります。
所有不動産記録証明制度は、相続登記の促進につながります。この制度により、相続対象となる不動産調査の負担が軽減されるからです。
2024年4月1日に相続登記が義務化されたため、所有不動産記録証明制度が果たす役割は重要といえます。
2024年4月1日から相続登記の義務化が開始されました。
相続登記の義務化の主な目的は、所有者不明土地の問題の解消です。
日本の国土の約24%が所有者不明とされており、大都市を除くと、その割合は26%超にまで上ります。
都会と異なり、地方においては土地を所有するメリットは高くありません。あえて相続登記をする意味合いは薄かったといえるでしょう。登記費用のコストや労力を避けるため、相続登記を行わなかった人が多かったと推測できます。
しかし、所有者不明の土地が増えると、以下の問題を引き起こします。
従来、相続登記は義務ではありませんでしたが、所有者不明の土地が招く問題が深刻化したため、相続登記が義務化されました。
相続登記を怠ると、以下の不利益を受ける可能性があります。
正当な理由なく相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。登記の期限は、不動産を相続したことを知った日から3年以内です。
また、相続登記の放置は権利関係の複雑化を招きます。相続人が増えるほど権利関係は複雑化し、相続登記の難易度も上がります。
権利関係が複雑化すると、相続不動産の売却のハードルも高くなるため、放置が原因で余分な時間やコストがかかる可能性が高まるでしょう。
仮に罰則の適用を受けないとしても、相続登記を怠ることで、時間的にも金銭的にも不利益を受ける恐れがあります。
相続登記で問題となるのは、相続不動産の把握です。
相続登記をする意欲が相続人にあるとしても、被相続人が所有していた土地を把握できなければ、相続登記の機会を失ってしまいます。
相続登記の対象となる不動産は、個人で調査するべきであり、相続発生と同時に国が教えてくれるわけではありません。
相続不動産の調査にあたっては、固定資産税の納税通知書の確認や名寄帳の取り寄せといった方法があります。
しかしこれらの方法は不十分で、例えば名寄帳の取り寄せの方法を用いた場合、市町村ごとに申請しなければならないといった不都合がありました。
この点、所有不動産記録証明制度は一度の申請で調査が済むため、相続不動産調査の負担軽減につながります。
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所有不動産記録証明制度が施行される利点について解説します。
所有不動産記録証明制度は相続人の負担を減らす機能を果たしますが、一方で、被相続人の生前対策にも有効です。
所有不動産記録証明制度により、相続登記の抜け漏れを防げます。
所有不動産記録証明制度で取得できる情報としては、非課税不動産も対象とされます。なぜなら、全ての市区町村にある不動産が対象になるからです。
所有不動産の調査においては、所有不動産記録証明制度以外にも、固定資産税の納税通知書の確認や名寄帳を取り寄せる方法があります。
しかし、固定資産税の納税通知書には非課税不動産が含まれず、名寄帳の取り寄せで確認できる情報は申請先の市町村にある不動産に限定されます。
所有不動産記録証明制度は、非課税不動産も対象になり、かつ一度の申請で日本全土にある所有不動産を調査できるため、漏れのない調査が可能になるでしょう。
所有不動産記録証明制度により、相続登記が必要な不動産の把握が容易になります。
相続登記は相続人により申請されますが、相続人は不動産を購入した本人でないため、どこにどの不動産があるか知らないケースがあります。
相続不動産が自宅しかない場合は、相続人であっても不動産の所在を把握している可能性が高いといえます。
しかし、被相続人が自宅とは別の不動産を所有していた場合、相続人が不動産の存在に気付かず相続登記の対象から外れてしまう確率が高くなるでしょう。
この点、所有不動産記録証明制度を利用すれば、被相続人が所有する不動産の一覧を一度の申請で取得できるため、相続登記の対象となる不動産の把握が容易になります。
所有不動産記録証明制度は生前対策にも利用可能です。
所有不動産記録証明制度は、相続人のみならず、被相続人(所有者本人)も申請者になれます。
被相続人が所有不動産記録証明制度を利用し、あらかじめ相続対象となる不動産を把握しておけば、遺言を作成する際に役立つだけでなく、相続発生後の相続登記も漏れなく実行されることになります。
また、所有不動産記録証明制度で所有不動産を洗い出すことで、売却や賃貸等の有効活用の道も開ける可能性があります。
このように、所有不動産記録証明制度は生前対策にも有効といえるでしょう。相続人のみならず、被相続人にとっても所有不動産記録証明制度は注目に値します。
所有不動産記録証明制度には、次のような課題や弱点もあります。
現在の住所とは異なる住所や氏名で登記されている場合は、検索にヒットせず、記載から漏れてしまう可能性があります。
住所が一致しない事例としては、以下の場合が考えられます。
所有不動産記録証明制度で不動産の一覧を取得しても、旧住所で登記された土地Aの情報は記載されていない可能性があります。
住所変更の登記がされていない場合は、所有不動産記録証明制度によっても相続不動産が把握できないかもしれません。住所変更の問題は、所有不動産記録証明制度が抱える課題といえるでしょう。
また、所有不動産記録証明制度は新しい制度であるゆえ、未知の問題が発生する恐れもあります。
所有不動産記録証明制度は、相続登記の負担を減らす機能を持ちます。
義務化により相続登記の重要性は増しましたが、所有不動産記録証明制度の創設により、相続登記の負担軽減が期待できます。
相続登記の義務化に見られるように、相続手続きの重要性は年々増しています。
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